見出し画像

もし、自分が事故物件の当事者になってしまったら、考えるべき5つの重要事項 その③

今回は事故物件の当事者の方からご相談の多い、「相続放棄」について補足で書いていこうと思います。前回まで記事を読まれている方なら、「相続放棄」がどういった制度かはすでにお分かりかと思います。

簡単に言うなら
① 故人の権利義務を一切承継しない
② 賃貸物件で起きた事故に関する「原状回復費」や「逸失利益などの損害賠
  償」を家主側から請求されたとしても支払いを断ることができる。
③ 故人の残置した遺品の整理をしなくても良い。(してはいけない)
④ 故人が借金などをしていた場合はそれらも支払いを断れる。
⑤ 受取人が指定されている生命保険金は相続放棄をしていたとしても受取り
    ができる。

相続放棄には上記のような効果がありますので、原状回復費や損害賠償など家主側から請求される金額が高額になりがちな事故物件での当事者にとっては非常に助かる制度となっています。

では、実際に相続放棄をすると決めた場合は何をして、反対に何をしてはいけないのでしょうか?

相続放棄はどのようにする?(相続放棄の手続きについて)

相続放棄は専門家に依頼しなくてもご自身で手続きをすることも可能です。ただし、相続放棄にはいくつかの要件がありますので、それを守らなくてはいけません。まず、一番の要件として自分が相続人になったことを知ってから3ケ月以内に家庭裁判所へ申述するということです。

この3ケ月という期間制限は長いようで以外と短く、家主側から提示される金額を確認してから相続するか放棄するかを決めようと思っていると、気づいたら3ケ月を過ぎていたなんてことも珍しくはありません。

また、一般の方がよく勘違いしてしまうのが「私は何ももらっていないのだから相続はしていない」という考え方です。

故人の権利義務を一切承継しないとする「相続放棄」は必ず家庭裁判所へ申述する必要があります。

家庭裁判所での手続きをしない以上はいくら「何も貰っていない」「遺産分割協議書に自分の相続分は0となっている」「財産をもらう兄弟が借金を支払うと言っていた」と主張しても、本当の意味での相続放棄とはなりませんので注意が必要です。

相続放棄までの流れ

相続放棄をする場合は家庭裁判所へ申述手続きをすると書きましたが、申請用紙などは家庭裁判所のHPからダウンロードできますし、書き方見本などもあります。

書き方が分からなくても家庭裁判所へ問い合わせれば教えてくれますのでそれほど心配する必要はありません。

あとは、申請書の添付書類として戸籍等を添付して提出すればいいのですが、この戸籍集めは慣れていない場合は難しく、また平日に役所へいけないような方の場合は専門家に依頼すると全てやって頂けます。

家庭裁判所へ申請書を提出すると、相続放棄が本当に本人の意思でされているものかどうかを確認する為に家庭裁判所からご本人の元へ「相続放棄の申請がされていますが、本当にあなたの意思ですか?」といった内容の手紙が届きます。

その手紙に必要事項を記載して返却することで「相続放棄」が受理されるというのが、相続放棄の流れとなります。

相続放棄が受理されると、家庭裁判所からあなたの相続放棄は受理されましたという内容の手紙が届きますので、この手紙が届いたことで相続放棄が完了となります。

故人が消費者金融などで借金をしていたような場合には消費者金融は相続人に故人の代わりに借金を支払えと言ってきますが、その際に相続放棄をしたと伝えた場合はその証拠として、家庭裁判所から送られてきた相続放棄申述受理書をFAXしてくれと言われケースがありますので、家庭裁判所から届く手紙は大事に保管しておきましょうね。

もし、相続放棄が完了してこれで安心!と思って処分してしまった場合は、有料ですが後から相続放棄をしたことを証明する証明書を発行してもらうことも可能です。

賃貸物件で事故が起きた場合も管理会社から同じように上記の書類を送って欲しいと言われることがありますので、同じようにFAX等で対応すれば大丈夫です。

次の相続順位の方にその人が相続人なったことを伝える必要はあるか?

相続放棄をされる方の中には次の順位の方に迷惑が掛からないかを心配される方も多くいます。

相続は相続順位に従って順番に進んでいきますので、第一順位(子や孫)の方が全員相続放棄をすると第二順位(両親、祖父母)の方が、第二順位の方も全員相続放棄をすると第三順位(兄妹、甥・姪)の方が相続人というように順番に相続権が移っていきます。

当然、事故物件の当事者としての地位、例えば家主側からの請求に応じないといけないとする地位もこの順番の従って移っていく訳で、気づかない内に自分が相続人になっていたということも珍しくはありません。

前順位の方が相続放棄をして次の順位の方が相続人になった際に家庭裁判所などからわざわざ「次はあなたが相続人ですよ」などという親切な案内は来ません。

ですので、前順位の相続人の方と長年疎遠だった関係のような場合はいつのまにか、自分が相続人になっていたなんてことも起こり得るのです。

ここで大事なのは、もし故人の権利義務を承継したくないのなら、自分が相続人になったことを知ってから3ケ月以内に相続放棄をするということです。

相続放棄の3ケ月の期間制限は自分が相続人になったことを知ってから進行しますので、長年疎遠で、そもそも故人が亡くなったことを知らなかったという状況では相続放棄の手続きのしようがありませんので、3ケ月の期間も進行しないということですね。

ですので、大事なのは故人が亡くなってから3ケ月ではなく、自分が相続人になったことに気づいてから3ケ月以内に家庭裁判所へ手続きをしなければいけないということに注意をしましょう。

賃貸物件の事故の当事者としては自分が相続放棄をすることで次の方に迷惑を掛けることになるので、自分が相続放棄をしたことをその方へ伝えた方がいいのでしょうか?と心配されるケースがあります。

これについては、ご自身と次の順位の方とのご関係で判断すればよく、次の順位の方が日頃から親交があるような方なら連絡してあげた方が次の順位の方も慌てなくて済むでしょう。

また、反対に全く親交もなく、連絡先もどこに住んでいるかすら分からないといったような方の場合はあえて探し出しまで連絡する必要はないでしょう。

次の順位の方も前順位の方が相続放棄をしたことに気づかない限りは自分が相続人なったことを知り得ないわけですから、相続放棄の熟慮期間である3ケ月の期間も進行しませんので、相続放棄をするかどうかは次の順位の方の判断に任せればよいこととなります。

前順位の相続人が相続放棄をしたかどうかについては「相続放棄をしたかを調べる方法」をご確認ください。

相続開始から3ヶ月を過ぎてしまってからの相続放棄手続きについて

相続放棄は相続開始から3ケ月以内にしなければいけません。ただ、実際の相続の現場では「故人に目立った借金などもないから、何もしなかった」というご家族は多いでしょう。

故人の借金を見つけるのは非常に難しく、また、故人が第三者の連帯保証人になっていたような場合は故人が生前に伝えておいてくれたり、書類として残っていたりしない限りはなかなか気づくことができません。

ですので、故人が亡くなり、家族として故人の日頃の生活から借金などはないだろうと思っていたような場合は敢えて相続放棄のような手続きはせずに何もせずに3ケ月が経過して相続したということになっているケースは珍しくはありません。

では、故人には借金がないだろうと思っていたのに、1年後くらいに借金が判明した!なんて事になった場合はどうなるのでしょうか?相続人としてはその借金をすべて支払わなければいけないのか?

原則的には相続放棄の手続きをしていない以上は借金などの故人の負債を支払う必要がありますが、事情によっては、相続人が相続放棄などの手続きを取らなかったことは仕方がないということもあります。

ですので、相続放棄を取らなかったことに相当な理由、相続放棄をしてなかったとしても仕方ないよねと判断されるようば事情がある場合は救済措置があります。

こうした、相続人が相続放棄の手続きをしなかったとしてもそれは仕方がないと考えられるような場合は、相続開始から3ケ月経過していたとしても相続放棄の手続きを認めてもらえるケースがあります。

この期間経過後の相続放棄は非常に経験が問われるところとなりますので、必ずご自身で行うのではなく、専門家に依頼するようにしましょう。「とりあえず自分でやってみてダメだったら専門家に依頼しよう」というのはダメです!最初の一回で認めてもらえなかった場合は次はないと考えて手続きを進めてください。

まとめ

相続放棄はするかしないかで、その後の生活に大きく影響してきます。特に賃貸物件で起きた事故の当事者となってしまったような場合は、相続放棄を念頭に行動をしていかないと、気づいたら多額の負債を抱えていたなんてことになりかねませんので、事故物件の当事者になってしまった場合は行動を起こす前に必ず専門家へ相談してくださいね。

その一本の相談電話があなたの生活を守ることに繋がります。怖がる必要はありませんので安心して電話やメールでご相談ください。

もし、自分が事故物件の当事者になってしまったら、考えるべき5つの重要事項 その④」 へ行く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?