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ズッキーニとドードー鳥


キュウリ、ナス、トマトなどの夏野菜の中で最初に採れ始めるのがズッキーニです。
冬野菜が終わって夏野菜が採れ始めるまでの期間を端境期(はざかいき)と言い、この期間に採れる野菜の種類はとても少ないのですが、ズッキーニが採れ始めると、その後はいろいろな夏野菜が育ってくるのでホッとします。
南北に長い日本列島をリレー栽培しているので、スーパーには常に野菜があふれていますが、ひとつの地域における野菜の旬はとても短かいのです。


雄しべの花粉を雌しべに付けてあげる人工交配中です

静岡では4月から7月がズッキーニの栽培期間です。しかし、この時期の静岡にはズッキーニの雄花の花粉を雌花に運んでくれる虫がいないため、実をつけさせるためには、人間が雄花の花粉を雌花につける人工授粉をすることが必要です。
もう少し暖かくなってハナアブ、ミツバチ、蝶、アリなどがたくさん訪れてくれ交配してくれるとわざわざ人工授粉をする必要はなくなるのですが、最初の頃は虫が少ないのと、どうもズッキーニには食指がわかない(興味を持ってくれない)ようで、人口受粉をしないと実がつきません。
ズッキーニの花は翌日にはしぼんでいる一日花で、10時頃には受粉能力が低下してしまうので、しばらくの間は人工授粉が朝の日課となります。
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ドードー鳥

 ズッキーニの人口受粉をしているときに思うのが、「ドードーとカルバリア・メジャー」の話です。
 ドードーは不思議な国のアリスに出てくる、インド洋に浮かぶモーリシャス諸島に住んでいた、飛ぶことができない巨大なハトです。天敵を知らないこの鳥は大航海時代に人間に捕まえられて、船の中での食料となってしまいました。また、人が島に持ち込んだ猫や犬に食べられたり、人が住むために森が切り開かれたことで生息場所をなくしたりして、300年前に絶滅しました。

ドードー鳥がいないと発芽できないカルバリア・メジャー

 このドードーが食べていたのが、カルバリア・メジャーという木の果実です。果実の中にある種は、特別な構造をしていて、ドードーの胃の中で傷がついて糞と一緒に排泄されて、始めて発芽可能になりました。過酷な自然条件の中で、確実に発芽するための独特の進化をしたのでしょうね。
ドードーと共存していたカルバリア・メジャーは、ドードーが絶滅した後に新たに芽を出すことができず、一番若い木が樹齢300年になってしまったそうです。 種に傷をつけたり、薬品処理をしたり、ガチョウなどのほかの鳥に食べさせたりもしましたが、今となっては発芽をしてくれないそうです。
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ズッキーニが日本の食卓に上るようになって、まだ30年くらいです。人工授粉という技術は、野菜つくりの面白さなのですが、「原産地にはいるであろう受粉をしてくれる虫と離れて、異国の日本で人間によって受粉されて実を付けることになるとは、ズッキーニは思ってもみなかっただろうな。」人工授粉をしながら、そんなことを思うことがあります。

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