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販売開始2年で時価総額14億ドルのD2Cユニコーン。シリコンバレーで大流行しているNZ発の靴メーカー、All birdsとは

僕は昔から靴選びが好きで、特にスニーカーはブランドの最新作を海外から取り寄せたりすることが多い。TwitterアカウントのスニーカーウォーズはNIKE、Adidasを始めとした有名ブランドの最新情報を発信してくれていて、気になったものがあれば頻繁に購入している。今履いているアディダスのスニーカーが購入から1年以上経つので、新しいのが欲しいと思って探していたところ、何かの記事でAll birdsというブランドに遭遇した。気になって調べていると「元プロサッカー選手が創業」「環境に優しい」「2年でユニコーン」「シリコンバレーで爆売れ」といったキーワードが飛び交っており、詳しく調べてみたので情報をまとめておく。

All birds(オールバーズ)とは

All birdsは今日本でも流行りのD2Cブランドでスニーカーをメイン商品として扱っている。ニュージーランド出身のティム・ブラウンとジョーイ・ズウィリンガーによって2014年に設立された。創業者の1人ティム・ブラウンは元々プロサッカー選手で、2010年の南アフリカW杯ではキャプテンとしてニュージーランドチームを率いた経験を持つ。引退後はロンドンビジネススクールのMBAに通い、その後創業へと至っている。All birdsは「世界一快適な靴」というコンセプトを掲げ、2016年の発売から2年で100万足以上を販売し、売上は2億ドル以上に昇っているという。グーグルのラリー・ペイジ氏やVCのベン・ホロウィッツ氏などシリコンバレーの大物も続々と愛用しており、シリコンバレーを皮切りに世界展開を目指しているスタートアップ企業だ。

創業に至った背景

選手時代から創業者のティムは靴に対してある違和感を感じていた。それは、スポンサー企業から無償で提供されるシューズが余りにも派手すぎるということだった。もっとシンプルなシューズが作りたいという想いのもと、クラウドファンディングのキックスターターでアイデアを掲載したところ、数日で◯千万ドルの資金が集まり、このアイデアはいけるかもしれないと思ったのだそう。

ブランディング戦略

信じられないほどの好調なスタートをきり、顧客たちからは思いもしなかった高い評価を得ることができた

フォーブスのインタビューで創業者のジョーイ・ズウィリンガーはこのように語っている。これだけすんなりと顧客に受け入れられた理由は一貫したブランディングにある。世界一快適な靴を目指すにあたって、All birdsには2つの特徴がある。

1つはシンプルを極めたデザイン。これはティムの課題感をそのままプロダクトに反映させる形になっている。シューズには線や模様が一切なく、カラーも1色もしくは2色しか使われていない。なんとブランドのロゴマークさえ付いていない。ロゴマークは一般的に企業の広告目的で使われるため、顧客にとっては必要ない、というのがティムの主張だ。顧客が必要としないものは全て削り取る徹底ぶりだ。プラスではなく、いかにマイナスにできるかという視点は、全世界に受け入れられたアップル製品を彷彿とさせる。

2つ目の特徴は、環境に優しいという点だ。All birdsのWebサイトを開くと、ファーストビューでは大量の羊が走り回る動画が流れていることからも、全面的に環境に優しい点を打ち出していることが分かる。

最初に世に出された「Wool」というプロダクトは、ニュージーランドに生息するメリノ種の羊毛、メリノウールを使用して作られている。ニュージーランドは人間:羊の比率が1:6なため、従来の合成材料よりも60%も低いエネルギーで生産が可能になっているらしく、地の利を上手く使っている。他にも、靴紐はリサイクルされたペットボトルから抽出したポリエステルを使っていたり、靴の箱が90%がリサイクルされたダンボール箱で作られていたり、環境に優しいというブランディングが随所で一貫している。

ミレニアル世代の消費者の45%は、「購入する商品を決定する際に企業の環境保護に対する姿勢に影響を受ける」と回答しているデータもあり、世の中の感覚を上手く捉えていることも見逃せない。安価な合成品で作ることが通説とされていた靴業界に環境に優しく、履き心地の良い靴というブランディングで一石を投じている。

マーケティング戦略

彼らのマーケティング戦略は広告費ではなく、PRに資金を注ぎ込むというもの。調達した資金も一切広告費には使っていない。「オールバーズ」とGoogleで検索しても広告は出ないし、Webサイトを拝見した後でも、何度もリターゲティングされるなんてことがない(地域ターゲティングで日本を除外している可能性はあるが)。その代わり、PRに資金をつぎ込んだ。初期の段階からソーシャルメディアと口コミを活用し、先ほども書いたようにシリコンバレーのインフルエンサーを筆頭に、続々と広まっていった。PRにリソースを割いて一気に認知を取るという戦略はソフトバンクと似ている。(YahooBB!でブロードバンド事業に参入した時、「モデムの無料配布」「100万台目標」「他社の1/2以下のコスト」などメディアが好むネタを用意して、大々的にPRした。)

実際に購入して履いてみた感想

早速シューズが届いたので、履いてみた。今回僕が注文したのは「Wool Runners」という一番最初に発売されたオーソドックスなモデル。色のバリュエーションも10以上あったが、グレーを選択。(日本への直販は行なっていないようだったので、BUYMAを通じて購入)靴の皮がとにかく柔らかくて、裸足で履くとまるで室内スリッパを履いている感じ。初めて履く靴にありがちな硬さもなく、足に柔軟にフィットしてくる。価格は海外取り寄せのため2万円弱と安くはないが、とても満足している。

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