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伊那市ダブル選用【ファクト考察 観光と経済①「間違いだらけのこれまで」】

というわけで、今週のテーマは「観光から見る経済」です。
 
僕自身が協力隊時代から、ミッションも含め、そのありかたについても伊那市の方向性には大なり小なり影響を与えてきていると思います(例えば「光を観る。光は人」とか「国内三大ランドビュー」等のワードは僕のコピーから始まっています)。そして、その材料(リソース)としてよく導入をさせて頂いたこちらのご紹介からはじめましょう。

http://localhood.wonderfulcopenhagen.dk/wonderful-copenhagen-strategy-2020.pdf

数年前にデンマークの首都コペンハーゲンから「観光の終焉」というメッセージが出されたことは、記憶にある方も少なくないのではないか・と思います。その一文を改めて。

☆観光もまた「経世在民」を土台とする

これまでは大量の消費者が、ビジネスと余暇、都市と地方、文化と自転車など、各セグメントに分断された観光を楽しんでいました。

その為に「栄える写真」で観光地を売り込んでいく時代は終わりです。行政組織の観光部局が、消費者達に対して上から目線で観光地や観光ルートを提案する時代も終わりです。

本当の観光とは、もっと地域住民や企業、そして観光客が一緒に創り上げていくものです。そしてもし、観光が地域に住む人の生活の質を上げないのであれば、コペンハーゲン(観光地、観光エリア)は観光客の犠牲になってしまいます。マスメディアのPRに象徴される、大量の観光客が押し寄せ、地域住民には負担ばかりになるようではダメなんです。

要約するとこういう感じで、これはまさに僕がこの伊那で、今も実感していることです。また、日本でも多くの地域がコペンハーゲンと同じベクトルで自分たちの街や地域と向き合う方が、よりよく持続的な成果を得られるだろうと確信しています。

ちなみにですが、日本という観光後進国のその中でも後進地なのに、観光先進国の資料を英語だから無視みたいな人たちも少なくないんですよね。いわゆる「近所の先進地が翻訳してくれたら、真似すればいい」という考え方だから、いつまでたっても後進地で稼げない、地域の可能性を開かせられないままなんです。

そんなわけで、コペンハーゲンだけではなく例えばスペインのバルセロナをはじめとする各地でも観光デメリット。市民にとってのマイナス面を見つめなおし、過剰な消費者(いわゆるテイカー・Taker)に NO という動きを見せてきているのが流行病前のリアルでした。

しかし、日本の観光施策は国レベルで「爆買い」という言葉に象徴されるこうした消費者(Taker)を集めることにやっきになっているわけです。これは日本のデフレと経済衰退を外科的処方で無理に延命させているだけで、その本質的な病を解決できるものではありません。何よりも、こうした「爆買い」のような処方はあくまでも短期間の措置であって、永続出来ないことはいうまでもありません。まずは、この点をきちんと認識しておきましょう。

☆首都圏存続の為のインバウンド

既に「何回も聞いてる」という方もいると思いますが、結論から言うと、謎の和製英語インバウンドは、首都圏経済存続の為に使われていて、地方や地域には大きな影響を与えるに至らない。これがリアルです。

流行病前のインバウンドにおいて、その消費額は数兆円規模。そしてその約7割弱が東京、大阪、京都、北海道。そしてディズニーランド(千葉)に落とされています。これに沖縄などを加えて上位10都道府県で約8割を独占しているような状態です。長野とか恵まれているような印象があるでしょうが、東京都だけで消費額は約1兆円という状況の中でせいぜい350億くらいなものです。長野ですら東京と 30:1の格差なんです。

そして一方で、経済成長の鈍化による収入の伸び悩みと増税のダブルパンチで二十数兆あった国内観光市場は衰退の一途。その消費額を毎年のように兆単位で減じています。地方や地域にとってはこちらの方がより直接的に「ヤバい」状況を作っていることは言うまでもありません。
ですので、観光上の政策としても本来は、国民に必要な収支バランスを回復させ、時間所得を向上させ、国民が国内観光を楽しめる環境を整備することにあったはずです(行政がここから目を背けるためにインバウンドという安直な解決に走ってしまったともいえそう)。国内観光消費が前年比1割戻れば約2兆円の国内経済が循環し波及します。なので、3~4年で25兆円くらいに戻ると全然違います。まさにここ!ってやつです。

つまり、インバウンドの爆買いによって利益を得ているのは家電量販店や百貨店をはじめとした首都圏の小売り業、サービス業と首都圏の経済です。このインバウンドという政策は、地方や地域の為として事実上機能していません。

にも関わらず、多くの地方自治体がこのおこぼれを得ようと収入にみあわないコストをかけていたりします。しかもわざわざ高単価が取れる商品やサービスを安く提供しようとしたり、時には補助金や圧力等で民間に値下げや付加サービスを要求し、この値下げ競争を激化させ、地域と国内のさらなるデフレ加速に手を貸してしまいます。

☆日本は衰えたという現実を知らない

マクドナルドのビッグマック指数という経済指標がありまして、世界の先進国ではビッグマックが日本の1.5倍~2倍。円安が進行する今はそれ以上の格差にもなるわけです。なので、こうした国の人々は給料も日本の1.5倍~2倍以上なわけでして、日本にくるだけで「物価安!」「なにこれ毎日半額セールじゃん!」という状態なわけです。

その認識がないので、そこからさらに値下げして「良いものをより安くたくさん!」という昭和中期のような価値観でおもてなしをしても実りがありません。向こうにとっては5割引か6割引レベルでありがたみが薄いですし、一方の国内の企業利益は損なわれ、現場にいる地方、地域の人々は時間を奪われ、ただ消耗し疲弊するだけだからです。

コペンハーゲンは「そんなこと無意味だし、民が幸せじゃないことはやらないよ!」って宣言した。そのことがつながって見えるかと思います。

加えてなによりも「安さ」を求めてくる人ってどういう性格や個性になりやすいか考えたことはありますか(かつて、日本の今の70代、80代くらいは一度は旅の恥はかき捨てと海外でやらかした人も多いでしょう)?

そう。傲慢な金持ちそのままにわがままで、クレームつけて、値切って、買い占めて転売して、よその国でハラスメント三昧を展開する。そんな人々をこの国に自ら呼び込んでいるだけなんです。実際、ゲストハウスサミットでも少なからぬオーナーから「東京のカプセルホテルがこのくらいの設備でこのくらいの値段だから値下げしろ!」みたいなことを言ってくる外国人客が多くて疲れる・・なんて話はよく出ていました。

というわけで、こんな間違いだらけの「観光」認識で、民を幸せにするという目的を忘れた「観光政策」をやっても意味がないのです。

というわけで次回に続きます!

*今回のおススメ


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