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もし、自分が事故物件の当事者になってしまったら、考えるべき5つの重要事項 その②

その①では、自分と故人の関係がどういった関係であるのか?そして、関係性によって、事故物件の当事者となった場合に取れる手段を考えました。
その②ではもう少し踏み込んで解説していきます。

事故物件の当事者として故人の権利義務を相続する場合

いわゆる事故物件において故人の相続人の方が相続放棄(限定承認)という選択をせずに故人の権利義務を承継した場合は、賃貸物件における故人が負っていた原状回復義務や善管注意義務違反(善良なる管理者の注意義務違反)などから来る損害賠償に応じていくことになります。

故人の権利義務を相続人が相続する場合は特別な行為は必要とせず、相続人が家庭裁判所へ相続放棄等の申述などせず3ヶ月経過すれば自動的に相続したものとされます。

また、積極的に故人の預貯金を処分したり、遺産分割協議などを行っても相続意思有りとされる法定単純承認とされ、これも相続したとみなされます。

意識はされていないと思いますが、故人が亡くなった後に相続人が一般的に行う行動が相続する意思に基づいて行われていることも多く、特段特別なことをしなくても相続していく流れになっているということですね。

ただ、反対に言うならごくあたり前の行為が相続したものとみなされてしまう危険があることも十分注意して行動しないと、相続放棄ができなくなってしまうことにも繋がりますので行動を起こす前には必ず専門家に相談してください。

さて、賃貸物件における故人の権利義務を相続するとどうなるのか。また、被相続人(故人)が賃貸物件で自殺や孤独死、殺人等のように一般的に事故物件として今後扱われるような状態で発見された場合はどうなるのかを解説していきます。

※孤独死は厳密に言えば病死であり、事故物件として扱われるべき物ではありませんが、発見が遅れて遺体が腐敗し、死臭が充満していたような場合は専門家の間でも事故として扱うか扱わないかで意見が別れるところですので、ここでは基本的には自殺や殺人のケースを想定して記載していき、孤独死の場合は遺体が長期に渡って発見されず腐敗していたような状況の場合にあてはまる可能性があるとの前提でお読みください。

相続人はどこまでの義務を負わなけれないけなくなるのか?

故人が賃貸物件において事故物件として扱われるような状況で発見された場合に相続人が相続をした場合に相続人はいったいどこまでのことをしなければいけないのか?

簡単に言えば全ての義務を負うことになります。故人が借りていた賃貸物件における、未納家賃はもとより、原状回復義務、自殺などの場合なら今後の募集に影響が出る可能性があるので、家賃を減額しなければならないことも多く、その減額した家賃の差額を逸失利益として賠償しなければならないこととなります。

相続するというのは、故人が有していた権利も義務もそのまま全部包括的に引き継ぐということですから、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も当然に全部引き継ぐこととなります。

これは結構大変なことで、プラスの財産だけならそれほど問題になりませんが、事故物件の当事者のような場合はマイナスの財産が飛びぬけて大きいということもありますので、事故物件の当事者となったような場合の相続するという選択は本当に慎重に検討してから行わなければいけません。

近年問題となっている孤独死は必ずし身寄りの無い高齢者の一人暮らしというケースばかりではありません。

むしろ、定期的に安否確認やケアマネージャ等と接点のある高齢者よりも高齢者福祉の対象となっていない50代前後での孤独死の方が発見が遅れるケースも目立ってきていますので、孤独死問題は決して他人事ではありません。

事故物件現場の原状回復費用や逸失利益は青天井?!

相続人が相続をすることを決めて家主側の請求に応じると決めた場合でも必ずしも家主側の言い値を支払う必要がある訳ではありません。

賃貸物件で事故が発生した場合に家主側が借主側に請求する「原状回復費用」や「損害賠償」といった金額は基本的には請求し過ぎのケースがほとんどです。

一般的な家主側としては室内が自殺などで汚れてしまった場合は汚れている部分以外の箇所も含めて全てフルリフォームする見積りを作成して遺族側に提示してくることがほとんどでしょう。

例えば、浴室で練炭自殺したようなケースだと、この場合浴室の交換は認められる事が多いかと思われます。

たとえ、遺族側が綺麗に掃除してたとしても過去に自殺が起きた浴槽に浸かりたいとは誰も思わないので、交換となってしまうのは致し方のないことです。

ただ、こういったケースで良くある家主側からの見積りとしては、自殺が起きたのは浴室。でも、実際の見積りに記載されているのは、浴室以外にもキッチンやトイレ、居室部分のクロスの張替えなど、事故とされる自殺が起きた箇所以外にも原状回復の内容として盛り込まれて請求されているケースが非常に多く見受けられます。

これは家主側としては少しでも次の入居者には募集しやすいようにとの考えからでしょうが、裁判上は自殺などの事故とされる部分と関係のない箇所の原状回復による請求は認めてはいませんので多くのケースでは家主側の過大請求となることでしょう。

また、原状回復には当然これまでの生活において経年劣化した部分なども考慮されるべきところですので、家主側から自殺などの事故を原因として全てを新品に交換するという請求がされたとしても、本来遺族側が負担すべきなのは新品に交換する上での一部の負担割合と考えることもできますので、必ずしも家主側のいい値で青天井での請求が認められるという訳ではありません。

ですので、家主側から提示された金額があまりにも過大と感じる場合は、これまでの居住年数や建物自体の築年数、自殺の状況や汚損状況などを正確に把握した上で弁護士の先生など協力のもと家主側と交渉していく必要があります。

弁護士の先生へとうまく説明できないと感じる場合は当事務所でもお手伝いいたしますのでご相談ください。(東海地区の方でしたら提携の弁護士事務所へ同行いたします)

故人の生命保険を活用できないか?


一般的に加入者が死亡した場合に受取人として指定されていた方へと支払われる生命保険金。この生命保険金は契約時に受取人を指定しておくことが多く、また、受取人として指定できるのも原則近親者だけとなっています。

ですので、相続人が受取人として指定されていることも珍しくはないのですが、生命保険金の特徴として、相続放棄に影響されないというものがあります。

詳細は省きますが、簡単に言えば相続人が相続放棄をしたとしても、生命保険金の受取人と指定されている方は生命保険金を受取ることができるということです。

これによって、例えば賃貸物件で事故が発生して借主が死亡。相続人である遺族が家主側からの原状回復などの請求で相続するかどうか頭を悩ませているといった状況であったとするなら、生命保険金の額を考慮した上でその後の対応を考えることができるようになります。

例えば500万の生命保険金が受取れるとするなら、家主側からの賠償については問題なく支払うことができるでしょうから相続放棄をせずに手続きを進めていくことができます。

また、故人の財産が負債(マイナスの財産)しかないといった場合は相続放棄をした上で、マイナスの財産の承継を断り、室内の原状回復などについてだけ受取った生命保険金から支払うということもできます。

もし、故人との関係が悪かったような場合は賃貸物件の原状回復の費用なども含めて全て相続放棄で否定した上で生命保険金だけ受取るということもできますので、生命保険に加入していたかどうかは非常に重要な判断材料となりますので必ず故人が生命保険に加入していたかどうかは確認するようにしましょう。

事故物件専用の保険に加入していなかったかを確認

最近は家賃保証会社を使用することを条件に賃貸契約を結ぶことも多くなってきています。

ただ、家賃の不払いについては家賃保証会社を利用することで対処できたとしても、高齢者の方の孤独死等の問題は依然として残り、高齢者が単身で入居することに難色を示す大家さんも多いことでしょう。

そうした場合に、もし賃貸物件内にて入居者が自殺や孤独死等した場合に、特殊清掃の費用や遺品整理の費用が保険で支払われることを条件に賃貸契約を結んでいるというケースもあります。

単身の高齢者がアパート等の賃貸契約を締結する際に家賃の保証会社とは別にこうした事故に対処する保険にも併せて加入しているケースもありますので、火災保険の証書等に付帯していないかなども確認しておきましょう。

まとめ

事故物件の当事者として、家族や相続人として対応をしていく場合は、事故の状況(孤独死・自殺・殺人)に併せて対処していく必要があります。

また、近年は家主側も賃貸物件での事故を賃貸経営上のリスクとして認識して事前に対策をしているケースも増えてきていますので、故人の生命保険や入居契約時の保険が使用できないかどうかも確認しておきましょう。

また、早い段階で賃貸物件でのトラブルに強い専門家に相談することで今後の指針を得ることもできますので、困った場合は必ず専門家へと相談してくださいね。

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