空に名前を
写真家ひとりひとりに、それぞれの思想があるように、
自分にも、ポリシーというか、撮り方のスタイルがある。
まず、僕の場合は、撮影の舞台、ロケ地をどこにするのかにとても重きを置く。
基本的に、一度撮影で使った場所は、二度と使わない。
最初で最期の場所だからこそ、場所に対する思いは人一倍強いように思う。
だからか、その思いが届くのか、
その場所で、毎回、最高と思われる天候に恵まれる。
最高の天候というのは、必ずしも晴れではない。
曇りもあるし、小雨も、強風も含まれる。
さらに、僕の撮影では、ほとんどポージングの指示をしない。
基本、モデルさん任せ。
普段のレッスンで、ポージングを習っているモデルさんたちにも、
ポージングはしなくていいから、と言ってしまうほど笑
ただ、撮影しながら、どうやったら最もその人らしさが出るか、
会話を通して「場の空気を作る」ことには、こだわる。
もしかしたら、昔、学んだNLPの傾聴スキルが役に立っているのかもしれない。
これまで、女優、モデル、タレント、経営者など色々な方を撮ってきたが
そのスタイルはいつだってあまり変わらない。
その日の撮影は、千葉県の銚子だった。
関東付近では最も東に位置する場所だ。
撮影が夕方に差し掛かった時、それまでの晴天が嘘だったかのように
湿り気を帯びた、黒く、重たい雲が西から押し寄せていた。
遠く、うっすらと雷の音が聞こえる。
そういえば、日本語には夕轟(ゆうとどろき)という素敵な言葉があったな、
なんて思いながら、シャッターを切っていく。
この日の空も、これまでの人生で見たことがない景色だった。
雲がいくつもの多層構造をつくり、流れていく。
もし、この国の文化に、その日の空に名前をつける風習があったのなら、
僕は一体どんな名前をつけただろうか。
+model hina
+photo Shusaku Kumabe
=====================================
2020年4月、今さらですが、Instaはじめました。
=====================================
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?