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F1プレビュー 2022年の注目点を語る

いよいよ、2022年のF1グランプリが開幕。
レギュレーションが大きく変わる今年。
誰が笑い、誰が泣くことになるのか?
最後に栄冠に輝くのは誰か?
全ては始まってみないとわかりませんが、今回は開幕に向けて楽しみな点、注目すべき点を語ってみたいと思います。

チームの勢力図は変わるか?

今まで、レギュレーションの大幅変更のタイミングでチームの勢力図が大きく変わることが多々ありました。

印象的だったのは2009年。
よりダウンフォースの減少を狙ったレギュレーションに変わり、マシンが大きく変わりました。
そこで頭角を現したのが、ロス・ブラウン率いる「ブラウンGP」。
スポンサーがほとんどない真っ白なマシンカラーに蛍光イエローのラインが入った、インパクト大のマシンが開幕戦から破竹勢いで連勝を重ねます。
ドライバーはジェンソン・バトンとルーベンス・バリチェロ。
二人で何度もワンツーを独占。結果、バトンが初のワールドチャンピオンに輝きます。

ブラウンGPの前身は、第3期ホンダのワークスチーム。
ミハエル・シューマッハを擁し、なかなか勝てなかったフェラーリを常勝軍団にまで押し上げた超一流のエンジニアであるロス・ブラウンを、チーム代表として迎えたホンダ。
第3期ホンダは、当初エンジンサプライヤーとして参戦し始めましたが、最終的にBARチームを買収し、マシンも手掛けるワークスチームとして参戦。
なかなかいい成績を残せない中、2007年末にロス・ブラウンがやってきます。

彼はレギュレーションが変わる2009年にターゲットを絞り、新しいマシンの開発に時間を費やします。
いよいよブラウンが手掛けたホンダがお目見えする…というタイミングで、リーマンショックの影響によりホンダが撤退してしまう。
残されたのはチームと新開発したマシン。
ブラウンはあらゆる手を模索しますが、結局自身の財産を投げうち、ホンダからチームを買い取る形で2009年の参戦にこぎつけます。
エンジンは全チームからの同意を得て、メルセデスから供給を受けました。

ブラウンGPの秘密は、「ダブルディフューザー」。
マシン底面の空気を跳ね上げ、ダウンフォースを生み出すパーツを、上下2階建てにしたのです。
今年と同じように、マシン上部の空力デバイスが大きく削減される中、レギュレーションの隙をついた苦肉のアイデアでした。
他にもそれに気づいて採用したチームもありましたが、マシンパッケージに優れたブラウンGPは他車を圧倒。後半は苦戦しましたが、見事ドライバーとコンストラクターのダブルタイトルを獲得。

結局ブラウンGPはこの1年の活躍のみ。
シーズン終了直後にメルセデスによって買収され、ワークスチームに生まれ変わりました。
ロス・ブラウンもチームに残りますが、最終的にチームを去り、今はF1のテクニカルディレクターを努めています。

余談ですが、ブラウンはチームを引き受け先を探す中、ヴァージングループのリチャード・ブランソン卿にも話を持っていきます。
しかし、スポンサーにはなってくれたもののチーム買収に至らず、後に自身のチームを立ち上げますが、うまくいきませんでした。
その後宇宙事業を立ち上げたブランソン卿。
初の宇宙遊泳に喜ぶ姿を見て、この話を思い出しました。
お金持ちの考えることはよくわかりません…。

時は過ぎて2014年。
ここでもう一度大きなレギュレーション変更を迎えます。
自然吸気式V8エンジンから、ハイブリッドのパワーユニットへ。
テスト機会が少なく各チームが苦戦する中、メーカーの強みを生かしてPUとマシンが一体となった開発に成功したメルセデスが常勝軍団に変貌。
現代の最強ドライバー、ルイス・ハミルトンを擁して毎年のようにチャンピオンを獲得。
2021年、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンの前に苦杯をなめましたが、ハミルトン自身は史上初となる8回目のタイトルを狙います。

このように、レギュレーション変更のタイミングでマシンの開発に成功したチームはより成績を上げ、開発に失敗したチームはズルズルと下位に沈む可能性があります。
今まで優勝争いを繰り広げていたメルセデスやレッドブルが変わらぬ速さを見せるか、はたまた別のチームが頭角を現すか、開幕戦から非常に楽しみです。

プレシーズンテストと、気になる「ポーパシング」

さて、F1は毎年各チームがニューマシンを制作し、参戦しなければいけません。
そのため、開幕前に合同のプレシーズンテストが行われます。
今年も2月にバルセロナ、3月に開幕戦の舞台となるバーレーンで計6日間の
テストが行われました。

テストはタイム計測も行われますが、レースの時のようにいつも同じチーム、ドライバーがトップに立つ、といったことは見られません。
各チームとも独自のプログラムのもと、順を追ってテストを行いますので、はっきり言ってタイムはアテにならない。
タイヤもすべての種類をピレリが持参し、各チームがどのタイヤでどんな走行をしているのか、パッと見はわかりません。チーム側も詳細を知られてはなるまいと、テスト中は情報をひた隠しにします。

ただ、どのチームも順調に周回を重ねていたように見受けられました。
時間がなくてあまり詳しくは見ることができませんでしたが、各チームとも開幕戦に向けて十分走り込み、データを得たようです。

昨年、チャンピオンを狙うレッドブルを苦しめ、シーズン終盤に異次元の速さを見せつけたメルセデス。
今年はウィリアムズで大活躍を見せていたジョージ・ラッセルを迎え、新たなドライバーラインナップで開幕を迎えます。
そして前述した通り、ルイス・ハミルトンの前人未踏となる8回目のチャンピオン奪取は叶うのか?
そんな常勝軍団メルセデスですが、どうやら今年のマシン開発に苦戦している模様。
ストレート上でマシンがポンポン跳ねてしまう「ポーパシング」に苦しんでいるようです。

バルセロナテストで各チームに見られたポーパシング。
ストレート走行中にポンポン跳ねてしまうと、マシンが不安定になりスピードが安定せず、ラップタイムが失われてしまいます。
それだけではなく、最悪な例が1999年のル・マン24時間耐久レース。
くしくも同じメルセデスのGTカーが、テストの段階からこのポーパシングに苦しみ、きちんとした解決策を見いだせないまま決勝へ。
するとレース中、インディアナポリスコーナー手前のストレートで、跳ねたマシンの前部から空気が大量に入り込み、なんとマシンが走りながら宙を舞い、コース外に飛び出してしまうアクシデントが発生。
幸いドライバーは軽傷で済みましたが、中継を見ていて戦慄が走るほどのショッキングな映像でした。

F1マシンとGTカー。マシンの構造こそ違いますが、何が起こるかわからないのがレース。メルセデスのGTカーのような事故が発生しないとも限りません。
ただ、そこは常勝軍団メルセデス。時間はかかるかもしれませんが、トラブルをしっかり分析、解決してくると思います。
シーズン序盤、鬼の居ぬ間にどのチームが着実に勝利を重ねるか。そこも面白い点になってきますね。

タイムこそ参考になりませんが、どうやら今年のフェラーリは調子がよさそうだ、という話が出てきました。
順調にラップを重ね、タイムも落ち着いているようです。
昨年まで使用していたマシンは開発に苦しみ、思うような結果が出なかっただけに、新レギュレーションのマシン開発に成功し、開幕戦からいい結果を出せれば、その流れで上位を狙える存在になるでしょう。
F1草創期から参戦し続ける名門チームの復活は見ものです。

そして我らがレッドブル。
久しぶりに、チャンピオンのみが付けることを許される「カーナンバー1」が戻ってきます。
カーナンバー1をつけるのは任意となっており、ハミルトンは自身のラッキーナンバー「44」にこだわったため、ここ数年カーナンバー1を見ることがなかったのです。

レッドブルもテストでは空力パーツを試行錯誤し、最終的にタイム上位に食い込んできていますので、順調にテストを終えたと思われます。
パワーユニットも「レッドブル・パワートレインズ」と変わりましたが、実質ホンダが制作したものを使用します。
マシンに誇らしく掲げられた「HRC」のロゴと共に闘う2022年。
王者フェルスタッペンはもちろん、チームメイトの「チェコ」ことセルジオ・ペレスの走りにも注目です。

今年のルーキードライバーはアルファロメオの周 冠宇(ジョウ・グァンユウ)のみ。
彼は今年、晴れて中国人初のF1ドライバーとなりました。
上海出身の彼は長年ヨーロッパで経験を積み、ようやくチャンスが巡ってきた苦労人。同じアジア圏のドライバーとして応援したいひとりです。

アジア圏のドライバーと言えば、忘れてはならないドライバーがもうひとり。

角田裕毅 2年目の挑戦へ

今年もアルファタウリからF1に参戦する日本人ドライバー、角田 裕毅(つのだゆうき)。
デビューイヤーとなった2021年シーズンは開幕戦から9位入賞。
センセーショナルなデビューレースでしたが、その後は苦しい展開も経験しました。
そしてシーズン締めくくりとなる最終戦アブダビGPでは4位。
ルーキードライバーの中ではコンスタントにポイントを獲得。
上々のデビューイヤーだったと思います。

そんな彼の2年目、真価が問われる1年が始まります。

現代のF1はシーズン中のテストが禁止されているため、ルーキーにとってはマシンに乗る時間が限られている分難しい。
複雑なマシンへの理解や、走ったことのないサーキットへの対応が求められるからです。
ただ、F3やF2といった下位カテゴリーでのレース経験や、各チームが所有するシミュレーターも駆使して何とか乗り切りながら、経験を得てゆくのです。

今年は初めて走るサーキットは第5戦のマイアミのみ。
初開催となるため、誰もが初めて走ります。
昨年の経験を生かして頑張ってほしいのですが、大きく変わったマシンに対応できているかも気がかり。
ただ、バーレーンテスト2日目には誰よりも周回を重ねていました。
他のサーキットへの対応も気になりますし、見所です。

やはり、日本人なら日本人ドライバーを応援したい。
さらに、何も問題がなければ、10月に鈴鹿サーキットで日本グランプリが開催されます。
遂に母国凱旋となる角田の走りに注目です。

さいごに

この状況下で語るべきか迷う点ではありますが、現時点で思ったことを書いておきます。

昨年ハースからデビューし、今年も参戦が決まっていたロシアのニキータ・マゼピン選手が、バーレーンテストの直前にチームとの契約が打ち切りとなりました。

主催者であるFIAは中立的な立場から彼の出場を認めていましたが、所属するハースチームがアメリカ国籍のチームであること、西側諸国を中心とした国々が経済制裁などの措置を実施する中、彼との契約は難しい状況になるのは明らかでした。

角田と共にF2を戦い、スーパーライセンスを獲得してF1ドライバーとしての資格を得たマゼピン。
彼が得たシートは父親の会社がチームを支援し、得たものでした。
チームもロシアマネーを得て運営が継続できていたので、ギブアンドテイク。F1の世界では珍しい事ではありません。
また彼自身は素行不良な面もあり、私は正直あまり応援していませんでした。
しかし、こういった大きな力の前には、いくら巨額の資金があってもなす術がありません。

今回のロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻は決して許されるものではないし、たくさんの犠牲者が出ていることからも、今こういう話はすべきではないかもしれません。
しかし、彼やお父様の会社が軍事侵攻に直接関与したわけではないはずです。
正にロシア政府や軍部の行動の煽りを受ける結果となってしまいました。
ロシアGPも中止となり、今までF1やほかのカテゴリーで活躍したロシア人ドライバーの今後も心配です。

ここははっきり申し上げたい。
責めるべきは今回の軍事侵攻を進めているプーチン政権。
そのせいで、今まで頑張ってきた人々が活躍の場を失ってしまうのは残念です。
今後はこういった形でグランプリに参加できない人が出てくるのは、もう見たくありません。

今もウクライナは甚大な被害が出ていますし、死傷者も多数。国外避難を余儀なくされた方々の表情をテレビで見るたび、こちらも苦しい気持ちになります。
ロシア政府と軍が進めている軍事侵攻は決して許される事ではない。
早くこの異常な事態が終結し、平和な中でグランプリを楽しめることを祈っています。


※タイトル画像は角田裕毅選手の公式ツイッターより使用させていただきました。
正念場となる2年目のシーズン。今年も応援します!
鈴鹿で表彰台に昇る姿が見たい!!Go!Yuki!!



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