日本はなぜ「大麻」に厳しいままなのか? 米紙が取材【クーリエ・ジャポンからの抜粋-Vol.194】
大麻は怖いもの──日本社会で幼い頃から、宮部貴幸はそう教え込まれてきた。だがそれは、自分の幼い娘が特殊なてんかんと診断される前の話だ。
インターネットで治療法を必死に探して、思いがけない救いの手に巡りあった。大麻から抽出される「カンナビジオール(CBD)」と呼ばれる成分だ。
仕事でカリフォルニアに出張したとき、奇跡を期待して、この魔法の液体が入った小さな琥珀色の瓶を購入した。
期待は裏切られなかった。治療をはじめてから数週間後、娘のてんかんの発作が止まった。
「大麻に対する考え方が180度変わりました」と宮部は言う。
「ゲートウェイドラッグ」へのゲートウェイに
いま宮部は妻と独自のCBDオイル製品を開発している。大麻にまつわるものはことごとく避けるよう教えられてきた消費者にCBDオイルを売ろうという日本の起業家たちの仲間入りをしたのだ。いまこうした起業家が、日本で増えつつある。
だが簡単にはいかないだろう。
世界の主要国は、大麻の医学的な有効性が明らかになるにつれて規制を緩めている。ところが、日本は大麻事犯の検挙件数を増やし、大麻に肯定的な情報が海外から入ってくるのを、啓発活動や法律の強化で阻止するなどして強硬な姿勢を強めているからだ。
それでも日本の大麻推進派は、(医学的な有効性は実証されているが、大麻の中毒作用はない)CBDが、「ゲートウェイドラッグ」とも呼ばれる大麻へのゲートウェイになることを期待している。
この戦略はアメリカを参考にしていると言うのは、大麻合法化を目指すNPO「グリーン・ゾーン・ジャパン」共同創設者の三木直子だ。
アメリカでは、CBDが一部の小児てんかんに効果があると報道されてから大麻に対する世間の意識が変わり、大幅な法改正につながったと三木は説明する。
日本にも「グリーンラッシュ」は来るのか
CBDは、日本でも法の抜け穴のせいで合法だ。抗炎症やリラクゼーション、睡眠促進などさまざまな効果があると魅力的な製品でもある。
日本でのCBDサプリメントの年間需要は、2024年までに約900億円に達する可能性があるとアナリストたちは予測する。
「CBDのおかげで、医療用大麻にも娯楽用大麻にも関心がなかった人が大勢この市場に入ってきています。新しい扉が開かれたような感じです」と三木は言う。
欧米で大麻の規制が緩和され、ゴールドラッシュならぬ「グリーンラッシュ」で儲けようとしている起業家にとって、日本は魅力的な市場だ。
世界第3位の経済大国で世界のどこよりも高齢化が進む日本の人口構成はまさに理想的と言える。潤沢な可処分所得を持ち、病を癒すサプリメントに底なしの関心を抱く健康志向の強い高齢の消費者が多いからだ。
だが日本には、ドラッグに不寛容な東アジアのなかでも最も厳しい大麻関連の法律がある。
東アジアのどの国も、娯楽用大麻を合法化する気配はない。それでも台湾と韓国は、有効性を示す証拠が増えてきた医療用大麻を合法化した。中国は、産業用大麻とその関連製品の最大の生産国だ(中国ではCBDは生産できるが、使用はできない)。
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