マガジンのカバー画像

炎の魔神みぎてくんのほん

118
卓上遊技再演演義シリーズでも活躍するみぎてくん、陽気で元気、食いしん坊でドジな炎の魔神族、みぎて大魔神ことフレイムべラリオスが人間界に留学!相棒コージや講座の仲間と繰り広げるほの…
運営しているクリエイター

2022年1月の記事一覧

炎の魔神くんシュプール②

雪女vs炎の魔神4.「やべぇっ!あの雪女っ!」  その少女は印象的なほど美しく長い髪をしていた。まるで純粋な水晶がそのまま銀糸となったような、それは美しい髪である。背中まで伸びる長いその髪は左右に分けられ、頬にあたる部分だけは短く切りそろえているのが、独特のエキゾチックな雰囲気をかもしだしていた。透き通るような肌は雪明かりを受けているせいかどこと無く青白くすらある。瞳はコージのような褐色でもディレルのようなグリーンでもなく、まるで北の海のような明るい青灰色だった。  しかし

炎の魔神くんシュプール①

炎の魔神、ゲレンデへ1.「俺さま運動は大の得意だぜっ!」  「アナトリア・ホワイトバレー」というのは、コージ達の住む街バビロンから飛行呪文でちょうど半日のところにある大きなスキー場である。初心者コースから上級者コースまでがそれぞれ雄大なアナトリア連山が楽しめる上に、豊富な湯量を誇る温泉までついていると言う事で、シーズンになるとバビロンやらアンティオキア、はてははるばるバギリアスポリスやイックスシティーからもスキーヤーが訪れる。大型の空飛ぶじゅうたん(といっても箱型でバスみた

炎の魔神みぎてくんのほんシリーズ 既刊紹介

陽気で元気な魔神族の留学生「みぎてくん」ことフレイムべラリオスと、相棒のコージ、そして個性豊かな仲間たちが織り成す学園ドタバタファンタジー小説のシリーズです。ここnoteで過去作品を順次公開してゆきます。なお、さきもりのおさ(ジーぽん)以外の作者の作品については公開未定です。 挿絵はさきもりのおさ(武器鍛冶帽子)、竜門寺ユカラさん、烏丸毛虫さんからいただいております。 短編 魔神と油揚げとお嬢様(1999年8月) 卓上遊技再演演義シリーズの短編として書かれました。みぎてく

南の島の魔神②

4.「だめだよコージ、無策で行っちゃいけない」  ドクター・マルドゥクは水の精霊を専門とする魔道士で、バビロン大学の精霊学教室で長いあいだ活躍した大学者である。セルティ先生を始め現在第一線で活躍している魔法使いを数多く育てたことでも知られていた。  水の精霊を得意としていたことでマルドゥクはいくつもの水の同盟精霊をもっていたが、その中でももっとも強大な精霊は深海に住むダイオウイカの精霊だった。大きさ数十メートルにも及ぶ巨大なその姿とパワーは精霊というより既に半神といってもい

南の島の魔神①

1.「それ、食べれるのか?海水浴」  バビロンという街は夏になると暑い乾いた南風が街を吹きぬける。バビロンの南に有る狭い海を超えてメンフォロスの砂漠から季節風が吹いてくるからである。当然の事ながら昼間の気温はぐんぐん上がり35度にもなることもある。  だからこんな季節になると日中、特に正午から3時ごろまでは自動的に昼休みになる。なにせ外に出れば気温は40度近い。とても外出して営業とかそういうことが出来る環境ではない。ということで、もっぱら市民活動が行われるのは朝と、そして夕

若き魔神のための教科書③

第三章 不死鳥の血七.「それ信じていいわ、コウジくん」  コウジは自宅に帰って一人で布団の上にひっくり返った。今朝はあんなに狭苦しかった部屋が、なぜだか今は妙に広くさびしく見える。無理もない…ここ2ヶ月ばかりずっとあいつがいっしょにいたからである。飯も、寝る時も、勉強もいっしょ…乱暴で、単純で、どじで、陽気な炎の魔神。居たら居たで暑苦しいし、騒がしいし、大飯ぐらいだし、疲れてしまうのだが…  こんな宴会一つで、ちょっと口論したくらいでこんなにいらいらしてしまうのである。

若き魔神のための教科書②

第二章 炎の魔神、学校へ行く四.「決めようぜ!こーじ!がっこに行けるんだぜ!」 「よぉ、こ~じ、朝だぜ~っ!腹減ったぁ!」 「えっ…あ…まだ六時だよん…」  冬の日の出はバビロンでも遅い。六時半ごろにならないと太陽は顔を出さない。コウジが学校に行くのは大抵二時間目(大学だから良くある話である)であるから、九時半に起きれば朝飯を食べてゆうゆう間に合う。特に最近は丁度年度末ということで試験も多い。試験勉強をするとついつい夜更かししてしまうので、ますますぎりぎりまで寝ていること

若き魔神のための教科書①

第一章 窓からやってきた魔神一.「でかい…鷲か何かかな…」  コウジは浮かない顔をして天井を見つめていた。天井の壁というものは、見ているとだんだんいらいらしてくるものである。いや、人によっては天井の単調な模様のようなものを見ているだけで良く眠れるとか…そういう話もよく聞く(もしかするとそっちの方が普通かもしれない)なのだが、少なくとも今のコウジはそういう状態ではない。妙に何もやる気が出ない、しかしながらなんだか気分が滅入る…そして天井の模様を見つめているとそれが増幅するよう

魔神と油揚げとお嬢様

一.「油揚げを持ってきて。好きかしら … 」  そう言うわけで … この若い炎の魔神は「帝都」に姿をあらわしたのである。  いくら魔神にしては年齢が若く、性格もいいかげんだといっても、人間界の … それも「帝都」にいきなり姿をあらわせば大騒ぎになるということくらいは、彼だって理解していた。実際何度か人間界には来たこともあるし、うっかり原身をあらわして大騒ぎになったこともある。だから今回はいつもの「赤いオナガドリ」(?)の姿ではなく、ちゃんと人間そっくりに化ける呪文を覚えてき