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食べるのがちょっと難しい人の旅支度

病気を経験してからとても慎重になった…ならざるを得なくなったのが、食事。食べられないものがあり、食べること自体がちょっと大変で、食べ方に失敗すると体調を大きく崩すことがわかっているから、旅行となるとかなり構える。

年齢的な衰えも含めて、「胃腸の底力がかなり弱い状態」だというのが主観的な感覚。もともと胃腸が弱い体質で、胃袋がないためによく消化できないまま食べたものが腸に運ばれていくので、腸に大きな負担をかけているのだろうと想像している。ときどきがくっと調子を崩して下痢が続き、しばらく普通に食べられなくなることがある。

この身体のコンディションになってから、とても重宝しているのが「in ゼリー」を代表とするゼリー飲料。飲み込みも楽だし、飲み物も兼ねているし(唾液が少ないために固形の食べ物だと飲み物も欲しくなる)、少しお腹が満たされて、エネルギーが摂れる。食事に時間をとっていられない場合や、お腹を壊して食事ができないときに備えて、持っておくと安心。お腹が空いたなとかエネルギーが切れてきたぞというとき、いつでも気軽にチュッとできて、キャップを閉めて簡単にバッグに戻せるから、大変に便利。

そしてもうひとつ常備しているのが、レトルトのおかゆ。食べると下痢の体調になってしまっても、おかゆならたいていなんとか大丈夫。自分で作ればいいのだけれど、レトルトはやっぱり手軽で非常食にもなるので(という言い訳で)買い置きしている。食べなくて済めばそのほうがありがたいけれど、やっぱり出番はやってくる。


去年は7月・8月と2か月間をヨーロッパで過ごした。今年は9月を中心に6週間。どちらも国際結婚の夫の帰省に旅行をプラスしての長期滞在。
以前なら2年連続で長期の海外なんて行かなかった。先のことを考えると散財するのが怖かったし、仕事があったからできなかった。
でも、自由業の仕事を治療で一度全部断るしかなく、治療後は体力的にも厳しくて仕事量が激減したままになってしまった。バリバリ働いていないことは正直みじめだけれど、その状況を逆に利用している。

そしてやっぱり、「自分は必ず死ぬ」「人生は意外と短い」と現実味をもって知ったことは大きい。あるかわからない将来のために節約するばかりじゃなく、今のためにお金を使うことができるようになったのは、ある意味前向きな変化だと思う。



いろいろ覚悟して長い海外旅行を決めたはずなのに、出発前は「自分は大丈夫なんだろうか」と不安がつきまとう。
元気でいるには食べ物から。ゼリー飲料とおかゆはお守りとしてはずせない。
けれど、フライトでチェックインできる荷物の重量には制限があるし、運ぶのが大変なので持ちたいだけ持つわけにもいかない。100ミリリットルを超えているので手荷物には入れられない。

昨年のヨーロッパ旅行には、迷った末に「向こうでは買えないだろうから」とおかゆを優先。確か10パックくらい持っていった。ゼリー飲料は諦めて3~4パックだけ持ったんだろうか。

最悪の事態に備えたわけだけれど、やっぱり2か月の間に3回くらい調子を崩しておかゆ生活になった。向こうのホテルのスタッフも親切で、安いビジネスホテルで電子レンジの設備がなかったのに「スタッフルームにあるから」と温めてくれたりもして、ありがたかった。

でもおかゆを優先して大正解だったかというと微妙で、きっとあるはずだからと諦めたゼリー飲料、ヨーロッパではほとんど見つけられなかった。1度、イングランドで見つけて買ってみたら、アップル味のはずがなんだか私にはトマトっぽく、日本のもののようにつるりとしていなくて ぐじゅぐじゅ っとした食感。ぬるいぐじゅぐじゅのトマトは、積極的に食べたいと思えなかった。やっぱり自国のものがいちばん口に合う。

そして結局、おかゆは旅の最後に残った1パックを置いてきた。お土産を入れるために250グラムでも空けたくて。
旅行中は出歩くことが多いわけで、外ではおかゆを食べたくても食べられない。逆に食べきれなかったし、そういうときはゼリーのほうが欲しかった。観光しながら空腹感をもてあまし、エネルギー切れで力が出なかった。


前回の反省をふまえて、今回の旅はできるだけキッチンがあるところに泊まり、どうしてもおかゆが欲しければ米から炊けばいいことにして、ゼリー飲料を優先。ゼリー11パックとおかゆ5パックをスーツケースに入れてきた。

そのほか病気前には装備しなかったものとしては、ダンピング症候群かなという具合の悪いときに血糖値を上げるためにラムネのタブレットを2袋。(去年5袋くらい持ったらやりすぎだった)

それから、万が一機内食が食べられなかったときのためにナッツやおせんべい、カロリーメイトなどのおやつをあれこれ持ち、搭乗前におにぎりを2つ購入。
重い麺類や脂っこいものはちょっと厳しくて、辛味が食べられない。この「辛いものがダメ」というのがけっこうやっかいで、カレー味が出てしまったら即アウト。(放射線治療後の喉にしみて痛い)
そこでありがたいのが、特別機内食。たとえばANAの「消化の良い食事」は、「腸疾患のある方向けの消化の良いお食事です。薄めの味付けで胃腸にやさしく、やわらかい食材を使用しています。揚げ物・味の濃い料理・黒胡椒・チリパウダーなどの刺激が強い食品は使用していません。」とあり、パーフェクトだ。

航空会社によって少しずつこの基準が違うのだと思う。
今回は中国系の航空会社で、辛味をいちばん恐れてこの消化の良い食事にあたる「BLAND MEAL」を選んだはずが、リクエストがうまく通っていなくて、結局予備があったというベジタリアン食になった。体に合わないのでたくさん食べたくないパスタ系がメインに出て大半を残してしまうこともあるけれど、それ以外はサラダや蒸し野菜、フルーツなどが出て、野菜はたいてい極端に味付けが濃くはないので、ベジタリアン食を選べば大きくはずさないことがわかった。

機内特別食は、健康のためだけでなく宗教上の理由で食べるものを選ぶ人たちも多く利用するもの。だから病気以前にも利用できたのに、信仰する宗教もなく、好き嫌いがないのがちょっとした自慢だったりで、ノーマークだった。これは、病気経験がプラスに働いた新知識。


まだ旅の序盤。おかゆとゼリーの行く末はいかに。


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