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「常」である今日目の前とともに生きるために。〜喫茶去(きっさこ) 小林未佳さん〜
日本には「道」のつく作法ごとがたくさんあります。
書道・剣道・柔道・華道・合気道・神道、そして茶道。
もうその道を体験されている方にとって、その敷居は決して高くないけれど
「体験してみたい」と思っている側にとっては、高く感じてしまう、その敷居。
やってみたいけど、厳しそう。
やってみたいけど、道具、持ってないし。買わなきゃいけないかな。
やってみたいけど。。。。。でもそこまですごく本気でもなくて。
でも、やってみたい。
ちょっと気になってる。
体験してみたい。
そんなふうに思っている方は少なくないのではないでしょうか。
今日は、そんな気持ちをお持ちの方が、気軽に「着物と茶道の世界」を体験できる小林未佳さんの「喫茶去」体験をご紹介します。
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未佳さんは杉並にお住まいの3児のお母さん。
学生時代の寮に茶道の先生がお稽古に来てくれていたことが、茶道との出会い。
そこから毎週茶道を習うようになり、茶道をするなら着付けもできるようになりたいと着付けも学び、以来かれこれ20年近く、お茶と着物の世界と付き合ってきた方。
とはいえ、ガチガチにその世界を突き詰めてきたか・・・というと
学生の時には、海外の生活にも興味を持ち、バイト代をためて海外に行ったり、留学も。
大学卒業後はなんとドイツに渡って、パティシエの修行をし、マイスターの次の「ゲゼレ」と言う、ドイツではパティシエとして栄誉ある資格をお持ちでもあります。
やりたくなったことは思い切ってトライ。
そうして、「自分のペースで自分のやりたいことをやってきた」方。
その中でも、茶道と着付けは、無理せず、未佳さんの人生の中で、ずっと長らくに渡って、コツコツ続けてきた、大切な趣味でもありライフワーク。
続けながら、資格を取得、ステージアップをされ続け、現在では茶道の講師と着付けの師範、両資格をお持ちです。
ご結婚後は、3人のお子さんに恵まれ、専業主婦として子育てに専念。その中でも、茶道のお稽古は欠かさなかったそう。赤ちゃんだったお子さんを連れて、そばで寝かせながら、茶道のお稽古をしたことも。
それくらい、未佳さんにとって、いつもの暮らしのそばにあったもの。
その魅力を伝えたいと
子育ても一段落してきた今始められたのが「喫茶去」です。
喫茶去とは「一服お茶でもどうぞ」というおもてなしの心です。
足を運んで下さった方が、ほっと一息つき、
「着物っていいなあ」
「茶道って奥が深いなあ」
ちょっとした気づきと新たな楽しみを持ち帰っていただければと思います
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どのメニューも、お着物を持っていなくても、未経験でも大丈夫。
着付けに関しては、希望の方には着物の貸し出しもしてくれてこのお値段。
「初めて」を体験してみたい気持ちを気軽に叶えてくれます。
今回私は、着物を纏い茶道を嗜むレッスンを阿佐ヶ谷にある区民センターの和室で体験させていただきました。
お着物の貸し出しもあるとのことですが、私は親族から受け継いだ着物があるので、そちらを持参。(とはいえ、帯締めを忘れると言う失態つきでした。苦笑)
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久々の着付け、まずは自分でチャレンジして、未佳さんにチェックしていただき。
着付けは習っていて、自分で着ることはできるものの、細かいところをみられると、、、、あれあれ?がある私の着付け。
帯のしめ方、襟合わせのコツなどを教えていただき、あぁそうだった、と着付けのいろはを思いだしたのでした。
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着付けが未経験の方は未佳さんがお着物を用意してくれて着付けからしてくれます。
着付けを習ったものの、実はだいぶ長いこと着物を着てない・・・そんな方にもおすすめ。いい復習の機会になること間違いなし。
着付けができたら、いよいよ、茶道体験です。
まずは未佳さんがお手本を見せてくださり、その後にやってみるスタイル。
1日1組限定の、マンツーマンだからこそ、わからないことは遠慮なくその都度すぐ未佳さんに聞ける、とても嬉しい体験時間。
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和室の入り方から、スタート。
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お抹茶をいただくことはあっても「茶道」として体験することは初めてだった私は、所作の一つ一つが、静かで、丁寧で、そして、じっくりと時間をかけることに少しの驚きがあって。
床の間に飾られた、掛け軸にも礼をして、それをじっとみる。
同じように、お花や茶器に対してもそれをするのがどうやら茶道のようで。
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そこには、「季節と心遣いを感じ、自分の心を感じる」時間があります。
今日この日のために準備をしてくださったことへの感謝と、そこにある心遣いを感じ、知ろうとすること。
掛け軸、お花、茶器一つ一つに、季節を尊ぶ気持ちと、ともに茶道を味わう人のために選んだ心があるとするなら、どんなお気持ちからだったのだろう
そんなことに思いを馳せながら、静かに、じっと見つめる。
未佳さんのお手本の後にそれをやってみて
いかに日常をなんとなくでやり過ごしていたかに、私は気づきました。
こんな風に「ちゃんと」見てたかなぁ
目の前のことを、流れのように、
これをやったら次はこれ
そんなふうに生きている時間の方が多いのかもしれないな、と。
一つ一つの言葉に込められた思いや
季節の花のその形や色の美しさを
見入るように感じようとすること
これまでの季節と、これからの季節
毎日の暮らしの中で
相手のために選ぶこと
そんな豊かな贅沢さを私は味わい大切にしていただろうかと。
静かに静かに流れるその時間の中で
そんなことを感じたはじまりのひととき。
お部屋への入り方、歩き方、そして座り方など茶道の簡単な御作法を教えていただき、いよいよ、お茶をいただく時間へ。
堅苦しくなく、同じ目線で、わかりやすく、「まずはこんな風にできれば大丈夫」を教えてくれる未佳さんだからこそ、気負うことなくいられることが、嬉しい。
未佳さんがお茶の準備をしてくださっている間、
整った静かな和室で
腰骨を立てて正座をして、
目の前で温まっている茶釜と後ろの屏風を静かに見つめて。
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静かに、今に立ち止まる
まさに、そんな感じ。
あれやらなきゃ、今日は何があったっけ
つい、そんなことを思ってばかりだけれど
ただただ、目の前のものをゆっくりと見つめて今にいる、
それだけで、心も体も「着地していく」感覚が確かに深くなっていく
そんな感覚の中で始まる、茶道の体験。
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まずは、この日のお茶菓子。
茶道では、季節を感じるお茶菓子を大切にしていて。
桜がそろそろ蕾を膨らませてくると言うこの日のお茶菓子は、菜の花を模した和菓子と、鹿子。
柔らかな黄色と黄緑色の黄身あんに包まれているそれをみるだけで
あぁもう春が来るなぁと
菜の花の黄色と青い空を思い出して、春のほのあたたかいそよかぜを心の中で感じてしまう。
この二つのお菓子に合わせて、この日いただいたお茶も、二つ。
濃茶と薄茶。
お茶にも種類があるなんて。
茶道=抹茶を飲むもの、と単純理解していた私の脳みそが、新たな世界にハッとして、一体どんなお茶なんだろう、このお茶菓子たちと、どんなマリアージュになるんだろうと、小さくワクワクし始めた先で、未佳さんがお茶を立ててくださいました。
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BGMもない茶道の時間。
そこにはひっそりとした「凛」が優しく響き渡るような雰囲気があって。
茶筌でお茶を立てる、小さく繊細なしゅしゅっと言う音だけが軽やかに踊るひととき。
まずは、濃茶。
ねっとりとした、濃くて艶やかな濃茶。
お砂糖も何も入っていない抹茶を立てたものだからこそ、これは苦いのでは。。。。??と思ったけれど
その苦味は、顔を顰めるようなものでは全くなくて、口に含むと、先にいただいたお茶菓子の甘さをすうと包み絡め取って、口の中を洗ってくれたような落ち着きをもたらしてくれました。
あぁ、なんとも、なんとも。よき調和。
そして、その後に
濃茶だけだと、やっぱり、少し重いというか・・・・軽めのお茶も飲みたくなりますよね^^と
薄茶を立ててくださいました。
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茶碗も、軽やかな春らしい色合いのものに変わって。
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また、一つ一つのお手前を、美しく始める未佳さん。
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今、思い出しても、
静かなる豊かさ、
質素でありながら、洗練、だったなぁと
無駄なものがなくて
目の前の、お茶とお茶菓子から
味覚も嗅覚も視覚も、触覚も聴覚も、五感全部がひとときを感じるために息を吹き返すような時間。
ねっとりとした濃茶とは違って、サラリサラリと流れ込んで喉元を洗ってくれる薄茶。
先にいただいた、お茶菓子と濃茶の余韻をならして、すぅと体に染み入っていく、そんな感じ。
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なんと言ったらいいのか
お茶をいただいて、こくりと飲み干し、静かにふぅ、と息を吐き、ごちそうさまでした、と小さく心の中でつぶやいて茶碗をそっと置くと、
今ここに着地する、そのクリアな感覚の透明度が上がって、ちょっと世界が明瞭になるような、不思議な感覚、でした。
私たちの毎日は、忙しいし、
忙しさからなかなか足を抜け出すことを選べなかったりします。
忙しさこそ充実の証、と思っていたり
やることがあることこそが世界に望まれている、と感じたり。
いいものをたくさん持っているように見える人はやっぱりいいなぁ、なんて思う時もあるけれど
和室の畳と、両手に収まる数の茶器
お茶を立てる人と、いただく人
このシンプルな世界の中で感じた豊かさとスッキリ感
終わった後の心が満ち満ちとする感じ
もっとゆっくりでいいじゃないか
心が動くというのは決して大きな刺激が必要というわけではなくて
静まることを知っている心だからこそ感じられることがあり
もしかしたら、私たちに必要なのは、
刺激を感じようとするアクションより
心を鎮めて今にいる時間を作ること
かも知れない。
そんなことを感じたひととき。
未佳さんは、この感覚を知っているから、ずっと茶道を続けてこられたそう。
日常、目の前に、耳を、目をすませば、感じられるものは十分にあって、それこそが豊かさだと。
「日常」なんですよね
穏やかな笑顔でそうおっしゃいました。
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未佳さんは、ご自身のペースをとても大事にされている方でもあります。
3人のお子さんを授かり、専業主婦として過ごしてきた今日までの時間。
お子さんの成長に合わせて、パートで働くこともしながら、少しずつ「私の時間配分」を育ててきた方です。
いろんな働き方があるし、起業もあるけれど
今しかない子どもとの時間を私は大事にしたいと思った
ご自分にとって何が「ファーストプライオリティー」なのかをわかっている。だから、それを選ぶ。
それでもずっと感じてきた「着物と茶道の素晴らしさを伝えたい」という思い。
それを子育ても少し一段落した今回、ご自分の「大切」を守りながら、形にしたはじめの一歩が、未佳さんが始められた喫茶去です。
体験レッスンの回数も、ご自分のライフスタイルに無理が生じないよう、ごく回数を限っての開催。(当面は週一回の開催)
でも、そこからでいい。私には、それがいいんです、と未佳さん。
ご自分の、機が熟す時を待てる方なんだなぁと
それはきっと、どんな時も、お茶の時間を大切にして
「今」を、その心を静かに、でも確かに感じてこられた未佳さんならではの選択の形な気がしてなりません。
だから、素敵だな、と。
自分にとって大切なものを、大切にすることを選んで
それを貫ける方。
いろんな生き方があるこの世界だからこそ
「子育て期は子どもとの時間を最優先にして生きる」を選んでいい。
大丈夫、その先で、開くものは、ちゃんと、ある。
お子さんとの時間を何より大切にしながらも、その生活の中でも続けてきた、茶道。
もう、茶道との付き合いも20年に及びます。
その中で少しずつ学びを深められてとった御免状。
それはきっと
未佳さんが、子育てとお茶の時間を大切にしてきた証
目の前を、大切にしてきた人だからこその、このお茶の時間。
急がなくて、頑張りすぎなくても大丈夫
今、今を大事にしましょうね
今ここに、あなたに必要なものも、大切なものも、ちゃんとありますから
それを、見逃さず、見つめましょうね
そんなメッセージを、茶道を通して、体感させてくれるようでした。
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お稽古に行く、ともちょっと違う
「習う」の手前の「体験する」茶道の世界。
その気軽さだからこその、肩肘張らずに受け入れられる世界が
未佳さんの喫茶去にはあります。
茶道が気になっている方も
お着付けをしてみたい方も
忙しい日常になんだか目が回っている方も。
「今」にいることを取り戻したい方も。
一度未佳さんの喫茶去を体験されてみては。
未佳さん、この度はありがとうございました。
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