言の葉レガート①
太宰治『走れメロス』×福島弘和 交響的詩曲『走れメロス』
(文責:金川めい)
皆さんこんばんは。そして初めまして。金川めいと申します。
この度は、文学作品と音楽の繋がりを題材に、連載をさせていただくことになりました。
初めての試みで至らない部分もあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
突然ですが、皆さんは、「この本を読んでいたらあの音楽が聴こえてきた」「この曲は、あの文学作品からインスピレーションを受けていたんだ!なるほど!」と、文学作品と音楽の繋がりを感じた経験はありますか?
文学作品中の表現が歌詞に引用されていたり、あるいは作品の表現を彷彿とさせる言葉選びにより歌詞が書かれていたり。作中の各シーンの雰囲気を真に迫って感じさせる曲が作られていたり。もしくは、文学作品の題材となっているものと曲の題材になっているものとの間に共通点があるために、図らずも「あの文学作品のイメージソング」として、脳裏でいつの間にか作品と曲が結びついてしまっていたり……と、こんな感じで、文学作品と音楽には深いかかわりがあると私は思っています。
私自身、音楽は、J-POP、ボカロ、吹奏楽、オーケストラを主に聴いていて、この4つのジャンルの中だけでも文学作品と結びつく音楽は沢山あるように感じてきました。そこで、
「この文学作品を読んでいて、私の頭に浮かんできたのはこの曲だな」
「この作品にインスピレーションを受けていそうな楽曲はこれだな」
「この作品にイメージソングを付けるとするならこの曲だ!」
という風に、私の感覚・視点によるものではありますが、文学作品と結びつく音楽を、皆さんにご紹介できたらなと思っています。
作品を読む際のBGMにするも良し。
作品と曲を比較して、作品あるいは曲の考察厨になるも良し。
曲をきっかけに作品を読んでみるも良し。(逆もしかりですね。)
文学と音楽を結びつけることで、皆さんの「本との出会い」「作品との出会い」を少しでもお助けすることができたなら、幸いに思います。
さて今月は、初回特別放送、ということで、6月にゆかりのある作家さんの作品と音楽を、二週連続で紹介させていただきます。
6月にゆかりのある作家さんと言えば。
――太宰治。
6月19日は「桜桃忌」と言って、入水自殺をした太宰治の遺体が見つかった日であり、太宰治の誕生日でもあるそうです。太宰治の死を悼む桜桃忌は、自身の死の直前の作品『桜桃』からその名がつけられました。
さて今回は、そんな太宰治の作品とそれに結びつく音楽を紹介しようと思うのですが、皆さんは、「太宰治」と聞いて、どんな作品を思い浮かべるでしょうか。太宰治の手による作品のうち、印象深いものはどの作品でしょうか。
『人間失格』『斜陽』『桜桃』……など、いろいろあることでしょう。
私としても、上の三作品は是非とも読むのに挑戦してみたい作品です。(特に『人間失格』は、高校時代、精神状態が安定しているときに読むことを勧められたので、機会を伺っている最中です……)
しかし今回は、太宰治の作品を読んだことがある人も、そうでない人も興味を持っていただけるよう、長編作品からではなく、短編作品の中から紹介させていただこうと思います。
第1回、文学×音楽ラジオ、紹介作品は――
太宰治『走れメロス』 × 福島弘和 交響的詩曲「走れメロス」
『走れメロス』、とても懐かしい作品ですね。中学生の時の国語の教科書に載っていて、「メロスは激怒した。」に始まる冒頭の数行はそらんじることもできてしまうほどに有名です。読み進めれば読み進めるほど、メロスの心の動きや言葉にハッとさせられるものがあります。私自身「友との関係」を考えさせられ、何度も読んだ作品です。
太宰治「走れメロス」https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1567_14913.html
そんな『走れメロス』と結びつく音楽は、福島弘和作曲の交響的詩曲「走れメロス」。題名からそのままですね。この曲は吹奏楽による演奏のために作曲されており、中学校、高等学校、自衛隊……と様々な吹奏楽部あるいは吹奏楽団が実際に演奏しているようでした。
福島弘和 交響的詩曲「走れメロス」(航空自衛隊西部航空音楽隊 - トピック 交響的詩曲「走れメロス」 2021/10/14 最終閲覧日:2024年6月22日)
曲の雰囲気を私なりにまとめてみました。
――勇ましい冒頭。古代ギリシャの雄大な雰囲気と、メロスの芯が通った人柄が思い起こされる。すると、鎖のような音が聞こえはじめ、王との不穏な場面が想起された。
静かな雰囲気にうつれば、これは友との再会か、妹への慈愛か。
一転して激しいメロディーに。ついに走り出したのだろうか。冒頭に登場したフレーズが繰り返され、メロスが再び立ち上がった場面を思い出し胸が熱くなる。そうして、もとの勇ましさに力強さも加わって、昂った気持ちのまま曲は終わりをむかえる。
これはあくまで私が感じたことなので、是非とも皆さんには実際に聴いていただきたいです。
『走れメロス』を読んだことがある人は、曲の移り変わる雰囲気の中で「この部分はあの場面だろうな」「メロスの心中もこんな感じだったのかな」と、たくさん想像・妄想できるかと思います。音だけで作品の場面や雰囲気を想起させられるのですから、やはり音楽のちからってすごいなあと感じます。
『走れメロス』を読んだことのない人は、まず、一つの曲として楽しんでみてほしいです。雰囲気がはっきりと変化していくので、聴いていて飽きませんよ。一通り音楽を楽しんで、「このメロディー素敵だな」「この部分は少しドキドキする、緊張感がある」などなど感想をもってから、実際に『走れメロス』を読んでみてください。きっと、作品により感情移入できるでしょうし、曲の聴こえ方も変わると思います。
文学と音楽。
その結びつきによって、作品はより解像度高く、曲はより想像を掻き立てられる。印象は私たちの中で強められ、思い出や記憶として残っていく。そして、文学にも、音楽にも、興味が出てくる。もっと好きになっていく。そんな体験をしていただく助けになれたのなら、文学も音楽も好きな私として、幸いに思います。
今月は、初回特別放送、ということで、6月にゆかりのある作家さんの作品と音楽を、二週連続で紹介いたします。よって次回も、太宰治の短編と音楽とを結び、皆さんにお届けできればと思います。初回放送、ということもあって、かなり時間を押してしまいました。
今夜は、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
明日からの一週間、一緒に頑張ってまいりましょう!
では、また次回に。
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