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「さいたま国際芸術祭」はニューノーマルの時代に合う形で年内実施を目指す

「さいたま国際芸術祭2020-Art Sightama」については、当初、今年の3月14日に開催する予定で約3年間にわたって、「花ーflower-」をテーマに「市民参加型の芸術祭」をコンセプトに開催準備を進めてきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から2回の延期を発表、そして7/2に市長定例記者会見で以下の発表がありました。

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●「祝祭感のあるイベントとしての開催」は見送る

●さいたま国際芸術祭2020は、「共につくる、参加する」市民参加型の芸術祭として、これまで市民の皆さまをはじめ多くの方々に御協力いただいている

●作品の準備もほとんど終了していることから、作品の公開をはじめ、市民の皆さまに還元できる方策を検討し、実施する。

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代替策としては、

1.作品を公開し、市民の鑑賞機会の創出
完成した作品や中止となった公園の映像化、日時指定での会場開放のほか、昨年8月から実施してきた「さいたまアートセンタープロジェクト」や「さいたまトリエンナーレ2016」を契機に生まれた「市民サポーター事業」といった市民参加型プログラムについても、今後の感染状況を見定め、実施を検討する。

この際、「アートセンタープロジェクト」などの先行プロジェクトや埼玉県立近代美術館との連携プロジェクトなど芸術祭の名の下に展開されたものも多く、代替策実施にあたっては、「さいたま国際芸術祭」の名称を引き続き活用し、足跡として残してまいります。

2.「一部プロジェクト」をレガシーとして継承
市民がアートを楽しみ、参加する機会や、アーチストとの地域交流を促進する機会の拡充を図り、文化芸術を活用したまちの活性化につなげるため、これらの市民参加型プログラムを今後も継続します。

これら代替策については、検討中の段階ですが、秋を目処に、実施する予定です。これらは、新たな市費の負担が生じるものではありません。

これまで、市民をはじめ多くの方々に関わってきていただいているため、できる限り市民の皆様に還元できるような形で、また、市内のアーチストや文化芸術団体等の支援にもつながるよう進めていきたい。

と、さいたま市長の清水勇人さんから発表がありました。


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6/30日には市長定例記者会見の公式発表を前に各メディアに「芸術祭中止」の報道があり、市民・サポーター・関係者・作家等が困惑するという場面があった。

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7/2日には市長定例記者会見の公式発表を受け、公式Twitterが今後の展開を発表。数日間、情報が錯綜した。


これらを受け、今後、ニューノーマル(新しい生活様式・ウィズコロナ)に合った芸術祭の形やシステムを構築する機会を創造することが求められています。行政主導の大型芸術祭によるアートの場づくりそのものもアップデートが必要になっています。今後、多角的な視野、知恵を集め、様々な議論を交わし実践していく予定です。

とはいえ、追加の補正予算が見込めない中、今後の展開を考えていくことには大きな課題が残ります。その理由は、ほぼ芸術祭開催直前で完成していた現場が凍結状態になり、その作品の維持や管理を続けてきました。今後、再開する際にも費用が必要になるため、様々な面で現場には心配事や課題が山積しています。


改めて、コロナ凍結期に、さいたまならではの芸術祭について考える時間がありました。

さいたま市には2012年4/1に施行された、「さいたま市文化芸術都市創造条例」があります。

この条例は、「生き生きと心豊かに暮らせる文化芸術都市」の創造に向けて、条例に基づく7 つの基本施策を定めるとともに、「文化芸術を活かしたまちの活性化」、「文化芸術都市創造を担う人材の育成」、「さいたま市の魅力ある資源の活用と発信」を3 つの重点プロジェクトとして位置付け、計画期間である今後7年間において、重点的に取り組む」とされ、その具体的な方策事業として、「さいたまトリエンナーレ2016」が開催されました。

その時のディレクターの芹沢高志さんは、「さいたま市」を「生活都市」と表現し、そのさいたま市を舞台に、アートのための祭典ではなく、市民がアーティストとともに、自分たちの未来を探していく、「市民の想像力の祭典」としたいとトリエンナーレを位置付けました。

芸術祭を「ソフト・アーバニズム」=「柔らかな都市計画」と考え、文化、芸術を核として、まちの営みに創造性を吹き込むための社会的な実験であるという点が今日の状況にも合うコンセプトです。

「やわらかな都市計画」とは従来のハードをつくる都市計画ではなく、前述した「さいたま市文化芸術都市創造条例」にもあるように、文化芸術の持つ、「自分や他者の再発見、多様性の認識と共有、異なる文化への理解や協働などを生み出す可能性」によってソフト、精神的なインフラを都市計画として捉えるというチャレンジングな試みであると私は考えています。

そのコンセプトは、今回の方針として打ち出された「祝祭感のあるイベントとしての開催」を主目的で行わない芸術祭のあり方を目指した文化芸術の場づくりであったのではないかと私は考えています。

その「さいたまトリエンナーレ2016」の現場に参加し、得た経験を元に、今回の「さいたま国際芸術祭2020」の市民プロジェクトコーディネーターとしてどんな場づくりができるかと考え、実践してきました。

ディレクターの遠山昇司さんが今回のテーマに掲げた「花-flower」を受け、
日常生活の中に継続してワクワクする体験があること。その気持ちを「日常賛花」と呼んで「ライフスタイルにアートがある」楽しみを共有できる場づくりとして、2019年8月から実施してきた「さいたまアートセンタープロジェクト」を5人のメンバーとつくってきました。

今回の清水市長の発表の中には、「さいたまアートセンタープロジェクト」の継続もあります。

『Sightama Art Center Project』は生活都市さいたまで、市民や来場者自身のライフスタイルに合わせた「アートへ参加する習慣」をつくりだすプロジェクトです。今回の芸術祭を機に、作家と市民が協働し継続的なアートの場づくりを試みる「浅見俊哉・青木裕志・山本未知・懸谷直弓・小林未季」の5人のメンバーが集いプロジェクトを展開しています。5人がそれぞれ分野の異なる創造力を持ち寄り、「日常賛花―さいたまでアートに参加し・伝え・感じ合う」を合言葉に、2019年8 月から芸術祭会期中まで、約70のアートプログラムを継続して開催しています。芸術祭後も続く、しなやかで逞しいアートの場を皆さんとつくっていきたいと考えています。

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「さいたまアートセンタープロジェクト」が2019年8月から新型コロナウイルス感染拡大防止の為会場閉鎖まで行ってきたプログラム一覧

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「さいたまアートセンタープロジェクト」の2020年1月から5月の動きを中心にまとめたタイムシート




また次世代を担う生徒たちとの作品制作が、「さいたま国際芸術祭」アウトリーチプログラムで行われていました。招聘アーティストのDamaDamTalが2つの教育現場へ赴き数ヶ月に渡り作品制作を実施しました。

これらの取り組みも長期的な視点で、さいたま国際芸術祭、ひいては「さいたま市文化芸術都市創造条例」が目的としている3つの柱の1つ「 さいたま文化を支える「人材」の育成」の観点からも重要だと考えます。


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「さいたま国際芸術祭2020招聘作家DamaDamTalと埼玉栄高校ダンス部の生徒との共同制作したパフォーマンス作品の発表の様子

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「さいたま国際芸術祭2020招聘作家DamaDamTalが「 ひまわり特別支援学校」での児童生徒と制作した作品を校内に展示する様子

これらの作品や取り組みも改めて、多くの方へこれまで実施してきた成果をお届けできるよう、様々な方法を考えていきたいと思います。


巨大資本を投下して実施される「祭」としてのアートの現場ではなく、様々な領域や属性の創造力を重ね合わせ、サスティナブルで生活と共にある文化芸術の場を新しく構築して実装していく試みとして、今後の「さいたまアートセンタープロジェクト」を展開していく予定です。



こうした長期の取り組みを走り続けていくときには、サポーターや市民の方々の様々な視点の声が必要です。


その中で7/31まで、以下のように広くパブリックコメントを集めています。


【意見を届けよう!】

「さいたま市総合振興計画 基本計画(素案)」へのパブリックコメントを市が7/31まで募集しています。

総合振興計画は、市政運営の最も基本的かつ総合的な指針となる計画です。現在の総合振興計画である「2020さいたま希望(ゆめ)のまちプラン」の計画期間が令和2年度をもって満了となることから、市では、令和3年度からスタートする新しい計画である「(仮称)2030さいたま希望(ゆめ)のまちプラン」の策定を進めています。

この中で文化芸術についての取り組みは、P142-P144にあります。今回の芸術祭について感じたことや考えたことなど一人一人の意見が次の文化芸術の場をつくります。

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詳細は以下をクリック!



これまでの「さいたまアートセンタープロジェクト」を中心とする芸術祭への取り組みについては以下にまとめてありますのでご一読ください。








⚫︎写真作家・造形ワークショップデザイナー ・キュレーター・「時間」と「記憶」をテーマに制作。2012年〜ヒロシマの被爆樹木をフォトグラムで作品制作 ●中之条ビエンナーレ2019参加アーティスト ●さいたま国際芸術祭2020 市民プロジェクトコーディネーター