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企画には、熱が必要だ。 類書のない企画の通し方。


よい企画(社会に役立つ企画、売れる企画)には、共通点があります。
それは「熱」です。
シンプルですが、意外と忘れがちなものではないでしょうか。
とくに厳しいノルマを抱えながら、企画を作り続けている人にとっては。

「そうそう」と思った方、
「そんなの当たり前でしょ?」
「いやいや、思いだけで企画は成り立たないよ」と思った方、
もしよければ、読んでみてください。

年間に、何本企画書を作ってます?見てます?

出版社で編集者をやっていると、年間に数十本の企画書を作り、数百本の企画書を見ることになります。

僕は、年間に12本くらい書籍を制作しますので、没になる企画を合わせると、その2倍か3倍くらいの本数の企画書を作ります。これがだいたい30本。

それから、見ている企画書が結構な数で、たぶん年間で300本は見ていると思います(編集者の皆さん、何本くらい見ていますか?)。
週1回の企画会議の企画書、編集部内で提案される企画書や、著者の先生や編プロさんからいただいた企画書、持ち込みの企画書をざっくりと数えたらだいたいそれくらいでした。

企画書に必要なものは何でしょうか?

書籍の企画書には、必要なことがいくつかあります。
「タイトルは?」「著者は?」
「誰にどんなことを伝えたいのか」「類書はあるのか、売れているのか」
「どれくらいのページ?」「カラー?モノクロ?2C?」
「どんな時期に、書店のどの棚で売るのか」「発売後のプロモーションは?」などなど。

僕は実用書の出版社に勤めているので、「誰がどうやって使うものなのか」「読むとどんなことがわかるのか」「どんな効果があるのか」など、本の実用性も大事です。

これらはどれも必要ですが、よい企画書に必ずあるのは「熱」です。
僕は、熱さえあれば、そのほかはあとからついてくるとさえ思っています。

熱のある企画が意外と少ないことに気がついた

熱とは、「企画の提案者が出版にかける情熱」です。

僕は、管理者になって企画書をたくさん見るようになり、
熱のある企画が意外と少ないことに気がつきました。

企画書では、「類書の売れ行き」「ターゲットの年齢層」など、数字やデータが優先されますから、本来必要な「熱」は優先順位が低いのかもしれません。また、熱があっても、表に出さない人もいるでしょう。

ただ、今の時代の出版企画には、熱が最も重要だと思っています。

なぜ、熱が必要か?

理由というか、背景には2つあります。

・誰でも市場調査ができる。
・誰でも質の高い本が作れる。

出版界には、データや経験が山のように蓄積されているので、
皆がこの条件でつくると、本の種類や質に差がなくなってしまうのです。

とくにデータは誰にでもわかりやすいので、企画書には必須ですし、これだけで企画が通ることもあります。でも、各出版社が同じデータを見ているので、同じような市場に、同じような本を作ることになり、結果的にお互いの売り上げを食い合うことになってしまうのです。

だからこそ、個人がもつ「熱」によって、これらに差をつける必要があります。

「この人と本を作りたい!」「世の中のこれを伝えたい!」という気持ちによって、世の中に一つしかない本を作ることが、今の出版界でヒットを生む方法だと僕は考えています。

未踏の市場を発見するには、データを追いかけるだけでは限界があるので、結局は個人の気持ちや感覚が大事だと思っています。

熱を込める3つの方法

誰でもできる、企画に熱を込める方法をご紹介します。
これは、類書がない企画の通し方とも言えるかもしれません。


・企画を主観的にみる

その企画、自分で面白いと思っていますか?
そのテーマ好きですか? どこが面白いですか?
本当にその著者と仕事がしたいですか?

自分に問いかけてみてください。
そして、自分の熱が込められる企画にしてください。
思ったことを自分の意見として書類に書いて、プレゼンしてみましょう。
必ずその熱意は伝わるはずです。


・実際にやってみる

たとえば、レシピ本や、ダイエット本であれば、実際に提案するメソッドをやってみましょう。食べてみましょう。無理にやせる必要はありません。体の変化を感じましょう。

たとえば、今売れている「腸活オートミールレシピ」。

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企画の提案当初は、オートミールが注目されていたとはいえ、まだ類書がほとんどない状態でした。そこで、提案した編集者は実際にオートミールを食事に取り入れ、体験した上で、提案してくれました。

最初は半信半疑だったそうですが、実際に食べてみると「意外とおいしい!」「生活に取り入れやすくて便利」など、発見が多かったそうです。

「オートミール、売れるの?」「ほんとに流行るかな?」という意見もあった中、オートミールの良さを伝えたいという熱意があったからこそ、企画が実現したといえるでしょう。
この本は、今、ブームを先取りして大ヒット中です。


・イメージを形にしてみる

たとえば、ちょっと前の本ですが、「豪快バーベキューレシピ」。

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これは僕が企画した本です。今でこそアウトドアブームで、たくさんのアウトドアクッキング本がありますが、この企画が通過したのは、2012年。バーベキューレシピ本はほとんどない状態。ブームは少し先のことでした。

でも、たけだバーベキューさんとともに、豪快なバーベキュースタイルを世に広めたいという思いが強く、紙面イメージを企画提案時に作りました(Wordなので大したものではありませんが…)。

BBQレイアウト見本

この本は、珍しい横長の本なのですが、すでに企画時に計画していたのです。


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本を長方形のバーベキューコンロに見立てたかったのと、
とにかく写真をダイナミックに見せたいという意図が込められています。

ちなみに、企画書を見返してみたのですが、「肉のアップ」という表紙のイメージも、帯の「肉はかたまりで焼け!」というキャッチコピーもすで企画書に書かれていました。

ほとんど類書がない状況にも関わらず、「そんなにやりたいなら、やってみなよ!」というありがたい意見をもらい、企画は通過。
今や、アウトドアクッキング本のロングセラーとなりました。

いかがでしたか? あなたの企画はどうでしょうか。
熱はありますか? その熱は周りに伝わっていますか?

もし、熱のこもった企画があるのに、周りがわかってくれない!という方、
ぜひ、僕にご相談ください!企画募集中です!



文 高橋ピクト
生活実用書の編集者。『新しい腸の教科書』『コリと痛みの地図帳』などの健康書を中心に担当。『マンガでわかる東大式麻雀入門』『はじめての囲碁入門』『競馬の教科書』『豪快バーベキューレシピ』『新しいキャンプの教科書』など、趣味の入門書を編集することに喜びを感じる。立ち上げから携わる『マンガでわかるシリーズ』(池田書店)はスタートから10年、計30点、累計70万部となった。「生活は冒険」がモットーで、楽しく生活することが趣味。ペンネームは街中のピクトグラムが好きなことに由来する。

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