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図解入門ビジネス 最新電力システムの基本と仕組みがよ~くわかる本[第3版](1)

最近耳にする「電力不足」や「電気代高騰」。
カーボンニュートラル宣言以降、多くの注目を集め、またライフラインとして重要な位置づけがされている電力について解説した『図解入門ビジネス 最新電力システムの基本と仕組みがよ~くわかる本[第3版]』(木舟辰平 著)から抜粋記事を5回連載でお送りします。
今回は第1回目「はじめに」です。

はじめに (改訂にあたって)

 本書は、現在と次世代の電力システムの全体像と各構成要素について整理・ 解説した本です。第 2 版の発刊は 2020年7月ですが、その後 2 年近くの間に電力システムを取り巻く環境は大きく変わりました。

 最大の変化は、電気の脱炭素化が現実的な課題として眼前に現れたことです。20年10月の政府による2050年カーボンニュートラル宣言、21年4月の2030年温室効果ガス削減目標の上方修正はそれだけ強い衝撃がありました。 また、20年度冬季に発生した需給逼迫と市場価格高騰は、供給安定性の観点から従来のシステム改革のあり方に修正を迫りました。

 電気の脱炭素化と、安定供給のために必要な電源等の確保を、自由化を所与の 条件としていかに進めるか——。3E(供給安定性、効率性、環境性)のより高い次元での両立を目指して、電力システム改革は新たな段階に入ったと言えます。 そのような現状認識のもと、今回の改訂にあたっては最新の政策動向を可能な限り盛り込みました。

 そもそも電力システムとは何でしょうか。一義的には、電気が送り届けられる工学的な仕組みとして理解できます。つまり、電気を作る発電所と電気を運ぶ送 配電網の総体が電力システムですが、こうした設備だけで電気の安定供給が保たれるわけではありません。さまざまな事業者や関連機関があらかじめ定められたルールに基づいて運営に携わることで、システムは日々機能しています。こうした制度面の要素も含めて、電力システムは成り立っています。

 その電力システムが今まさに大改革の渦中にあるわけです。改革の方向性を一言で言えば、複雑化の一途を辿っています。例えば、発電設備の面では、数十万 kW規模の火力発電や原子力発電から、1万kWに満たない規模の太陽光発電など再生可能エネルギーに軸足が移ります。蓄電池や空調などの消費機器もシステムの構成要素として組み込まれていきます。そのことにより、同じ量の電気でも安定的に供給するための手間が増すことは避けられません。制度面では、全国にわずか10社の大手電力が独占的に事業を営んでいた時代が全面自由化によって終わり、電力ビジネスに携わる事業者の数がけた違いに増えていることが複雑化の要因になっています。

 電力システムの仕組みがどんどん分かりにくくなる一方、社会における電力システムの重要性はますます高まっています。例えば、ポスト・コロナの時代において確実に増えていくオンライン上でのコミュニケーションを根底で支えるのは、安定して供給される電気エネルギーです。日本に暮らす誰もが、電力システムと無関係ではいられません。より良いシステムを作り上げるためにも、立場が異なる多くの人がシステム改革の動向に関心を持つことが求められています。

 本書はこうした問題意識に基づき、現在と次世代の電力システムについて可能な限り噛み砕いて書くことを心がけました。11章構成で、第1章は従来のシステムの概略とシステムが改革を迫られている種々の要因について解説しています。最後の第11章で、カーボンニュートラル実現を支えるであろう次世代の電力システムの絵姿を示しています。この2つの章を読めば、システム改革の全体 像と大きな方向性は掴めるはずです。

 間の9つの章では、システムの各構成要素について網羅的に紹介しています。 第2版からの大きな変更点としては、「送配電」「分散型システム」の2章を「送電」「配電」「蓄電」という3章に再編しました。電力システムの中で電源やネットワークの分散化が着実に進みつつあることに対応したものです。

 本書が多くの人にとって難解に映るであろう電力システムを理解する一助になれば、それに勝る喜びはありません。

2022年3月
木舟 辰平

図解入門ビジネス 最新電力システムの基本と仕組みがよ~くわかる本[第3版]

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