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月刊 編プロのケーハク

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シュッパン前夜メンバー、編プロのケーハクの記事まとめ。出版界のあるある、新人ライター&編集者向けのスキル解説、出版界の問題や課題について。
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#書籍

後世に残したい出版編集の技術アーカイブ「ラフは原寸で描く!」

今宵、本の深みへ。 この度、独立してフリーになることになった、編プロのケーハクです。 おそらく、編プロ所属で書くのは今回で最後になるかと思いますが、今後も「ひとり編プロ」として出版編集業務は継続していく所存ですので、「編プロの」はそのまま据え置きということでお願いします(どうでもいいですよね?)。 さて、今回は「後世に残したい出版編集の技術」ということで、「ラフ」をテーマに解説していきたいと思います。 最近は、生成A Iが猛烈なスピードで発達してきて、すでに誌面のデザイ

「タイパの時代」の本づくりは、高難度のつくり込みが必要になっていく!?

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 “タイパ”とは、“タイムパフォーマンス”のことらしいです。 最近、よく聞きませんか? 「映画を2倍速で観る」とか、「音楽はサビから始まらないとヒットしない」とか。 全般的に人々の情報処理がめっちゃ速い!? SNS、動画配信、音楽配信、ゲーム、その他の趣味etc. ここ数年で気付かぬうちに個人で楽しめる多様なコンテンツが激増していたわけです。 つまり、やることがたくさん! 仕事だけでなく、自由に使える可処分時間も熾烈なタイムマネ

これ、出版業界のタブーかも!? 世の中に「パクリ本」が多いのはなぜ?

 書店に行くと、皆さんも気づきませんか? 「この本、あの本と似てるな……」と。 そうです。今回のテーマは、いわゆる「パクリ本」です。どの業界でも“パクり”(と思われる)商品はあると思いますが、出版はなかでも特に多く見られる傾向にあるように思います。 しかも、出版界は「パクリに寛容」な部分もあると、個人的には感じます。そこには明確な理由もあるので、今回は正直に(笑)、その辺りをわかりやすく紐解いてみようかと。 「着想パクリ」は日常茶飯事 ベストセラーといわれる本。たとえば

「編プロ」って知っていますか? 出版社と編プロの編集者の違いとは?

私、「編プロのケーハク」と名乗っておりますが、そもそも「編プロ」ってご存知ですか?    編プロとは、「編集プロダクション」のこと。かろうじて認知されている(であろう)一般的なイメージとしては、出版社から委託されて本や雑誌を実際に制作する(手を動かす)外部の(アウトソーシング)制作会社というところでしょうか?  まあ、その通りなんですが……(笑)。出版社からの制作依頼を引き受けて、納期までに完成データを納めるっていうだけが仕事のすべてでもないんですよね。否、制作依頼を待っ

本の編集って、どんな仕事なの? たとえるなら「本の監督さん」です。

 「本の編集者」のイメージって、ありますか?   誰もが知っているレベルでいえば、国民的アニメ「サザエさん」に登場するノリスケさんの職業が出版社に勤める編集者。普通の人であれば、作家の伊佐坂先生の家に「原稿を受け取りに行く人」くらいのイメージしかないですよね?  プロの編集者である私も、最初は「先生、原稿まだですか?」くらいのイメージしかありませんでした……。  でも、編集者といっても、扱う媒体によって仕事の内容は大きく異なります。ノリスケさんの場合は、いわゆる「文芸編集

今宵、編(へん)な人たちと、本の深みへ。 『シュッパン前夜』立ち上げのご挨拶

あるとき、ふと思ったんです。 「このままだと、10年後も同じことをしながら、ぼやいているだけだな」と。 出版不況が叫ばれて早10数年。たしかに、出版各社においては時々大ヒットこそ出るものの、業界を全体的に見ればいい話は聞きません。 複数の出版社とつながりを持つ編プロに所属する私からすると、こんな状況なのに、出版各社が小競り合いみたいにちまちまとベストセラーの奪い合いをしていても、業界全体は尻すぼみになるだけではないか? と感じていたのです。  「いずれ誰かが変えて