あだ名
「二郎さん!久しぶりじゃん!」
そう僕に言ったのは、50過ぎくらいの元気のいいおじさん。
バイト先のお客さんです。最近は勤務時間が短くてなかなか会えてませんでした。
なぜそのお客さんが僕のことを「二郎さん」と呼ぶのか、勘のいい人や年齢層高めの人ならわかると思います。
そう、坂上二郎さんです。欽ちゃんこと萩本欽一さんとコント55号で活躍された芸人さんです。
僕の苗字が坂上だから、坂上被りで二郎さん。
めちゃくちゃ単純です。でも、そのお客さんの年齢層の方々からしたら『坂上=二郎さん』ってゆう方程式が、もう当たり前にあるみたいです。
そして、もう1人僕のことを「二郎さん」って呼んでいた人がいます。
中学の時の数学の先生です。
その先生もやはり当時で50代半ばくらいのおじさんでした。その先生は、普段はめちゃくちゃ怖い顔して厳しいくせに、数学の授業中にいきなり真顔でギャグをぶっ込んでくる面白い先生でした。
その先生は、僕のことを「坂上!」ではなく「二郎さん!」って呼んでいました。
最初はクラスのみんながきょとんです。
「あ、俺のことだな」
初めて呼ばれた時なんとなくわかりました。
同年代のみんなはそもそも坂上二郎さんを知らない人がほとんどなので、教室は静まりかえります。
その数学の先生は、3年間僕のことをずっと二郎さんって呼んでくれました。
最初は、みんな二郎さんって誰だかわかってないし、なんで僕が二郎さんって呼ばれてるのかわからない様子でした。だからみんなの前で二郎さんって呼ばれるのは少し恥ずかしいというか、そんな感情でした。
でも、そう呼んでくれることで僕とその先生の関係が特別な感じがして、少しづつ受け入れていっていました。
歳の離れた人からあだ名をつけられることって中々ないことだと思うし、しかもそのあだ名のおかげで僕のことを覚えてくれたので、なんか嬉しかったです。
今思うと卒業してからその先生に会っていないので、懐かしく寂しく感じます。
愛着を感じるあだ名って皆さんはありますか?
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