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ゲワイだけじゃない!TM NETWORKの魅力と思い出を語る【後編】

TM NETWORKがデビュー40周年を迎えました。
本当におめでとうございます。

今月の初めに、TM NETWORKの魅力と思い出を記事にまとめました。
たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。

この記事では初期の活動に関して、私の思い出話をあれこれ語ったのですが、それでもまだ語り足りない!ということで、後編を書くことを予告していました。

ちょっと時間がかかってしまいましたが、この後編では今回は主にTMN時代〜1994年の活動終了の頃について語ってみたいと思います。


ちなみに記事内では、親しみを込めてお三方を「あだ名」で書かせていただいています。
いちいち「宇都宮さん」「小室さん」と書くと堅苦しいと思い、FANKSの皆さんにもお馴染みのこの呼び方を敢えて使用しました。

宇都宮隆さんは「ウツ」
これはみなさんにもお馴染みですよね。

木根尚登さんは「木根さん」。
木根さんは「木根さん」なんですよね…
もっと親しみやすい呼び方ってあるんでしょうか?「なおちゃん」とか?

小室哲哉さんは「先生」
これはいつ頃から呼ばれているのかわかりませんが、なぜか小室さんは「先生」と呼ばれている印象です。
TMの頃から呼ばれていたのか?はたまたその後のTKプロデュースの時期だったか?

久保こーじさんをはじめとする、先生の「側近」とも言うべきスタッフが言いはじめたのでしょうか?
でも、木根さんは「てっちゃん」と呼ぶので、そのように呼ぶFANKSの方も多いと思いますが、本記事では「先生」とお呼びします。


さて、話は戻ってTM NETWORKの活動のお話。

前回の記事でおおいに語った名盤「CAROL」がヒットし、ツアーも大成功。
その後、TM  NETWORKは新たな挑戦をはじめます。

Rhythm Red

TM NETWORKは1990年にコンセプトを一新。
アーティスト名も新たに「TMN」に変更しました。

デビュー当初に掲げていた、ハードなギターサウンドに頼らない、デジタルを前面に押し出したダンスチューンというコンセプトとは双璧をなす、よりハードなサウンドを交えた音楽性となりました。

特筆すべきはアルバムのOPを飾る「TIME TO COUNT DOWN」

特徴的なのは、イントロから流れる「ドコドコドコ」という速いビート。
歌番組で先生が最新機材を並べてこの曲をプレイしているのを見て、きっとあのシステムで作られて演奏しているに違いないと思っていたのですが、どうやらドラムのツーバスが元になっている模様。

調べてみたところ、プレイしていたのはセッションドラマーの第一人者、山木秀夫さんでした。
ドラムはFANKSにもお馴染み、FENCE OF DIFFENCEの山田亘さんとばかり思っていましたが、違ったようです。

ハードロックのようなリズムとハードなギターが唸りを上げる派手なサウンドが特徴的ですが、ギターの後ろで鳴っているトラックだったり、木根さんのコーラス、もちろんウツのスタイリッシュなボーカルも際立つ。
新たなサウンドへの挑戦だが、TMらしさも残していることも秀逸です。


「69/99」ではイントロのエンジン音がスリリングな演出。
実は先生のフェラーリのエンジン音だったのだとか。

メロディラインはポップですが、ハードなギターサウンドと、リズムパターンやフィルによってよりハードロック寄りのサウンドを作り上げています。

そしてCM曲にもなったクールなダンスナンバー「RHYTHM RED BEAT BLACK」。

この曲は本当にカッコよくて好きです。
アタマ2曲のストレートなビートから、大きなうねりのグルーヴィなダンスナンバー。

特徴的なのが、ギターのトーキングモジュレータ。
ライブでも葛Gが透明なチューブを咥えるようにしながらギターを弾いていましたね。

トーキングモジュレータとは、ギターの音をまるで喋っているように変えられるエフェクター。

チューブの先にマシンがあり、それをギターとアンプの間に接続して使います。
チューブに向かって喋るように声を出すと、それと同じような表現がギターの音に加わります。

有名なところでは、BONJOVIの「Livin’ on a Player」でも使われていますね。

他にも、バラードと見せかけて最後に豹変する「GOOD MORNING YESTARDAY」や、YAMAHAのシンセサイザー「EOS」にサンプルボイスが収録されている「SECRET RHYTHM」。

「WORLD’S END」や「BURNIN‘ STREET」は少しポップス寄りでノリのいい曲。
「REASON LESS」のような聴かせる曲や、「TENDER IS THE NIGHT」は王道のバラード。
そして「LOOKING AT YOU」は木根さんが歌うアコースティックバラード。

最後にはアルバム前にシングルとして発表された「THE POINT OF LOVERS‘ NIGHT」では、重厚なサウンドを聴かせてくれます。

まさに、楽曲の多様さを見せつけるアルバム。
今聴いても色褪せない名盤です。

先生とシンクラヴィア

当時、水曜夜に放送されていた「夜のヒットスタジオ」にて、古舘伊知郎さんが先生の機材群を見て「大手町のオフィス街のような佇まい」と評したことをよく覚えています。

レコーディングやライブに大活躍したのが、伝説のワークショップ的なシンセサイザー「シンクラヴィア」。

※Wikipediaより

お値段1億円もしたという、当時最先端のシンセサイザーでした。
ものすごく高価な機材ですが、いったい何が違うのか?

シンクラヴィアの正体は、シンセとコンピュータが融合したワークステーション。
コンピュータにシンセの音やリズムマシンなどがすべて入っていて、これ1台でデジタルレコーディングができる、すごいマシンでした。

…あれ?そんなの当たり前じゃない?
そう思われるでしょう。

シンクラヴィアが登場したのは70〜80年代。
当時からパソコンは普及しており、Appleが視覚的な操作ができるGUIを備えた「Machintosh」を発表したのが1984年。

先生をはじめ、多くのミュージシャンがシンクラヴィアを選んだということは、それだけ性能が高かったと言うことと、当時のパソコンはまだまだプロユースではなかったのかもしれません。

しかし、90年代も半ばを迎えると、パソコンの性能も向上。
1995年にWindows95が発売されると、それまでMacでしか使えなかった作曲のためのソフトも、多くのパソコンで利用できるようになります。
DTM(Desk Top Music)という言葉が一般的になってきました。

先生もそこは見逃さず、1994年にはパソコンを使用した作曲環境に切り替えたのだそうです。
当時は、クリエイターはこぞってMacを使っていた印象がありますね。

デジタルで再現されたシンセサウンドと、リズムも打てて作曲もできるワークステーション。
シンクラヴィアのような一部の機材でしかできなかった事が、パソコンを介して誰でもできるようになりました。
90年代はまだ高価でしたが、パソコンも録音機材も小型化が進み、手に入りやすい価格になっていきます。

iPhoneの登場でコンピュータも手のひらサイズとなった現在、当時1億円もしたシンクラヴィアの機能は、そんな小さな電話機にも入ってしまうほど進化しました。
iPhoneにインストールされている「Garage Band」で、ほとんどの機能を再現することができるのです。しかもタダで。

今やプロと同じ作曲環境が、だれでも十数万円ほどのコストをかければ、ほぼすべて手に入れることができてしまうのです。
決して「それじゃ先生が大損じゃないか!」という話ではなく、この進化はすべてのミュージシャンにとって、とても有益な進化でした。


クールなボーカリスト ウツの存在感

1994年、TMNは突然「終了」を宣言します。
デビューから10周年を迎えたタイミングで、活動に一区切りをつけることになったのです。

TMN終了を受けて発売された3つのベストアルバム。
ウツのダンスセレクト「RED」と木根さんのバラードセレクト「BLUE」。

中でも私が当時購入したのが、先生がセレクトした、シングル曲を集めたベストトラック「BLACK」。

「Self Control」から始まり、最近のヒット曲から懐かしい初期の曲まで。
前回記事で紹介した「Gift For FANKS」を聞く前にこのアルバムを買ったので、「金曜日のライオン」も「1974」も初めて聴きました。


TMNになってから顕著になったのですが、3人揃ってテレビ番組によく出演してくれました。
そのため、彼らのパフォーマンスはよくテレビで見ていました。

TMのアイコンといえば、やはりウツのクールでファッショナブルなステージング。
長い髪をなびかせながら、魅力的なダンスでステージを彩る。
TMはウツ抜きでは語れないでしょう。

元々、先生と木根さんが共作した曲をボーカリストに歌ってもらう、というコンセプトで始まったプロジェクト。
当初、外国人のボーカルを迎える予定だったそうです。

しかし、ビザの関係でその話は流れてしまい、その代わりとしてウツを迎えよう、ということになったのだとか。

しかし、今考えてみると、そのチョイスは大正解でしたし、運命でもあったのだと思います。

ボーカリストが外国人のアーティストはあまり前例がなく、先生や木根さんの曲を持ってしてもヒットを飛ばせる確証はありません。

でもボーカリストが日本人ならデビューへの障壁はないでしょうし、ウツのルックスならヒットは間違いないはず。

その思惑通り、多くの女性FANKSの心を鷲掴みにしたのは言うまでもないですね。

「BLACK」にも収録されているダンスナンバー「DIVE INTO YOUR BODY」。
2021年に行われた「ベスト・ライブ・パフォーマンス」の投票でも1位になっていました。

それを記念して、Youtubeでプレミア公開されたCAROLツアーの映像を観ましたが、カッコよかったですね。
FANKSのみなさんの心をどれだけ鷲掴みにしたのか、投票結果が物語っています。

ちなみにこのライブ映像はこの時初めて見ました。
DIVE INTO YOUR BODYは当時シングルを買うほど好きな曲だったのですが、そのライブパフォーマンスを30年近く経ったタイミングで見ることができるとは!

そして、イントロが流れると同時に飛び出してきた女性ダンサーと、彼女と絡むようにパフォーマンスする真紅の衣装を身に纏ったワイルドなウツの姿が本当にクール!

衣装や機材を見ると年代を感じさせますが、1989年であの規模のライブをやっていたことは驚きでした。
そして、何よりも懐かしい!!

※TM NETWORK公式 Youtubeより、ベスト・ライブ・パフォーマンス投票のTOP10ダイジェスト映像。
若くてエネルギッシュなウツの姿も素敵ですが、最近も年齢を感じさせないスマートなシルエットがカッコいいですね。

あの映像を見てから、確か8cmシングルが今でも残っているはずだと部屋を探したのですが、出てきません。
よく思い出してみると、1989年当時はまだCDを再生できる機材を持っていなかったので、なんとシングルカセットを買っていたのでした!
8cmシングルも今となってはレトロ感が漂いますが、それよりもレトロなシングルカセット!!

テープデッキが手に入りにくくなってしまったので、カセットテープはダビングしていたものも含めて全て処分してしまいましたが、ちょっと勿体無い事をしましたね。
他にもサザンや爆風スランプ、バービーボーイズのカセットテープを持っていました。


1994年の東京ドーム2Daysをもって、TMNの活動は一旦終了します。
ラストシングルと銘打って発売された「Nights Of The Knife」も好きな1曲。
人気絶頂のまま活動を終了する寂しい気持ちが、今でもこの曲を聴くと蘇ってきます。

東京ドーム公演「LAST GROOVE」はCDにも映像作品にもなりましたが、NHKの特集番組が放送されました。
当時の番組を何度も見返したことを覚えています。

※TM NETWORK オフィシャルYoutubeより、Nights Of The KnifeのMV。
切ないメロディラインに乗せて、これからも未来を創っていく前向きな歌詞が印象的。
冒頭で先生がシンクラヴィアを操作するシーンも出てきますね。


Get Wild Decade Run

TMN終了後、各々のソロ活動に入った3人。
ウツはユニットやソロでボーカリストとしての活動を継続。
木根さんもソロ活動や執筆活動を展開。

ただ、TMN終了後の活動と言えば、先生の活躍でしょう。
これについては説明不要、と言うよりは活動の内容が濃すぎて短くまとめるのが難しいほど。

1990年代後半~2000年代前半にかけては、「TKサウンド」「TETSUYA KOMURO PRODUCE」というワードが日本の音楽シーンを席巻した、と言っても過言ではないでしょう。

数多くのミュージシャンやボーカリストを輩出し、「TKファミリー」とも言われましたが、スタイルとしては「最先端のダンスミュージックを探求し続ける」という活動の結晶だと思っています。

「H Jungle with T」が一番わかりやすい例ですよね。
ハウスのような早いビートと、レゲエのようなゆっくりしたグルーヴをミックスさせたような、「Jungle」という新しいダンスビートが誕生していました。

先生はそれをいち早く察知し、ダウンタウンの浜ちゃんのボーカルと、マーク・パンサーのラップを取り入れて売り出し、空前のヒットとなりました。
当時先生は「世界中で一番売れたジャングルのトラックになったね」と語っていました。

当時、TKサウンドのCDが次々とリリースされ、買っても買っても追いつかないので、気になった曲をレンタルする程度にとどめていましたが、「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント〜」のシングルCDは買った覚えがあります。
つい先日、テレビ番組の企画で再結成していましたね。

大きなムーヴメントの波に乗り、時代の寵児となった先生。
その流れの中で、1999年にTM NETWORKが再結成します。

その時に発表されたのが、「Get Wild Decade Run」。

※TM NETWORKの公式Youtubeより。

節目にリリースしたシングルが「Get Wild」というのも、TM NETWORKを象徴する曲であることがうかがえます。

でもサウンドは大胆なアプローチ。
TKサウンドで最先端のダンストラックを追求し続けた先生の影響が色濃く出ています。

活動を再開した後のTM NETWORKのライブには何度か足を運んだ記憶があります。
前回の記事で書いたトリビュートライブの後に、同じ友人に誘われて、横浜アリーナと大宮ソニックシティに行った記憶が。
どのツアーなのか忘れてしまいましたが…大宮ソニックシティ公演ではかなり前の方で見た記憶もあります。

ただその時は以前のバンド形態ではなく、先生が作るトラックに合わせて、懐かしい曲から新曲を次々と演奏するライブでした。

割と生音のライブが好きなのですが、それとは180度違ったサウンドを聴かせてくれるライブで、これはこれで素晴らしかった。
先生の作り出す世界観に酔いしれた時間でした。


その後は、新曲が出たら必ずチェックする、といったのめり込み方はしませんでした。

ずっとヒットチャートをにぎわせる、といった活動をしていた印象はありませんが、音源のリリースは継続的にありましたし、ライブツアーも続けていたので、たまにテレビでライブの模様が放送されていました。
テレビで久しぶりに見ると、あのヒット曲の数々に心躍りましたね。


新型コロナのパンデミックの中配信してくれた「How Do You Crash It?」も一部だけですけど見ました。

大変な時でしたけど、お三方が元気にFANKSの前でパフォーマンスをしてくれたことに安堵しましたし、配信ライブという新たなムーヴメントにアジャストする姿を見て、新たな時代を感じる事ができましたね。

※TM NETWORKの公式Youtubeより。


デビュー40周年に寄せて

そして2024年。
1月に初めてKアリーナ横浜へ行った際の記事を、FANKSの方がピックアップしてくださいました。

ああそうか…TM NETWORKのライブが近いんだな、とその時再認識。
長く続いたツアーの最終公演だったのですね。
初開催の会場でしたし、終演後の混雑が話題になっていたので、その情報収集のために拡散していただいたのでしょう。

40周年という節目に変わらずツアーを続けてくれているのが嬉しかったですし、それを楽しみに会場へ足を運ぶFANKSの皆さんの事を思うと、ほっこりした気持ちになりました。

「是非楽しんでくださいね」とその方のXへ返信しました。
肝心のスケジュールを1週間違えてしまいましたが…。

ライブのセトリも見ましたが、まさかのCAROL組曲まで演ってくれるとは!
私が好きな曲も次々演ってくれましたし、アンコールにはまさかの松本孝弘さんも登場したことが話題になりました。

ああ、このセトリなら見に行ったらよかったなぁ…とやや後悔しましたが、夢中になって聴いていた頃や、友人に誘われてライブに足を運んだ時期からだいぶ時間が経ち、自由にライブに行きまくれる環境ではなくなってしまいました。

ただ、それも時間の流れというもの。
現在のお三方を追いかけてKアリーナには行けませんでしたが、今でも好きな曲たちを聴くと心躍りますし、ワクワクした気持ちになります。

当時の機材で録音されたトラックは昔の記憶を呼び戻してくれますし、新しい機材でパフォーマンスしてくれる動画を観ると、TM NETWORKの現在地を見せてくれるようでワクワクする。
名曲、名演とはそんな存在なのだと思います。

トリビュートアルバムも時間をかけて聴いています。
あの名曲たちを今をときめくアーティストが新しい解釈で表現してくれたり、実力派のベテランがしっかり聴かせてくれたり。
どのトラックも素晴らしいです。
折を見て、このアルバムも語ってみたいと思っています。


改めて、デビュー40周年おめでとうございます。
これからもお元気で、最先端のサウンドとパフォーマンスを魅せてほしいと思います。


タイトル画像は、TM NETWORKオフィシャルサイトより使用させていただきました。
FANKSの皆さんにはもはやお馴染みかと思いますが、お三方の現在地を示すにはこの画像以外ないですね。

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