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読み聞かせ絵本#3 (ビジネスパーソン向けをチョイス)

以前のnoteで紹介した『絵本のちから』の中で、河合隼雄さんはじめ著者の方々は、異口同音に「ビジネスマン(大人)こそ絵本を読んでほしい」と力説していた。

言葉を連ねて説明されるより、1枚の絵を見ることで魂を揺さぶるようなメッセージを読み取ることができるからなのだろう。


今回は、自分が読み聞かせをしてきた絵本から、ビジネスパーソンの琴線に触れそうなものという観点からいくつかピックアップして、感想をまとめてみます。

内容・オチまで書いているところご了承ください。




もぐらとずぼん

チェコの国民的アニメーションキャラクターである「もぐらのクレテク」の原作。作者は、アニメーション監督、絵本作家、イラストレーターであるズデニェク・ミレル
軒先に干してある青いズボンがたまらなく欲しくなったもぐらが、行く先々で出会う動植物たちの助けを借りながら、自分だけの青いズボンを手に入れる物語。
「わらしべ長者」のようにわずかなものから始まり最後は高価なものを手にいれるというのではなく、ズボンに必要な生地から作り始め、裁断や縫製まで動植物たちの協力を得て実行していく過程が、何とも事業を進めてるっぽくておもしろい。
エビガニから「生地を持ってきたら切ってやるよ」と言われ、ヨシキリから「切られた生地があったら縫ってあげるわよ」と言われ、忠実に探そうとするも、生地が見つからない。
「どうしたの?」と憐れむ葦に泣きつくと、生地を作る具体的なアドバイスをもらって、再度チャレンジして・・・。

「欲しい」「実現したい」と思ったことを、素直に追い求めているといろんなところから助けが得られるので、「あきらめたらそこで終わり」なんだなと再確認できる絵本である。

ちなみに、もぐらくんシリーズの絵本は偕成社からも出版されており、そちらの方がイラスト的で読みやすいかもしれない。

なお、調べてみると、このもぐらくんは同国で日本でいうところのドラえもんとかサザエさんに匹敵するほど、広く愛されているキャラクターのようだ。チェコに行くことがあれば、その雰囲気にも触れてみたい。


きょうはよいてんき

アメリカで権威ある児童書の賞であるコールデコット賞を受賞した本作が伝えるメッセージは、『もぐらとずぼん』のような優しさではなく、「自分のケツは自分で拭え」という厳しい現実である。

勝手におばあさんのミルクを飲んでしまったことで尻尾を切り取られた狐は、「ミルクを持ってきたら尻尾を縫い付けてやる」と言われ、牛の元を訪れる。牛は草を、原っぱは水を、水を持った娘からはガラス玉を、ガラス玉を持った行商人からは卵を、鶏からは小麦粉を・・・と交換条件を突きつけられ続けた狐は疲れ果て、粉挽のお爺さんに泣きつく。
哀れんだおじいさんが小麦粉をくれたので、来た順に交換を重ね、おばあさんにミルクを返すことができた狐はようやく尻尾を縫い付けてもらえ、森の仲間のもとに帰って行った。

牧歌的なタイトルや柔らかい絵とは裏腹に、犯した罪と罰、その業苦を淡々と描いていて、初めて読んだ時はなかなかの衝撃だった。
よすがとなる救いの手がいつ差し伸べられるかわからない状況で、業務や事業を進めないといけない時ってあるけれど、手に負えずどうしようもない時はその気持ちを吐露することで道は開けるのかもしれない。

アルメニアの民話をもとに作られた、というところもおもしろい。
世界中にディアスポラがいて、ビジネスセンスに長けて、云々といった歴史性からユダヤ人との類似性も指摘されるアルメニア人
置かれた環境や状況を問わず自活しなければいけない民族としての矜持や自負も垣間見えるのか・・・

そんな絵本です。


月へミルクをとりにいったねこ

目標は非現実的な方が良い、と言われる。
脳の恒常性維持機能(ホメオスタシス)は自分が心地良いと感じるコンフォートゾーンで甘んじるよう創造性が働くので、夢が現実的になりがちだからだそうだ。

住んでいた牛小屋の牛のミルクが出なくなり、子どもが餓死するリスクに晒された母猫は、月にミルクを持った老夫婦がいると聞き、満月の夜に月を目指す。
我が子に呑ますミルクがあると信じて諦めず向かい続けた母猫が見つけたものは・・・

曲がらぬ信念の強さを母猫が体現していて心地よい。

なお、この旅路には、ぶたとおんどりと子牛も同行する。
しかし、ぶたは別の楽しみを見つけ、おんどりは未知の旅への不安に駆られ、子牛は手を伸ばしても届かない月の遠さに諦め、落伍していく。

夢や信念の大きさや深さは人それぞれなのだが、大きな夢を持った個人に出逢った時に自分を高められるか、高められない時にどんな行動を起こすかについても、考えさせられる絵本である。

リーダーシップだけでなくフォロワーシップも学べる点で深みがあると思う。


あおのじかん

青色には、心を落ち着かせ、集中力を高め、目標までやり抜く意思の強さを与えてくれるパワーがあるらしい。
本書そのものは、世界が薄暮から夜にかけて、その色を紺碧から宵闇へ移していく時間の中で、息づく様々な生命を描いている。
初見の時は、美術館でアート鑑賞をしているような気分で、見惚れるように眺めていた。(その時点ですでに読み聞かせしていることを失念していたわけだが)

青のパワーが、じわじわと染み込むように、心身を通り抜けていった。

仕事で忙しく、疲れて出不精になっている時、部屋の片隅にこんな絵本があったら、手に取ってみたくなる・・・のかな。

なお、表紙には青鷺が描かれている。
日本では妖鳥として扱われがちだが、西洋や古代神話の世界では聖鳥だそう。(参考ホームページ
表紙を飾っているのは、単に青いからという理由ではなさそうだ。



今回はここまで。


ビジネスパーソンに読み応えのある絵本はまだまだ多いと思う。
もっと紹介できるよう、子ども達と一緒に絵本を読んでいこう。



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