見出し画像

相手に伝わる心理学「メルケル首相のメッセージが素敵すぎるその理由」②

さいさんです。今日は前回からの続きで、中盤のメッセージを見ていきます。

演説はこちら
演説原文はこちら
翻訳はこちらの方のページを参照させて頂きました
 

☆「必要な助けを得るための4ステップ」

既に購入された方もいらっしゃるかおしれませんが、ハイディ・グラント先生は「必要な助けを得るための4つのステップ」として、

1・相手に気づかせる
2・助けを求めていると相手に確信させる
3・助ける側が責任を負わなければならない
4・助ける人が、必要な助けを得られる状態でなければならない

としています。今日はこの4つを意識しながら見ていきましょう。

【私がここで言うことは全て、連邦政府とロバート・コッホ研究所の専門家やその他の学者およびウイルス学者との継続審議から得られた所見です。世界中で懸命に研究が進められていますが、コロナウイルスに対する治療法もワクチンもまだありません】
 
メルケル首相の指針は明確ですね。自分の判断基準は疫学者による最新の情報と見通し。「科学的証拠とその仮説」に依るのだと伝えています。そして、現状に解決方法がないことも率直に示しています。

「失敗の本質」で分析された太平洋戦争において敗走を転進と言い訳し悪影響が拡大したように、危機やリスクを伝える時は、誠実に、客観的に現実を伝える事はとても大切です。

【この状況が続く限り唯一できることは、ウイルスの拡散スピードを緩和し、数か月にわたって引き延ばすことで時間を稼ぐことです。これが私達の全ての行動指針です。研究者がクスリとワクチンを開発する為の時間です】

【また、発症した人ができる限りベストな条件で治療を受けられるようにする為の時間でもあります。ドイツは素晴らしい医療システムを持っています。もしかしたら世界最高のシステムの一つかもしれません。そのことが私たちに希望を与えています。しかし、わが国の病院もコロナ感染の症状がひどい患者が短期間に多数入院してきたとしたら、完全に許容量を超えてしまうことでしょう。これは統計の抽象的な数字だけの話ではありません。お父さんであり、おじいさんであり、お母さんであり、おばあさんであり、パートナーであり、要するに生きた人たちの話です。そして私達は、どの命もどの人も重要とする共同体です】

ここもとても分かりやすいですね。私達のMissionは薬やワクチンが出来るまでの時間稼ぎであり、発症した人の生存確率を上げるための戦いであるということが、誰にも理解できます。

そして、ここでも「内集団」の効果がある想像をさせていますね。顔の見えない誰かではなく、顔の見える身近な誰かを救う事なのだと伝えている。

この段階でステップ1~3は完全にクリア。
気づかせ、助けを確信させ、助ける側の責任も説明できています。

加えてメルケル首相は、医療施設で働く、最前線にいる全ての方々、スーパーマーケットなどで働く顔の見えない市民に対しても繰り返しで感謝を伝えています。最前線にいる民に対するリスペクトの姿勢が本当に一貫していて、本当に素晴らしいです。

画像1

実はステップ3はこうした政治や大企業のリーダーにとっては、とても難しい箇所でもあります。というのも、不特定多数に同時に訴えることで、

「自分でなくても良い」

という個々の責任感が薄まる効果があるからです。
東日本での災害に西日本の人々がドライになりやすいように、西日本の災害に東日本の人はドライになりやすい・と言えば想像できるでしょうか。

会社の全体メールや行政の配布物にも同じことが言えて、読まれない、見られないのは読まない側の問題ではなくて、こうした心理バイアスを考えずに発信をする出し手側に大きな課題があるのです。

ここをクリアする為にメルケル首相は、丁寧に依頼し、内集団の効果を使って自分が貢献する「たった一人」を想像させている。

この事は本当に見習いたいですね!

☆ 有効性をもたらす三要素

こうした丁寧な積み重ねは、ステップ4の鍵となる発信の「有効性」でも重要です。有効性とは、

1・求めている助けがどんなもので、それがどんな結果をもたらすかを事前に明確に伝える
2・方法は相手に委ねる
3・小さな進捗を伝える(フォローアップ)

によって構成されています。3はこれからの話しなので、ここでは

「1が出来ているから、2が成立する」

ということを確認しておきましょう。例えばですが、1がよくわからない状態でどこぞのリーダーが小中学校を休校にしたとします。

そして、その本来の目的は「致死率の高い高齢者への感染を防ぐ」為の拡散防止策だったとしましょう。

しかし、現場のリアルをきちんと理解し、説明が出来ていなかった。
その為に、働く親達の姿を想像も出来ずにただ丸投げした。その結果、子供達を祖父母に預ける共働き家庭が続出してしまいました・・なんてことも起こるわけです。

あるいは先週末にうちの長野でも、高齢者の運転する他府県ナンバーの車両を多く見かけました。桜の花見に来たようですが、正直、誰の為に自粛しているのか・と思いますし、こうした都市部からの移動で感染が全国に広まっては意味もないと思うわけです。

*2012年の古い本ですので、中古かメルカリでどうぞ!

このように、1を間違えると、2を委ねてもただの丸投げ。「目的」を共有できていない為に、誰もが発言者の意図と異なる選択をして悪影響が拡がってしまいます。

ゆえに発信には丁寧に、誠実にということが求められますし、その結果として悪影響が生じた際には、誤解をした側が悪いのではありません。

メルケル首相はこの点でも本当に気を付けています。
わかりやすく「目的」を示していてもなお「全員の力が必要だ」と市民にお願いをしています。そして、

【一人一人の行動が大切なのです。私たちは、ウイルスの拡散をただ受け入れるしかない運命であるわけではありません。私たちには対抗策があります。つまり、思いやりからお互いに距離を取ることです。ウィルス学者の助言は明確です。握手はもうしない、頻繁によく手を洗う、最低でも1.5メートル人との距離を取る、特にお年寄りは感染の危険性が高いのでほとんど接触しないのがベスト、ということです】

と具体策を明確に伝えていきます。
かくして、聴き手に対するステップ4もクリアになっていくわけです。

次回はいよいよ終盤、まとめの部分ですね。
 
早めに上げます。ではでは!

画像2


ありがとうございます。頂きましたサポートは、この地域の10代、20代への未来投資をしていく一助として使わせて頂きます。良かったら、この街にもいつか遊びに来てください。