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むやみやたらと留学を勧めるのは喝!という話

さて、これまで国際的な教育に関わり続けてきて、留学の相談や支援も行ってきた身のくせに、今日はすごく変なことを書きます。それは、留学の負の側面です(特に学部)。そもそも自分のスタンスとしては無闇やたらと「留学しろ」となんて絶対言わないのですが、最近「留学した方がいいですかね?」というような質問ももらうことがあり、ちゃんと書いておきたいと思いました。(もちろん留学の仕方にもよるんですが。)

断言します。留学には負の側面もある。だから、むやみやたらと勧めるのは無責任だなぁと思ってるんです。

留学体験談の多くは生存者バイアスである

巷にあふれる留学体験談って、成功談が目立ちすぎているように思えます。これだけのことを学んだ、とか、これだけ辛いことや失敗をしたがそれを乗り越えて頑張れた、というようなものも、成功談です。そりゃぁ、自分が失敗した、逃げた、みたいな話はなかなかシェアしにくいですもんね。こういう表に出てくるもののほとんどは生存者バイアス(※)のあるストーリーなんです。

生存者バイアス:何らかの選択過程を通過できた人・物・事にのみを基準として判断を行い、通過できなかった人・物・事は見えなくなるため、それを見逃してしまうという誤謬

こういった成功談だけ見て、留学に憧れて、でも実際に行ったら色々と辛いことがあって、引きこもってしまったとか挫折して帰国した、とか、それは期待をもたせすぎた結果の詐欺のような話だと思うんです。そういうことも知って納得した上で、自分の進路は選択したほうがいい。表に出てこない辛い状況だって存在しうるのは厳然たる事実です。恐怖感を植え付けたいわけじゃないんですが、ワクワクする未来だけに溢れているわけじゃないんだよ!と言いたい。

数多くのプレッシャーに押しつぶされる、かもしれない

HLABがサポートしている柳井正財団では、毎年留学前に合宿を行うのですが、そこで近年毎年やっているのが、先輩たちによるパネルディスカッション企画です。ここでは、留学して辛かったことや失敗談をシェアしています。そこでは、こんな経験をして辛かった、こういう風に感じていた、ということをある意味で「告白」するのですが、「オレもオレも!!」とか「いやそれもっと前に言ってよ!同じ悩みしてたのに!」という声が飛び交います(笑)

例えば、ハーバードの学部生の73.9%が何らかのメンタルヘルスのサポートを受けている、というデータがあります。もちろん程度は軽重あると思いますが、周囲の輝かしい経歴や優秀さにあふれる友人たちを見て、大きく「孤独」を感じてしまう、ということなのです。ハーバード学部生の古川さんによるHuff Postの記事には、彼女のルームメイトの告白として、こんな記載があります。

「私、ハーバードにいるべきじゃないのかもしれない。課題がありすぎて、終わらないの。この前の小テストも、時間が足りなくて全然できなかったの。授業もついていけない時があるの。こんなこと初めてで、自分がトップだと思っていた自分が情けなさすぎて、もう、何もかもが嫌になっちゃった。今も勉強するべきなのに。。。涙が止まらない。もう帰りたい。」

ハーバードは競争も激しく特殊な例かもしれませんが、様々なプレッシャーが留学生を取り巻くのは事実なのです。

ちなみに私はアメリカで死にかけました

せっかくなので自分の話もちょっとだけ。私は学部での1年の交換留学でしたが、本当に色々失敗しました。

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アメフト楽しむ、ぶっ倒れる前のワタシ(笑)

研究をしたくて留学したので、むっちゃ最初はワクワクしてたわけです。しかし、現実は違った。授業に行けば専門用語はわからないし、そもそも背伸びして大学院の授業ばかり受けていたので内容も難しい。パーティにいっても最初はなじめない、などなど。時間が経てばなんとかなるかなーというポジティブシンキングもありましたし、日本人の友人も多かったので逃げようと思えば逃げることはできました。ただ、ここで逃げたら何しにアメリカ来たのかなーという葛藤がすごい。加えて、山ほどの宿題、週末を犠牲にして勉強するわけです。オレなんで勉強してんだろ?って思った時期もありました。当時、日本で友人たちの多くは卒業して社会人になっているわけですし、日本の友人たちの楽しそうな写真がアップされまくるFacebook。そりゃ、辛いです。いくらサポートしてくれるTeaching Assistantや現地の友人はいるとしても、やっぱり精神的に来るものがありました。

加えて、私は自分を追い込みすぎ徹夜を繰り返し体が弱ったからなのか、ウィルスにより体調を崩し、救急車で運ばれ1週間入院しています。今だから笑い話ですが、当時は現地の友人や日本で私を送り出してくれた奨学金団体、日本の大学を巻き込む大騒ぎ。実際、症状もかなりひどく、医者が親を呼べ、といい、親がアメリカまで来ました(笑)これ下手したら死んでた可能性があるので、そういうリスクもあります。もちろん極端な例ですが...。

と言いつつ、論文も執筆して投稿して、友達もたくさんできて、などそれを上回る成長を得られたのも事実なんですよね。

留学は魔法の薬ではなく、精神と時の部屋に近い

留学いったほうがいいですか?という時点ではまだまだ甘い、というのが本音です。(もちろん、短期の語学留学などは除きます。)留学は「行けば成長できる!」ような魔法の薬などではなく、どちらかというとドラゴンボールの「精神と時の部屋」に近いのではないかと思います。空気も薄くて、時間もあっという間にすぎてしまう。けどきつい。笑

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個人的には、こういう辛い状況も留学の醍醐味だと思いますし、良い意味でのプレッシャーにもなると思うので、僕はもう一度チャンスがあれば長期で留学に行きたいなぁ。

ということで、成功談ばかりでなく、失敗談も聞いて、総合的に色々なこと(留学にかかる費用なども重要なファクターだと思います)から判断して、(学部)留学を是非してみてください。

柳井正財団の募集、開始しています!(〆切2/11)

こんなネガティブ面いっぱい話したところで申し訳ないんですが(笑)

HLABのサポートする、米英の大学進学に向けた給付型奨学金を提供している柳井正財団の4期生の募集が始まりました。今年、米英の大学に進学を検討し、チャレンジしている皆さんは是非ご応募お待ちしています!

※本記事はEducation USAに2011年に寄稿した自身の記事をベースに大幅加筆修正したものです

読んで面白かったら、是非サポートしていただけると嬉しいです!大学生との食べ語り代にします笑