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日々の雑感 day63【歴史は繰り返す。SONYに学ぶ今②】

菅総理の退陣表明が話題になっていますね。次の総理にふさわしい視点という意味でも、前回、今回のSONYの歴史に学ぶ事は有効だと思います。

では行きましょう!

☆「期待」より「批判」から始まる

平井CEOの船出は風当たりの強いものだったと記憶しています。記事でも

【「ソニーがテレビをやめるか、平井が辞めるか。どちらが先になるか見ものだな」 2012年の社長就任以来、これでもかというほどのバッシングにさらされてきた】

と触れられていました。ただ、個人的にはとある施設で就任直後の平井CEOをお見かけしたことがあります。

それは、CEOの運転手が駐車案内のスタッフに「SONYの車だぞ!」的に横柄な態度をとり、その瞬間に後部座席の平井CEOがその言動を叱責し、スタッフに謝罪の姿勢を見せたシーンでした。

この時に「この人は違うのではないか?」との印象を受けて、運用先として少し応援させてもらった事は今でもよく覚えています。

【世界中の拠点を回ってタウンホールミーティングを開いて社員たちに語りかけてきた。その数は70回を超える。だいたい毎月1度は世界のどこかの町でタウンホールミーティングを開いてきた計算になる。(中略)ソニーが目指すのはKANDO。お客様に感動を与える製品やサービスをみんなで創り出そう」ということだった。これはトップが直接伝えるしかない。(中略)トップは伝えたいことを直接現場に行って語りかけなければ目指す方向性はなかなか共有できないと思う。社内報やビデオメッセージでは、残念ながら伝わりきらないのではないだろうか】

平井CEOの経営とは「対話の旅」でもあったわけです。

【製品とサービスを輝かせる。そのためには社員を輝かせなければならない。私は音楽業界を皮切りにゲーム業界、そしてソニーへと転じるたびにターンアラウンドという仕事に奔走してきたが、そのすべての過程でこのグループが持つ力に感動させられてきた。だからこそ、それらを輝かせることが私の仕事であると再認識するようになった】

☆「止血」よりも「土壌再生」

〇「ユニークな商品を、リスクをとって『出していい』ということ、そして『出すことが評価につながる』ということも言い続けている」
〇「レコード会社が新人を10組出したら、当たるのは2組。そんな、全部当てるような百戦錬磨のプロデューサーなんていない。だからチャレンジすべきだ」

この2つは、平井氏の経営姿勢を明確に示している。成功の種は社内にある。だが、どの種が大きく育つかは分からないし、途中でうまくいかなくなることもある。だから、ソニーのような企業にとっては「種を増やし、芽が出る量も増やす」ことが重要。赤字=出血を止めるのは育てられる土壌を回復する為であり、単純な縮小均衡に陥ってはならない

これらの記事からは、対話を経て働く人々を仲間と変えて、SONYという巨大なコミュニティを形成していく平井CEOの姿を見る事が出来ます。そして、平井CEOがただ口だけではなく挑戦できる環境の整備。その為の投資と成長の促進を実行した事も見逃せないでしょう。

単年や一時的な成功体験を得るとそれを「続けたくなる」心理も生まれます。ストリンガーがアメリカにいたまま日本の会社を経営したことはまさに「会議室から現場を指揮し、人を数字やモノのように扱う」病でした。

この点で平井CEOが選択した言葉と行動は真逆のモノであったと言えます。まさに原因論で止血作業をやり続けるのではなく、目的論で土壌再生をした・と言えるでしょう。その中で面白いなと思ったのは、

【「机の周りが汚くなった」一見悪いことに思えるがそうではない。エンジニアや企画者の周囲にいろいろな開発事物が転がっていることを「許す」ことで、社員同士のコミュニケーションや新しい発想が生まれやすくなった……というのだ。それまでは、パーティションで区切られ、秩序だった美しさを求められ、結果として業務からずれた話で盛り上がって発想が生まれることは少なかったという。多産多死・試行錯誤を許すのは余裕があるからであり、発想は混沌から生まれる】

の一節。実は雑談が出来る職場の方が生産性が高いことがわかっています。デスクや部署の見た目は綺麗でも、メールやチャットのアラームが鳴り続け、上司や同僚が一時間に何回も声をかけてくるような職場は「集中力」にとっては最悪なのです。

ですので、複雑で重要な課題に1人で向き合える環境と緩めている時にアイデアやリカバリーを促す雑談やお茶がある環境を場として備えている事が、集中力のON/OFFにとってより効果的なわけです。形式、見栄より「実」が大事という事。今の SONY は人員を減らしながら生産性を大きく向上させた数少ない企業の一つです。

☆国でもLOCAL や小さな街でも同じ

この国のリーダーと言われる人々や行政機構の方々は、自分達自身の国や自治体やそこに住む人々や積み重ねてきた歴史、風土が持つ可能性自体を信じていません。そして、常に遠い場所のどこかにいて姿が見えず、上下関係の中で一方的に命じる事を好み、平井CEOのような双方向の「対話」を実行する人は希少。つまらない話を長時間、一方的に話すことが政治家らしさと思うおじいちゃんが圧倒多数です。

そして一方、私達は自分自身に平井CEOを感動させたSONY社員のような「熱量」を内に秘めていると自ら言えるでしょうか?

アフターコロナでこの国が、この地域が、この小さな街が立ち上がる為には、この両方がSONY規模でなくとも必要とされる。そのことは言うまでもありません。

適切なリーダーを選択する事も大事ですが、私達はこの選択が思い通りの結果となるようにコントロールする事は出来ません。しかし、私達は自分自身の熱量を磨き、自分自身の方向性をコントロールすることは出来ます。

しっかりと言いたい事をリーダー達に伝え、反応、選択をする。そして、それ以上に、自分自身の人生を律していくことに「自らの熱」を使うことが不可欠と言えるでしょう。

今の時代、私達の未来を指す選択肢は無数にあり、世界中を指し示しています。その何を選ぶかも私達自身が、自分を知り、自分で決めることです。よりベターな選択をしていく為にも、変化する自らを知り、律し、また磨き、と繰り返すことに他なりません。

その積み重ねの時間が、次の時代における自身の未来を確実に変えていくことでしょう。



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