見出し画像

なぜ企業は「政治的なメッセージ」の発信に失敗してしまうのか【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.196】

ブランド・アクティビズムが現在広まっている。企業は、多様な社会問題に対して自らの立場を表明しているが、その成功の度合いはさまざまだ。多くの企業がキャンペーンを行う一方、本業の商品とはあまり関係のない問題について訴えるものが多い。

たとえば、ジレット社の「有害な男らしさ(Toxic Masculinity)」キャンペーンという#MeToo運動に触発され、男性にスポットを当てたもの、アウディー社の「娘(Daughter)」広告という男女間の給与格差を問題視するもの、スターバックス社の「ともに人種を(Race Together)」キャンペーンという人種間の理解促進を目的としたものなどがある。

しかし、これらの取り組みはいずれも論争を巻き起こし、消費者の示した反応も2つに分かれた。

企業が政治的メッセージを発信するリスク

話題性のあるテーマに対し、ステークホルダーに同意されないような意見を、なぜブランドは表明し、市場シェアやブランドイメージの低下を招きかねないリスクを冒すのだろうか。

ブランドが政治的なメッセージを発信することを消費者が望んでいると示す調査報告はいくつかある。たとえば、PR会社エデルマンの調査では、64%の消費者が自分と同様の考えを表明したブランドから購入すると回答している。また、バロンズの調査では、消費者の約60%が、企業が社会問題に対して立場を表明することを望んでいる。

また、ポーター・ノベリ社の調査では、セクシャルハラスメント(97%)、人種平等(93%)、女性の権利(89%)、国内の雇用拡大(86%)、プライバシーとセキュリティの問題(84%)について、企業は「取り組まなければならない」と企業経営者は答えている。

このような証拠があれば、企業がアクティビズムに飛びつくのは驚くことではない。しかし、それは本当に消費者に望まれているのだろうか。そして、それは事業にとっても常に良いことなのか。

市場調査の結果を企業は間違って捉える

コーン・コミュニケーションズ社の調査では、「アメリカ人は企業が対応の分かれる問題に取り組むことを期待する」と示しつつも、調査対象となった消費者の76%は、その企業がある問題に対して自分と異なる「間違った」立場にあると知ったら、その製品の購入を拒否すると答えている。

マーケティング担当者にとって、これは単純な計算問題だ。意見の分かれる問題について立場を示せば、反対の立場にいる人々があなたの製品を買わなくなる可能性が高い。さらに、悪い場合、そのような人々が組織化し、製品のボイコットを他者に働きかけかねない。

大部分の研究は、アクティビズムのプラス面にのみ焦点を当て、マイナス面については充分な理解がない。このように偏った視点は、マーケティング担当者を惑わせる。

イベント参加はこちらから。



サポート頂いた方には勉強会を無料でご招待します!