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業界のリアル「テレビ局の裏側」

こんにちは、ナカムラです。今回は「テレビ局の裏側」という書籍を紹介したいと思います。

2009年出版の書籍なので情報は古いですが、テレビ局(放送業界)の実態が生々しく描かれており、現在のテレビ局がどんな歩みを経て来たのかを、当事者の視点から知ることができます。

今回は、テレビ局のビジネスモデルと、私が個人的に興味深いと思ったテレビ局の裏情報を紹介したいと思います。

1)テレビ局のビジネスモデル

テレビ局の収益構造
まず、テレビ局(放送業界)の収益構造について触れておきたいと思います。テレビ局には、①放送ビジネスと②放送外ビジネスの2種類が存在します。

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①放送ビジネスとは、企業の広告宣伝を行なうコマーシャル放送を指します。我々にとっても馴染み深いTVCMや、番組の中で商品を紹介するタイアップと呼ばれるものがあります。即ち、収益源としては企業の広告宣伝費です。

他方、②放送外ビジネスとはコマーシャル放送以外のビジネス全体を指し、テレビショッピング、イベント、映画、アニメなどが該当します。映画のエンドロールで「〇〇製作委員会」の中にテレビ局の名前が入っているのを見たことがある方や、フジテレビの「お台場合衆国」に参加したことがある方がいるかも知れません。それらがテレビ局にとっての放送外ビジネスになります。こちらは一般消費者から得る収益が中心です。

2009年当時の動きとして、各テレビ局が②放送外ビジネスを重視するようになっていったと言います。その背景としては以下の理由が挙げられています。

・報道機関としてスポンサーに左右されない放送を行なう
・広告の価格/量は景気に影響されやすい
・コマーシャル放送できる枠数には上限がある
・インターネット広告による侵食

消費者感覚だと「どんどん視聴率が下がって儲からなくなってるから」という理由が分かりやすいですが、テレビ局は”報道機関”であり”広告媒体”であるため、公平な放送を行なうこと””制作費を払ってくれるスポンサー(広告主)の顔色を伺うこと”の間で揺れ動く力学が働いている訳ですね。

また昨今では、放送/放送外に加え、業界全体として通信ビジネスへの参入が進んでいます。地上波ではなく、インターネットを経由してコンテンツを配信するサービスですね。

代表的なものが民放公式のテレビポータル『TVer(ティーバー)』。日テレ・テレ朝・テレ東・TBS・フジの在京キー局が共同で立ち上げた動画配信サービスです。

時間や場所に縛られない視聴体験をテレビコンテンツでも実現することで、地上波の低調から脱却し、新たなスタンダードを作る動きが進んでいます。

TVCMにも色々ある
少し戻って、①放送ビジネス、特にTVCMについてもう少し細かく触れたいと思います。

TVCMには「タイム」と「スポット」の2種類が存在します。

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まず「タイム」について。「この番組は〇〇社の提供でお送りします/ご覧のスポンサーの提供でお送りします」というアナウンスを聞いたことがあると思います。そのアナウンス+番組放送枠内でのCM放映をタイムCMと呼びます。

タイムCMのスポンサー料金は制作費と電波料金からなり、これを1社だけで提供する「1社提供」と、数社でシェアする形があります。前者は単独での提供ですから、スポンサー企業の意向が番組内容に反映されやすいそうです。(スポンサー料金は数千万円~単位)

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この構造を見ると、視聴率が上がれば上がるほど宣伝効果は高まるので、スポンサー料金を値上げできそうな気がしますが、それをやると視聴率が下がった時にも値下げに応じなければならないので、簡単に値上げはできないそうです。

続いては「スポット」について。スポットはCMを流す番組を指定するのではなく、時間帯を指定して買い付けるCMです。「時間帯を指定する」と聞くと「こっちがタイム(時間)じゃない?」という印象を受けますが、番組提供で長期間に渡って出稿するのではなく、2週間とか1ヶ月など特定の期間(スポット)を決めて出稿することからこう呼ばれています。

指定した時間帯のあらゆる広告枠に出稿されますが、特に「番組と番組の間に流れるスポットCM」をステーションブレイク(ステブレ)と呼びます。

スポットCMの料金は、タイムCMとは異なり「延べ視聴率(GRP)」と「パーコスト」によって決まります。

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※このGRP(Gross Rating Point)は世帯視聴率を元に算出されていますが、2018年4月から、関東エリアでは個人視聴率を元に算出するTRP(Target Rating Point)が買付単位になっています。(参考リンク

最近ではスポットとタイムのいいとこ取りのようなCM商品もあり、SAS(Smart Ad Sales)と呼ばれています。15秒CMを1本から買い付け可能で、番組と日時を指定できる商品です。この買付方法を活用した運用型TVCMと呼ばれるサービスもあり、非常に伸びている市場です。対応している放送局が限定的、空き枠しか買えないなどの制限はありますが、CMの新しい在り方として注目を集めています。

2)テレビ局の裏情報

ここからは、本書に記載されている「テレビ局の裏側」をいくつかつまんで紹介します。

●CM間引き事件
90年代に「CMを受注しておきながら放送しない」という「CM間引き事件」が発生。某放送局では5年間で2,400本の未放送が発覚。当時は放送有無を検知する仕組みがなかった為に起きたようだが、現在は技術的にクリアしているとのこと。

●お詫び企画
テレビ局が番組内でスポンサー企業に対して失態を犯してしまった場合、事を収めるために「お詫び企画」を実施することがある。スポンサー企業の商品が何度も登場する番組を放送するというものだ。タイアップとの違いは、無償であることと、商品を紹介するのではなく登場させるという点。

●ヤラセと演出
「〇〇警察密着」などの番組で、警察の出動シーンが登場することがあるが、一部ではテレビ局側が警察にお願いして「出動訓練」を撮影させてもらっているらしい。ヤラセと演出の境界線はむずかしい。

●テレビ局のコストセンター
テレビ局において最も予算を必要とするのはタレントへの出演料…ではなく、報道。災害などの緊急時において報道特別番組を放送できる体制を維持することが求められており、膨大な人員配置、機材の確保、海外支局の維持、出張費などで予算は青天井。

3)最後に

13年前の書籍なので、歴史資料的に読ませてもらいましたが、内部の人間にしか見えない角度で描かれており非常に刺激的でした。

13年間で、より一層テレビ業界は厳しい状態に追い込まれ、自ら古い慣習・価値観を破壊し、新たな道を作ることが求められています。

コネクテッドTV(インターネットに接続したTV)の普及が50%を超えてきて、いよいよテレビの在り方が大きく変わる時が来ているように感じますし、映像コンテンツ大好き人間としては非常に楽しみでもあります。

現代版・テレビ局の裏側が出版されたら、是非読んでみたいと思います。

以上、業界のリアル「テレビ局の裏側」でした。最後までお読みいただきありがとうございましたm(_ _)m

ナカムラ

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