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我が家がカスタムバレンタインになったのはですね・・・

我が夫婦はバレンタインは行わない。

いや、行わなくはないか。
お酒を送り合ったりはする。
けど私が一方的にチョコレートを贈ったりはしないのである。

あれは付き合い始めて最初のバレンタインであった・・・(昔話風)

当時繁華街に勤めていた私は
仕事の合間にチョコレートを物色し
「これなら彼が好きそうだ!!」
と思うものを選んで買いましたのよ。

仕事柄結構繁忙期だったので頑張って時間を作ったのさ。
喜んでくれたらいいなー。
美味しいと思ってくれたらいいなー。
とワクワクソワソワである。(なんてったって初めてのバレンタイン)

夫の人(当時彼氏)はそれはそれはお喜びあそばして
ひとつぶ食べた後
「あとは大事に食べるー☆」
とニコニコしながら冷蔵庫に入れた。
良かった、喜んでもらえた☆
とほっと一安心。

そして流れる歳月。
冷蔵庫に鎮座し続けるチョコレートの箱。
こっそり箱を開けてみてみるとあれから一粒しか減っていない。

ある日私は恐る恐る聞いたさ。
「あのチョコレートはお口に合わなかったのだろうか」と。

帰ってきた答えは
「違うの。美味しいんだけど・・・もったいなくて」

はいはいはいはい。
あのバレンタインの日、とっても嬉しそうにしてくれていましたものね。
分かる。もったいない気持ち。
でも食べない方が勿体ないのだが・・・?(笑)

念のため言っておくと夫の人(当時彼氏)は甘いものが嫌いとかそういうことではない。
お酒も飲むし辛いものも好きだけれど
甘いものも好きという両刀使いである。
だがプレゼントしたチョコは食べてくれない。
事情を説明する表情を見るにつけ
(実は美味しくないんだけど勿体ないと言っておこう)
というような感じでもない。(顔に出るタイプ)

減らないチョコレートにやきもきしないではないけれど、そのうち私は
まぁ、いいか。あげたものは彼のものだし私がどうこう言うことでもないか。
と思うようになった。

そしてさらに流れる歳月。
相変わらず冷蔵庫に鎮座し続けるチョコレートの箱。
チョコレートはついに冷蔵庫の中で賞味期限を迎えた。

再度言うが付き合って最初のバレンタインにあげたチョコレートである。
私はちょっと傷ついた。

「ねぇ、賞味期限切れてるんだけど」
悲しさとムカつきをにじませつつ伝えたら夫の人(当時彼氏)は私よりしょんぼりした。
何でやねん(関西人でもないのに思わず関西弁)
しょんぼりするくらいなら食べてくれよ。

曰く
「最初の頃は冷蔵庫にチョコがあるのが嬉しかったのに
 段々そこにあることで追いつめられるような気になっていった」
とのこと。

いや、そこは食べれば済む話じゃん?と思うと同時に
なんか分かる・・・とも思う。

大事なものを取っておくあまり段々時間が過ぎていって
「あぁ、あれが気になる・・・」
みたいな経験、正直に言うと私にもある。

お土産にもらった美味しそうな大吟醸、
張り切って買ったちょっとお高いシートマスク、
誕生日にもらったふかふかのタオルハンカチ・・・。
万全の態勢で使いたい(下ろしたい)と思うあまり中々手が伸びない。
そして使わないことで段々
「これ、いつ使えば(下ろせば・食せば)いいんだろう・・・」
と責められるような気持になっていく・・・
そして委縮した手は更に伸びにくくなる・・・分かる・・・。

まぁしかし分かるけれども賞味期限を切らしてしまうのは勿体ないね。
というわけで翌年は賞味期限のないものをあげよう!
と思って選んだのは下着。
デパートで買ったちょっといいやつ。
多分、毎日の下着にそのお値段かけている男子は少数派・・・みたいなやつである。

バレンタイン前の男性もの下着売り場は
「あれ?ここ女性もの売り場だっけ?」
というくらい女性が多かったので
多分、バレンタインのプレゼントとして
ちょっといい下着っていうのはちょうどいいと思う人結構多いんだろうなぁとその時知る。
まぁもちろん、下着を送ってもOKな距離感の相手限定だろうけれども。
何事も距離感は大事。

そして差し上げた夫の人の反応は
「なるほど!自分じゃ買わないいいやつだ!!」
とのこと。
表情を見ると気に入ってないわけでもない。
よしよし、である。

その時はパンツは履いているので(当たり前だ)新たに履いたりはしない。(その上から履いたらおかしいしねぇ)
ラッピングに戻され、大事そうに仕舞われるお高いパンツ。

・・・そしてタンスに眠る高級おパンツ・・・やはり中々下されないのである(笑)

まぁ腐るものでもないし・・・と思って半年が過ぎた頃、
ふたりで旅行に行くことになった。
ギリギリまで仕事をしていたためギリギリにふたりして焦って準備をしていたら
隣の部屋で準備している夫の人から呼ばれる。

なんだよー、早く準備を終わらせて明日に備えて寝たいよーと思いつつも
はいはいと移動するとその先には
「旅先で!これを!下ろします!!」
とプレゼントした高級おパンツを掲げて謎に誇らしげな夫の人(笑)

あ、はい。そうですか(笑)
多分夫の人にとってこの「ふたりで行く旅行」が
貰った高級パンツを下す最適なタイミングだったのだろう。
半年も寝かされていたパンツ・・・とも思うけれども悪くないステージだと思う(笑)
賞味期限も切れてないし(パンツの賞味期限てなんだよw)

最高のステージで下ろした後、その高級おパンツは日常的に履かれるようになった。
最初(だけ)が肝心なんだよね、分かる。
履き心地は悪くなかったようで一安心である。

さて、その翌年のこと。
今年のバレンタインはどうしようかなぁと思っているところに夫の人からのひとこと。
「あの・・・バレンタインはもう何もいらないです」
と。

ほぅ、何故に?
と聞いてみたら
「あのチョコレートの賞味期限を切らしてしまったのが本当に申し訳なくて・・・
 あんなに嬉しかったのに・・・・
 でもきっと同じようなことを自分はしてしまうと思うので・・・」
とのこと。

なるほど。

私も夫の人も記念日とかイベントごとがあまり得意ではない。
プレゼントもあんまり得意じゃない。
(プレゼントについてはあげるよりも貰う方が得意じゃない)
ああいうの得意な人、本当に尊敬する。
そのスキル、どこに売ってますか?教えて!!ってなる。

なので夫の人のこの気持ち、とっても分かるのである。
プレゼントは嬉しいけれど
その嬉しい気持ちをどう表現すれば相手に伝わるのか
考えて表現したらそれは嘘くさく映らないか
そもそも大人って自分で欲しいものを手に入れているから
それそのものを本当の意味で喜べるのか・・・。

しかも私たちは一緒に暮らしている。
一緒に暮らしていると
「あのプレゼント、まだ食べてない(使ってない)」
が分かってしまうのである。

貰った方は「あれ、まだ食べてない」と気になるし
あげた方は「使ってくれないのは気に入らないからだろうか」と気をもむ。
そしてそれを伝えることにも二の足を踏む。
伝えたらそれを相手が気に病んでしまうかもしれないと思うからだ。

気にならない人は気にならないだろうし
むしろ自分たちが気にしすぎなのだろうとも思う。
でも、私たちは気になってしまうのだ。

チョコレートの教訓を踏まえて腐らないものを選んだ翌年、
その「賞味期限を切らさなかった」経験も「チョコレートを腐らせてしまった」という夫の人のしょんぼりに上書きすることはできなかった。
(もしかしたらそれすら「いつこのパンツを下すべきか・・」と悩んでいたのかもしれない)

だったら世間で行われるイベント(この場合バレンタイン)を無視して
お互いが快適なように過ごすことの方が良い!ということになった。

なので我が家ではいわゆるバレンタインは執行されない。

いまの我が家のバレンタインはふたりで買い物に行った時、夫の人が
「このワイン買おうかな」と言った時は
「じゃぁそれバレンタインってことで買ってあげようか?」
となるくらいだ。
そしてそう言われた夫の人は
「え、じゃぁもうちょっといいワインにしてもいい?」
と笑いながら調子に乗る。(ワンランク上がったとことで大した値段のやつは買わない)

そして夫の人がワインを選んでいる隙に私はラム(羊肉じゃないよ、お酒の方ね)を選ぶ。
イベントが得意じゃない私たちはホワイトデーも忘れてしまうので
バレンタインの同じタイミングで自分好みのお酒を選び合う。
そしてその選んだお酒もふたりで飲み干す。

私自身はチョコレート大好きなので
バレンタイン時期にしか入ってこない高級チョコレートをいそいそ買ったりする(自分のために)
ひとつぶだけ夫の人に分けてあげることもある(独り占めすることもある)

まぁそれらだって毎年のことじゃない。
たまたま思い出すことができたら・・・くらいの感じだ。

それくらいが我が家にはちょうどいい。
ふたりが丁度いいと思う感じがいいのだよ。

日常は自分仕様にカスタムしていきたい。
ふたりならふたり仕様へのカスタムが必要だ、と思う。
快適な日々のために。

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