【詩】たとえば、北国の蝶
さみどり色のしずくに濡れる五月は暮れなずみ
樹々は今日を終える人々のその後ろ
誰からも気に留められることはないけれど
その木蔭は少しはずかしい
呼ばれても他の少年みたいにほがらかに
振り向けなかったぼくがいる
銀色の鍵を取りだして今日のぼくを仕舞う前
小さな夜空遠くの星の名を諳んじる
どこかの星でも雨が上がって星を仰いでいる
あの光はよく澄んで痛いほど
もう何処にいるとも知れないきみが
持ち去った開かない小箱
きみよ、きみ
きみは本当にいたのかな
ぼくの中の花吹雪だとか
嵐の夜のランプだとか
勝手に映した鏡なのかな
レフ・トルストイの墓
野原のただなかに置かれた墓石に花や蝶
日曜日の朝 流れてきたその映像は
怖いほどあたたかい
神さまはもちろん要らないけれど
きみを手放した後
曇り空のようなぼくの瞳は
閉じられる一瞬まえ
花や蝶を追い掛けているのかな
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タイトルは「ほっこくのちょう」と読みます。
タイトルにもふりがなを振れたらいいなあ。
「きたぐにのちょう」だと演歌みたい?