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映画評 エクスペンダブルズ:ニューブラッド🇺🇸

(C)2022 Ex4 Productions, Inc.

シルベスター・スタローン、ジェイソン・ステイサムなどアクションスターが集結する『エクスペンダブルズ』シリーズの第4段。『ネイビーシールズ』のスコット・ウォーが監督を務める。

自らを「消耗品」と名乗り、数々の難関ミッションを乗り越えてきた傭兵軍団「エクスペンダブルズ」は、テロリストが所有する核兵器を奪還するミッションに挑む。失敗すれば第3次世界大戦が勃発しかねないという危険なものだったが、敵の策によってミッションは失敗に終わる。失われた仲間の仇を討ち、世界を平和へと導くためにエクスペンダブルズは再び立ち上がる。

シリーズ第4段ともなれば、どんな形であれ過去シリーズを超える要素が欲しいところ。しかし、本作はシリーズ過去最低かつ期待はずれの出来であると評価せざる得ない。

まず出演するキャスト陣が弱すぎる。本シリーズの最大の特徴である、時代の流れに取り残され、映画業界に消耗品扱いされた元スターたちによる活躍の場としてのメタフィクション。つまり、一時代を築き、富と名声が過去のものであるスターの出演がマストだ。

過去作には、ミッキー・ローク、メル・ギブソン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ブルース・ウィルスなど名高いスターが贅沢な使い方で出演していたが、本作には上記のようなスターは出演しない。新たにミーガン・フォックスや50セントといったキャリアが低迷した演者が加わったとはいえカードが弱すぎる。

また、本作はシルベスター・スタローンの登場時間が異様に少ない。シリーズの顔であり、時代に取り残された俳優として右に出る者はいない。彼がいなければこのシリーズの存在意義が揺らぐ。しかも完全退場する訳でもない中途半端な扱われ方をしているのもいただけない。


(C)2022 Ex4 Productions, Inc.

もう一つ、本シリーズの大きな特徴として「アクション映画はカッコいい」と訴えかける情熱にありふれていることだ。

かつてアクション映画はスターダムへと駆け上がる金字塔のような存在であったが、時代の風流によってB級映画や馬鹿映画と揶揄され始める。そんな中で、シルベスタ・スタローンはじめアクションで地位を確立してきた役者陣が立ち上がって、アクション映画の面白さを描いてきたのが本シリーズという訳だ。

しかし、本作に限っていえば、幾度となく多用されるCG。カタルシスにかけ、露悪さだけが際立つ殺人描写。ステイサムとイコ・ウワイス以外足取りが重い格闘描写など、「アクション映画カッコいい」と思わせる説得力は無い。

アクション描写が過去一酷いだけでなく、ギャグも滑っているのもいただけない。ミーガン・フォックスがアクションとフェミニズムを掛け合わせたメタギャグを語るのだが「どの口が語る」と突っ込みたくなる。デミ・ムーアやシャーリーズ・セロンでないと説得力は無い。

また下ネタを用いたギャグも不快だ。言葉だけならまだしも、実際行動で見せられると怒りを通り過ぎて呆れが勝ってしまう。

ストーリー、キャスト、アクション、ギャグ、何もかも過去最低の出来を更新したシリーズは類を見ないだろう。映画史における本作の価値は反面教師以外ない。


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