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炎の魔神みぎてくんのほん

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卓上遊技再演演義シリーズでも活躍するみぎてくん、陽気で元気、食いしん坊でドジな炎の魔神族、みぎて大魔神ことフレイムべラリオスが人間界に留学!相棒コージや講座の仲間と繰り広げるほの…
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2022年3月の記事一覧

炎の魔神みぎてくんクリスマス②

2.「結局、手作りが一番」  というわけで、コージたちはとんでもないクリスマスパーティーを開催するはめに陥ってしまったのである。いや、この企画は公正に見ると断じてパーティーではない。明らかに「闇鍋」、それもチョコレートや鷹の爪がはいった闇鍋の世界である。くじで当たってしまったものはありがたくもらわないといけないというルールがあるのだから、闇鍋とまったく同じである。少なくとも最低一つは恐怖のプレゼントがあるのだから余計始末が悪い。 「コージ、どうする?」 「どうするってなぁ

炎の魔神みぎてくんクリスマス①

1.「だからその『七面鳥の日』って」  年末が近づいて街路樹の葉が落ちてしまうころになると、それと入れ替わるように、街はにぎやかさを増すものである。ボーナスだ、クリスマスだ、お正月準備だと一年で一番イベントが集まっているのだから当然のことだろう。あわただしいことはあわただしいのだが、その分楽しい季節でもある。恋人とクリスマスはどう過ごそうかとか、プレゼントは何にしようかとか、はたまたおせち料理準備だの忘年会だの、本当に忙しくも楽しくなるようなシーズンなのである。街も美しいイ

炎の魔神みぎてくん ポリーニの発明天国④

4.「もしかして詰まっちゃうことも」  みぎてとコージはあんぐりと口をあけて空中をふわふわと飛ぶゴンドラを眺めた。ゴンドラは一見したところどうも木製…それも木の枝か根っこのようなものが巧みに絡まりあってできている。表面に銀色の塗料を塗っているために、照明を浴びて月のようにきらきらと輝いているのである。よく見ると驚くくらい細かな文様のようなものが絡まりあった枝で作られていることがわかる。コージも一応魔法大学の学生なので、この文様が魔法の力を持っていることは一目でわかる。 「

炎の魔神みぎてくん ポリーニの発明天国③

3.「上をご覧ください!」  さて、月日はまたたく間に過ぎ去り…というほど大げさなものではないが、ばたばたしているうちに結婚式の日は目前に迫ってきた。大体結婚式の招待状と言うものは、せめて三ヶ月前には配られるものである。ということは十分余裕はあったはずなのに…気が付けば目前になっている。もちろん主役の新郎新婦は目の回らんばかりの忙しさだとは思うのだが(当然ご両親などの親族もだろうが)、実はコージ達もいろいろ面倒なことになっていた。  ディレルの予言(というほど大げさなもの

炎の魔神みぎてくん ポリーニの発明天国②

2.「…それ多分、全部だ…」  シュリが結婚するという情報は数日のうちに大学中に知れ渡った。別に先生が一人結婚するだけの話なのだが、ここまで話題をさらうのも人徳(?)と言うかなんというかである。もちろん実はセルティ先生などはかなり前から知っていたのだが、こうなるのを恐れてか今まであえて話題にしなかったらしい。  シュリが結婚すると言う大事件を聞いて一番激しい反応を示したのは、これは予想通りポリーニだった。ご存知の通り自他ともに認めるシュリのライバル…女発明家の彼女である。

炎の魔神みぎてくん ポリーニの発明天国①

1.「実は二人には是非披露宴に」  バビロン大学魔法工学部の研究室は、訪れた人がびっくりしてしまうほど雑然としている。理工系の大学と言うものはえてしてそういうものなのだが、はじめてみた人は皆そろって呆れかえるほどごみごみしているのである。廊下には本棚やら故障した実験装置やら、それからロッカーとかが並んでいるし、部屋に一歩入ればこれまた古い実験台の上に雑然と転がっているガラス器具やら、そしてその間に設置された実験装置がある上に、周囲の棚には試薬やらファイルやらが乱雑に積み重な

炎の魔神みぎてくんボウリング②

2.「うそっ!手袋が暴走したわ!」  そういうわけでコージ達四人はバビロン市一番の繁華街である「すごろく大通」に繰り出したわけだった。「すごろく大通」というのはずいぶん変わった名前である。立ち並ぶ商店がまるですごろくのマス目のようで、街行く人がついつい店に止まってしまうということで名づけられたのだろう。たしかに右も左もいろんな面白い店ばかりで、ウィンドショッピングだけでも飽きない。  ボウリング場「ゴールデンボウル」はこのすごろく大通りの一角のちょっと大きなビルだった。屋上

炎の魔神みぎてくんボウリング①

1.「ボウリング行かない?タダ券持ってるのよ」  コージの住んでいるヘリコイド通りはバビロン大学の学生街である。当然の事なのだが学生目当ての下宿やら定食屋やら、それから喫茶店や雀荘やらがのきを連ねている。学生は毎日登校する時に、こういうのあまたの誘惑と戦わなければならないわけである。そして予想通りだが、かなりの割合で誘惑に負けてしまうものなのである。  もっともコージのように院の研究生ともなると、学部時代のようにほいほい自主休講を決め込むというわけにはいかない。研究室では

はぐれ魔神秘湯編 ~目玉くんは見た~③

③驚異の煩悩パワー!6.「あたしもやります。一人じゃ心配でしょ?」  「黄泉醜女」(よもつしこめ)…目玉が念写した奇怪な老人の正体は、黄泉の国にいる一種の邪霊だった。黄泉を支配する黄泉大神(よもつおおかみ)である女神イザナミの配下であり、それぞれが恐るべき力を持っているらしい(と、蒼雷は説明した)。「醜女」というからには女性のはずなのだが、この映像を見る限りはどうみても女性ではない。しわしわの不気味なスケベじじいというしかない。 「黄泉醜女っていっても女とは限んないさ。黄

はぐれ魔神秘湯編 ~目玉くんは見た~②

②目玉くんin脱衣かご3.「ちょ、ちょっとタンマっ!勝負はあとっ!」  青い髪の青年はよろい戸のところから軽々とジャンプすると、境内の置き石を足場にしてたったの二、三歩で彼らの目の前に飛び降りる。驚くほどの身の軽さである。変ちくりんな服装でなければ絶対に軽業師だと思うところだった。しかし問題はそのどうしようもない妙な服装である。思わず仮装大会かなにかと思うほど珍しくも面白い服装なのである。  とにかくこの青年は筋肉質の体に長くて派手な模様の腰布を巻きつけている上に、これま

はぐれ魔神秘湯編 ~目玉くんは見た~①

①ロスマルク先生、腰痛になる1.「ロスマルク先生がぎっくり腰に」 「あらっ、ロスマルク先生、どうしたのよ」  教授室で打ち合わせを終えたばかりのセルティ先生は、向かいの助教授ロスマルク先生の様子が変であることに気がついて驚いた。なにせさっきまではまったく元気そうに歩いていたのに、今は腰を抑えてじっとしているのである。どうやら呼吸をするのも辛そうである。 「い、いやその…ちと腰が…ですね…」 「やだっ先生!まさかぎっくり腰じゃないの?」  セルティ先生は半分あきれたよう