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コーチング Note【プロコーチ向けLogic・感情と向き合う②】

前回は感情との向き合い方。特にネガティヴな感情に対する考え方(マインドセット)とそのメッセージへのアプローチが主眼になりました。

要点として振り返るなら、感情は、良し悪しと認識するのではなく「役割」として見つめ、言語化するということですね。

この前提を確認したうえで、今回も進めていきましょう!

☆ポジティヴ感情こそ「役割」を見つめたい

皆さんは、ポジティヴ感情を無条件に「良い」ものとしてきたことが多いかと思います。しかし、コーチとしてその「役割」に注目するならば、何事も表裏一体。そのデメリットについても目を向ける視点、視座が必要になってきます。

実際、クライアントがポジティヴでとてもよい状態だと認識している。そしてコーチとしてクライアントに共感している。そんな時には、クライアントが見落としていても私達には見えている。その部分が必ずあります。

そして、ポジティヴな状態で人は概ね「夢想家」のような状況にあることが多いでしょう。だからこそ、コーチはその関わり方としてより肯定的に、クライアントがよりクリエイティヴになれるように関わっていきます。このプロセスを愛するコーチも多いのではないでしょうか。

ここで実際に起こった話から共に考えていきたいのですが、2011年の東日本大震災時にとある「炎」のコーチが多くの若者に触れ、そのコーチに触発され、一定割合の若者たちが被災地に楽観行動の状態でやってきました。

☆目標なし、プランなしのリスク

「行動変容」に価値観をおく人は、こうした状態になりがちです。夢想し、楽観するとことで「行動」を起こしやすい状態をつくろうとする傾向があるケースをよく見ます。「考えるな」とか「感じたままに」という言葉が大好きで、言語化をおろそかにしやすい傾向もまたよく見受けます。本人に自覚もないことが多いのですが、外から見れば【行動教の信者】のような状態であり、目標が目的化している状態とも言えるでしょう。

この結果、楽観行動で被災地にやってきた若者たちには様々な被害が発生していました。とんでもなNPOに利用され、消耗させられて疲弊してしまったり、右も左もわからないまま自分勝手な正義で行動し、支援すべき被災者に逆に迷惑をかけていたりと。

それで結局、口コミやボランティア同士のヘルプで僕のところに相談に来るようなケースが何件もありました。当時の僕は特にプロコーチであったわけではありませんが、PFA(サイコロジカルファーストエイド)を実践する状態で日々、何十人もの被災者の方々の話を傾聴していました。ですので、彼らの話にも耳を傾けられる状況にあった。そのことは今でも良かったと思っています。

☆夢想家だけでは人生を歩けない

後に #宮越大樹 さんから学び、こういうことかと腹落ちしたのが上記動画の部分。ディズニー・ストラテジーにおける夢想家・現実家・批評家という3つの自分と対話をしていく手法でした。

暑苦しいくらいの熱量で夢を見させる個性、力は尊重すべきものですが、それだけではプロコーチとしては不十分です。

夢を見たら神様が勝手に夢を叶えてくれる・・、そんな世の中ならだれもこの現実の中で苦しんだり、あがいたりする必要すらありません。思い通りにいかない、簡単ではない。そんな人生を進みながら、願いを自らの力で形にしていく。そこにこそ、人生の価値があるんだと思います。

ですので、コーチとしてはただ共感していくだけではなく、時に現実を見つめる相手の心の声にもマイクを渡し、時に批評をする相手の心の声にもマイクを渡していく。そんなコントロールのタイミングをつかんでいく必要があるわけです。

というわけで、有料パーツを含む具体化の部分は次回としましょう。

そのうえで改めて見返してもらいたいのですが、さきの「炎」のコーチはコーチとして根本的なものが欠落していました。それは、コーチの名乗りながら、自分以外の人が持つ、その人だけの選択権に不当に介入したということです。

コーチングは相手を操る為にある技術ではありません。迷っている人に自分の正義を押し付けるものでもありません。十分なリソースを引き出し、俯瞰する。そして、相手の選択を見守る。その態度こそが、そもそもの基本であるわけです。相手が変わるのは、コーチとして相手が変われるだけの状況やリソースをつくり、選択の勇気が持てる状態になった結果。決して、コーチが洗脳するかのように相手の選択をしたり、相手に答えを押し付けることではありません。そこはゆめゆめ、間違えないようにいきたいものですね。

☆&私見ですが

コーチングやカウンセリングという技術において、一般的にいわゆるこうした「火」とか「熱」。あるいは「鉄」「鋼」とか「ダイヤ」といった燃焼や金属をメタファーするのってあんましピンとこないんですよね。

というのも、私たちはいの一番に心理的安全性を目の前の誰かと構築しなければいけないわけで、皆さんは初対面で暑苦しすぎる相手とか妙に鉄面皮な態度の相手に安心、安全の心理を獲得することが出来るでしょうか?

PFA(サイコロジカルファーストエイド)の視点からも、コーチのありかたは「水」が一番だと思っています。

水は変化できますよね。熱くもなれば冷たくもなり、点の集積となって固いものに穴を穿つことも出来れば、川や海にも変わる。蒸気となり、霧や雲となって漂うように存在することも出来ます。相手にあわせて変化していけるこうした「水」のコーチングスタイルを基本とすることをおススメしたいかなと思うわけです。

そして上記のような火とか金属とか強烈な表現。その裏腹にあるのは、その人の内側にある弱さの象徴でもないかなと感じたりもします。火が酸素や燃料がないと燃えられなかったり、金属も溶けたり、壊れたりする弱点も持ち合わせているわけです。そういう弱さを隠し、さらけだせない在り方の人であるなら、コーチとしては不十分。まず、自分をオープンに、弱い部分もまた受容していくことをと思うわけです。

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