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徒然文学日記―作家たちのエピソード―

①たった一度きりの、それでも大切な春のお話

―第1話 小林多喜二と志賀直哉―
 ※この漫画は実在する作家たちとそのエピソードを元にしたものです。作家さんの顔写真やエピソードを踏まえて描きました。
 ※何かお気づきの点がございましたら、お手数をおかけして大変恐縮ですが、literature.byyour.side@gmail.comにまでご連絡ください。
  
 『志賀直哉氏の文学縦横談』で貴司山治に「小林があなたに傾倒してゐた程度といふものは實に深刻なものがあるやうに思ふのです。」と言われる程に、志賀直哉より強い影響を受けた小林多喜二。二人はたった一度だけ、直接会ったことがあります。
 今日は、二人の対面した際のエピソードが綴られる「志賀直哉氏の文学縦横談」の一部を漫画で紹介します。
プロット:深川文 漫画:無題

※この話は『志賀直哉全集 第十四巻』「志賀直哉氏の文学縦横談」を元にして書いた漫画です。
何かお気づきの点がございましたら、恐れ入りますが、meil:literature.byyour.side@gmail.comにまでご連絡をお願いいたします。

  実はこのお話、春にあった出来事ではないと阿川弘之が指摘しています。
 「文学縦横談」で、あやめ池に桜が咲いていたと直哉が語った際に、多喜
  二の奈良行きを昭和7年春にするのが研究者の定説であったが、誤り
  だ。実際は、昭和6年11月の1日、或は2日のことであった。多喜二の礼
  状や網野菊に当てた手紙が、二人の会った時期を立証する資料である。
 阿川『志賀直哉 上』409
 個人的には、好感をおぼえた若い文学青年であった多喜二の若さに、春の気配を感じていたのではないかなと考えています。文通を通して文学への熱い想いを共有することの出来た二人にとって、実際に会えた体験は、一度きりとはいえども、深く胸に残るもので、春の優しくも強いきらめきを持っていたのかもしれないなと感じています。

<参考文献>
・「志賀直哉氏の文学縦横談」『志賀直哉全集 第14巻』(岩波書店 昭和49年)32-35
・阿川弘之『志賀直哉 上』(岩波書店 1994)409

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