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N高で生徒の交流の場としてSlackを使ってきた経緯と運営時に心がけていること

学校法人角川ドワンゴ学園のIT戦略部の部長をしている吉村総一郎(@sifue)です。

角川ドワンゴ学園が運営するN高等学校、及びN中等部ではSlack(スラック)が生徒たちの交流の場として利用されています。N高等学校ではチャットプラットフォームであるSlackを学校空間と定めており、教職員により運営がされています。現在N高等学校のSlackのメンバーは約15000名、パブリックチャンネル数は約5000チャンネル、投稿メッセージ数は1日2万~7万メッセージとなっています。

Slackは外出自粛が続く日本にあって、交流をしたいN高等学校の生徒たちの交流の場として貴重な空間となっています。

生徒へのチャットプラットフォームの提供は、費用面からも運用面から中学、高校、大学において手を出すことが難しいものだとは思います。しかし、生徒の満足度を上げるためにかなり価値の高いものだあると感じています。

以上を踏まえ、どのように学校法人角川ドワンゴ学園が生徒向けのSlackを運用しているかというノウハウについて紹介することにしました。

当初は生徒たちが盛り上がってなかったSlack、今は卒業で出たくない生徒たちがたくさん

まずSlackに関して、N高等学校開校当時、N高のSlackはあまり盛り上がっていませんでした。開校して4年かけて生徒たちのSlackチャンネル文化が成熟してきました。現在では、N高等学校の生徒は卒業するときにN高のSlackを出なきゃいけないことだけが本当に辛いと言ってくれるまでに生徒たちの中でSlackが大きなものになりました。

現在、生徒たちがメインに交流するチャンネルとして

・部活/同好会チャンネル
・担任によるホームルームチャンネル
・timesチャンネル (twitter風の個人チャンネル)
・趣味ごとにある雑談チャンネル

以上のようなチャンネルがあります。これらが多層的で有機的なコミュニティをたくさん作り、現在のような文化が形成されています。

Slackが生徒たちの交流にマッチする理由

Slackはとても生徒たちのコミュニティとマッチします。以下の他のSNSやメッセージサービスなどとの比較表を示します。

コメント 2020-05-04 143221

Slackは、ほかのSNSやメッセージサービスと比較して、

・チャンネルで高校生が趣味でつながれる
・教職員がおり、安心感がある (生徒が通報できる仕組みがある)
・メールを非公開設定にすれば生徒同士では匿名性を持てる

という性質を兼ねそろえています。つまりSlackは運用次第ではありますが、「生徒が匿名で趣味でつながれるのに安心感のある特別な場所」として運営することができるのです。

生徒向けにはSlackのポリシーを公布、教職員による日々の盛り上げ活動の実施

なお、生徒向けにはSlackポリシーを設定して運用を行っています。それらのポリシーの概要は以下の通りです。

・生徒は互いに自主性を尊重し、問題は当事者間で解決が基本
・チャンネルオーナーがルールを定めコミュニティマネジメントするよう推奨
・教職員は、犯罪、公序良俗違反、他人の権利侵害、他人を傷つける行為、ハラスメント、個人情報流出への対処 (通報は生徒なら誰でもいつでも可能)。

N高等学校ではこのようなルールを生徒間で周知し、教職員が徹底することで、健全なSlack運営を実施しています。

ただし、ルールを設定しただけではネットの学校の文化は育ちません。それを支える教職員の日々の活動があります。具体的には、

・日々の挨拶
・日々の褒める活動/リアクション
・数日毎のホームルーム開催
・毎週の部活動の開催
N予備校等の授業/イベント等の案内
・月刊N高新聞で発言数ランキング紹介
・荒らす生徒への生徒指導
・教職員の積極的なニュース紹介

こういったことを行いながらSlackの盛り上げや文化の醸成を行っています。もちろんこれとは別に、Slackや電話、Zoomなどを使った生徒指導は担任や特定分野のコーチによって行われています。

最後に

これからネットを多用した学校が一般的になれば、学校空間としてのチャットプラットフォームの活用を行う学校も増えてくるのではないかと思っています。その際に、角川ドワンゴ学園が行っているこれらの生徒におけるチャット文化を醸成法がどこかで役に立てば幸いです。

なお、Slackは本来の利用規約上では16歳以上の利用ができないようにはなっていますが、教育向けの特別な対応を行ってもらっていますので、ぜひSlackに問い合わせいただければと思います。

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