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コレクションの話 飛行機の切手の謎

好みのデザインを見つけるとつい欲しくなる。切手。

切手蒐集が趣味と言えるほど詳しくはないけど。

フレーム※に入れて小さなアートとして飾って楽しんでいる。


※切手を飾るフレームの話はこちら


使用済み切手シート

これは昨年入手した飛行機の切手シート。
発行国UMM-AL-QIWAIN…ウムアルカイワインはアラブ首長国連邦の構成国のひとつ。

ぱっと見て、SE5aだ!とテンションが上がった。
コントラストつよめの色調がかっこいい。



左上の4つ

クローズアップしてみる。
プロペラを図案化したカラフルな枠がレトロでかわいい。

なにやら細かい文字が見えるけれども、機体の名前は書かれていない模様。

下の2段は専門外(?)、ラウンデルや迷彩は軍用機だろうなーとしかわからない。
上の2段は特定できそうかなと、手元の本で確かめつつ名前を書き入れてみた。

……合ってる??


右上の4つ

SE5a、ライトフライヤー、ドルフィンはすぐわかった。

上段右端の単葉機が、分かりそうで分からない。
切手に描かれるぐらいだからそれなりに有名な機体だと思うけど…?

WW1以前は機体をペイントしないし、大戦中は国籍のマークを描いた。文字やカラーリングからは、WW1休戦以降(1919~)に見える。
パラソル翼、開放式操縦席、引込み式でない着陸装置、G-EBRD(?)という文字……。

しばらく本とネットで調べてみたけど、特定できなかった。
実在しない機体を適当に描いたわけではないはず。自分が探せないだけだろう、と思いつつも、デザイナーが写真か何かを参考にしたときに見間違えて描いたのでは…?という疑念も沸く。

さらに、SE5aに関してちょっと気になるところがあって本で確認したら、マーキングとナンバーの組み合わせがちょっと怪しいような(印刷が不鮮明なので間違ってるとも言い切れない)。銃架も少し違うような気が。



1972年発行、消印は73年

自分で特定するのは諦めた、わけじゃないけど。
古い切手だし、誰か既にこの謎の飛行機を特定してる人がいるんじゃないか、と思い探してみた。

すると、想定してたのと違う情報が目に留まった。

土侯国切手(どこうこくきって)というのがあるらしい。
1963年~72年、アラブ首長国連邦の国々において郵便の為ではなく切手収集家向けに濫発されたもので、発行国とは無関係の絵柄が多数作られた。
当時は世界中のコレクターから顰蹙を買ったとのこと…。

国と時代が一致する。ということは、これもそのひとつ??


切手帳の中に、ほかにもそれらしきものがあった
右上はAJMANというこれまたアラブ首長国連邦の国のひとつ

飛行機やペンギンの名前が書いてなかったり、印刷の不鮮明さも、そういう事情と関係あるんだろうか……。
デザインにコストをかけてない?


「怪しさ」が逆に味わい深かったり

コレクター向けの切手が発行されるのは普通の事だし、それが発行国と関連のある絵柄でなければいけないというルールも多分ない。

絵が正確でなくても珍しいデザインであることにかわりはないし。

自分が好きな絵柄であればコレクションとしての価値にはこだわらない。


土侯国切手への評価は近年変わりつつあるとか。

大量の切手が濫発され非難を浴びた事実も今となっては歴史のひとコマにすぎず、その時代を知らない世代にとってはむしろ興味深くもあり。
ちょっと「怪しい」デザインも今の感覚で見ればレトロでおもしろい、とも言える。


結局、謎の飛行機の正体は謎のままになってしまったけど。

今まではただ飾って眺めるだけだった切手。
切手に限らず、古いものには来歴がある。
気になる事を掘り下げてみるのもまた楽しみのひとつになった。

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