マガジンのカバー画像

ドゥームズデイクロック実況感想

12
名作ウォッチメンのその後を描く一大叙事詩。 これは神話であり、神話ではない。 希望と絶望を共に扱う、明日への物語である。
運営しているクリエイター

記事一覧

ドゥームズデイクロック実況感想最終回⑫『DISCOURAGED OF MAN~人間への失望~』

ドゥームズデイクロック実況感想最終回⑫『DISCOURAGED OF MAN~人間への失望~』

※この記事にはネタバレが含まれます!!※

これまで希望を捨てなかった読者へ不安を与えるつもり満々の、まさかのタイトルである。しかしこの言葉がもっとも相応しい場面がある。かつてのウォッチメンのラストにて、Dr. マンハッタンが人類への興味を無くし異なる世界────超宇宙へと旅立った際の心境だ。

だが何も終わっていない。例え流れる血が希望のシンボルを覆うとしたとしても、我々はまだ何も失っていないの

もっとみる
ドゥームズデイクロック実況感想⑪『A LIFELONG MISTAKE~人生を懸けた失敗~』

ドゥームズデイクロック実況感想⑪『A LIFELONG MISTAKE~人生を懸けた失敗~』

※この記事にはネタバレが含まれます!※

血塗られた脚本スーパーマンが目を覚ました。それは何かに驚いたような、あまり心地よい目覚めであったとは言えないだろう。
そしてその次のページには、死亡したカーバー・コルマンへと宛てられた手紙が残っていた。彼の使用人が、その名誉を守るために後に焼いたとされる手紙。それと同様に並べられていたのは、彼の遺作となった映画『遅延』の脚本だ。

その内容は実に意味深であ

もっとみる
ドゥームズデイクロック実況感想⑩『ACTION~行為~』

ドゥームズデイクロック実況感想⑩『ACTION~行為~』

※この記事にはネタバレが含まれます!※

不都合な真実衝撃の展開で幕を閉じた前回。
今回のコラムは短い報告書だった。それはシュタイン教授────ファイヤーストームの一人である人間による自らをも含めたメタヒューマン化実験の舞台を自白するそれだった。
果たしてこの対策局は、この時間軸において何時から存在したというのだろうか。歴史の歯車はいつから抱えきれない秘密をしまい込むようになったのだろうか。

もっとみる
ドゥームズデイクロック実況感想⑨『CRISIS~危機~』

ドゥームズデイクロック実況感想⑨『CRISIS~危機~』

※この記事にはネタバレが含まれます!※

しかして失望とは異なるモノ……衝撃的な事件の後、スーパーマンは行方不明となったようだ。

さらに言うのであれば、タブロイド紙はセンセーショナルに事件を描き、事態をさらに悪化させるがごとく煽っている。デイリープラネットのみが唯一誠実に事件を観察し、なぜスーパーマンがロシア軍を攻撃したかの真実を追求したが、それは民衆……もとい大衆が求める情報ではないのだ。

もっとみる
ドゥームズデイクロック実況感想⑧『SAVE HUMANITY~人類を救う~』

ドゥームズデイクロック実況感想⑧『SAVE HUMANITY~人類を救う~』

※この記事にはネタバレが含まれます!※

エイドリアン・ヴェイトという男についてさて、週に一回となってしまったが今日も読んでいきたい。
今回もまずはコラムもとい外伝とも言える話が掲載されている。

突然の実写風に驚いたが、これに驚いた自分に驚いたとも言える。さながら、もし、万が一にも現実世界にエイドリアン・ヴェイトがいたならば。
恐らくは彼は誰よりも、良くも悪くも注目を浴びただろう。それは彼が自警

もっとみる
ドゥームズデイクロック実況感想⑦『BLIND SPOT~盲点~』

ドゥームズデイクロック実況感想⑦『BLIND SPOT~盲点~』

※この記事にはネタバレが含まれます!※

まえがき前回ドゥムクロを読んでいて、ふと感じたことがある。
単なる違和感なのかもしれないが、唖のヴィランであるマイムの顔が、どこかスーパーマンに似ている気がするのだ。特に前回はそれを強く感じた……。
これは気のせいなのか、はたまた意図的に仕掛けられた何かなのか……

メタヒューマン問題対策局ファイル
『工作員デイビッド・ドレイク:
別名タイフーン』いやタイ

もっとみる
ドゥームズデイクロック実況感想⑥『TRULY LAUGH~本当に笑う~』

ドゥームズデイクロック実況感想⑥『TRULY LAUGH~本当に笑う~』

わたしは間に合うんだろうか。仕事が始まるまでのこの短い時間に。
────BLEACH風ポエム────

※この記事にはネタバレが含まれます!※

メタヒューマンの脅威例のごとくコラムから始まる構成となっているドゥームズデイクロック。そこに掲載されているのは、わたしが知らない無数の超人達だ。ここは敢えて作中にならい、メタヒューマンと呼ぼうか。

この世界におけるメタヒューマンの比率はアメリカに偏って

もっとみる
ドゥームズデイクロック実況感想⑤『THERE IS NO GOD~神などいない~』

ドゥームズデイクロック実況感想⑤『THERE IS NO GOD~神などいない~』

※この記事にはネタバレが含まれます!※

バイロン・ルイスの手紙今回、物語の間に挟まれたのはバイロン・ルイス────モスマン老人の残した手紙だった。彼は本当に正気を失ったのか? 以前の実況感想④でも告げたが、彼は”見たいものを見る”為にあそこへ、アサイラムへと入ったように感じる。彼にとって、世間もとい社会の価値とは殆ど無かったのではないだろうか。だからこそ一見して彼の状態は病んでしまったように見え

もっとみる
ドゥームズデイクロック実況感想④『WALK ON WATER~水上を歩く~』

ドゥームズデイクロック実況感想④『WALK ON WATER~水上を歩く~』

※この記事にはネタバレが含まれます!※

ハリウッドの光と影いつものごとく、本編はコラムから始まる。
ウォッチメンにおける海賊のコミックスがごとく、背景で流れていた1954年の白黒映画『遅延』。
これを演じていたカーバー・コルマンは役者でありながら、様々な面でウォッチメンのキャラクターを想起させる仕掛けが施されている。

まずは、彼が元警官であり、同時に指名手配であること。これはさながらナイトオウ

もっとみる
ドゥームズデイクロック実況感想③『NOT VICTORY NOR DEFEAT~勝利も敗北も知らず~』

ドゥームズデイクロック実況感想③『NOT VICTORY NOR DEFEAT~勝利も敗北も知らず~』

※この記事にはネタバレが含まれます!※

コラム『超人理論』まず始まるのはコラムだ。こうして章の間にコラムや本の抜粋が挟まるのは実にウォッチメンらしい。それがネット記事となっているのは、まさしく時代の変化とでも呼べるものだろう。
そこに書かれた内容は”超人理論”なるものだった。この理論が出て以降『なぜアメリカに異常なほど超人が集中しているのか』という議論が世間を騒がせているのだという。日本でもよく

もっとみる
ドゥームズデイクロック実況感想②『PLACES WE HAVE NEVER KNOWN~知りもしない土地~』

ドゥームズデイクロック実況感想②『PLACES WE HAVE NEVER KNOWN~知りもしない土地~』

※この記事にはネタバレが含まれます※

刑務所から連れてこられた2人の犯罪者。女はマイムで、男はマリオネットというらしい。
彼らは過去と現在の話をする。或いはこれらの状況はどこか似かよっているのかもしれないが……白黒で映し出されるのは、かつて彼らが犯した最後の犯罪だ。

ヴェイトはロールシャッハ……便宜上ロールシャッハ二世と呼ぼう。彼を説得し続ける。さながら彼のことを洗脳し続けているかのようだ。

もっとみる
ドゥームズデイクロック実況感想①『THAT ANNIHILATED PLACE~滅びた場所~』

ドゥームズデイクロック実況感想①『THAT ANNIHILATED PLACE~滅びた場所~』

※この記事にはネタバレが含まれます※

世界は終末を迎える。大衆は衆愚と化し、無意味にありもしない希望を叫び続ける。

ドゥームズデイクロックの出だしは、あまりにも悲惨な結末を迎えたかつてのウォッチメンの世界だ。街は燃え、人は飢え、止まった筈の戦争はその勢いを増し、本来それらを食い止めるべき立場にいる人間は享楽に耽る。

これを終末の光景と呼ばずしてなんと呼ぼう。時代はウォッチメンの時代よりやや経

もっとみる