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幸福と経済の心理学~行動経済学のいちばん大事なところがわかる!

私たちは、日々いろんな悩みを抱えて生活をしています。

「なかなか早起きができない」
「いまいちやる気がでない」
「夢が見つからない」
「漠然とした不安がある」

そんな悩みに通じているのは「幸せになりたい!」

ではないでしょうか。

でも“幸せ”になるにはどうしたらいいのか、よくわからないのが正直なところですよね

ということで今日は、幸福への第一歩。自分の心の仕組みを知っていきましょう!


「そもそも“幸せ”ってなに?」行動経済学の3つの法則!

幸せになりたい。けど、幸せってそもそもなに?

“幸せ”と一言にいっても、基準は人それぞれ。迷うのも無理はありません。そこで助けになるのが行動経済学

【行動経済学】
行動経済学とは、経済学の数学モデルに心理学的に観察された事実を取り入れていく研究手法である。 行動経済学は当初は主流派経済学に対する批判的な研究として生まれたが、1990年代以降の急速な発展を経て米国では既に主流派経済学の一部として扱われるようになった。

ウィキペディア(Wikipedia)より


……と小難しく書かれていますが、簡単に言うと人の幸せや喜びの感じ方を実験を用いて明らかにしたのが行動経済学です。


それまで“幸福”は、哲学者や心理学者が哲学的な視点で語ってきただけでした。
ですが、その中で“幸福”を含む人間のさまざまな行動を、心理学の理論や分析の手法を使い解明していく学問が登場。さらに、2002年にダニエル・カーネマンという心理学者がノーベル経済学賞を受賞し、そこから行動経済学の黄金時代が始まりました。

“人間の心がどうなっているか”を形式化することにより、さまざまな法則が明らかになりました。

これらの法則によって、私たちの“幸せとは何なのか”がわかってきたのです。

今日はその中でも、自分の幸せを考えるのに欠かせない3つの法則「参照点」「限界効用逓減の法則」「損失回避性」をお話します。

この3つを抑えると、“幸福”というものが具体的にわかります。

人生の幸福度が一気に上がりますし(こんなことって他にそうそうありません)、今までのいろんな謎が解けると思います。

行動経済学は本当に偉大です。


1つずつ見ていきましょう!


法則Ⅰ:参照点 【私たちは基準点からの±がすべて】

私たち人間は「幸せか?幸せじゃないか?」を全て参照点を基準にし、そこからのプラスマイナスで判断しています。

参照点ってなに?となると思いますが、

参照点とは、我々が物事を考えるときの基準のことです。


こんな面白い話があります。

あるところに贅沢な暮らしをしたいと思っているが、平々凡々な生活をしているたかし君がいました。

そんなたかし君にある日突然、ランボルギーニ、一等地にある瀟洒なマンション、そしてものすごくきれいなパートナーに、それらしい肩書と地位、大勢の部下を渡しました。

そしたらたかし君は大変幸せそうで、とても喜んでいました。
微笑ましいですね。

そして一週間たったので、それら全部を返してもらうことにしました。

こうしてたかし君は元の生活に戻りました。

さてたかし君の表情はどうでしょう?
あれ、なにやら前より浮かない顔をしています。

元の生活に戻っただけなのに、以前よりずっと不幸そうです。

なぜなのでしょうか?


この秘密が、参照点です!!!

たかし君が不幸になったのは、参照点が移動してしまったからなのです。


参照点1


自分の力で手に入れたわけではないものが、ただ元に戻っただけ。合理的に考えたら、プラスマイナスゼロです。

ですが、与えられる・以前よりも不幸に感じてしまいます。

それは参照点が(つまり基準が)、ランボルギーニが与えられていた時になってしまうからです。

参照点2

ランボルギーニという参照点を基準に、取り上げられマイナスになってしまった分不幸に感じてしまいます。

参照点は必ず、直前の物事になります

なのでたかし君は元の生活を基準にして考えることはできないのです。

他にも、このような経験はないですか?

安いホステルで生活した後、自宅に帰ってくると「家って最高だな~!」と思う。今まで自宅でそんな幸福を感じることはなかったのに。

これは参照点が自宅ではなく、ホステル生活に移動したためです。
参照点であるホステルと自宅の差によって幸福感を感じたのです。

つまり私たちは、参照点との差でしか幸福を測れないのです。

これにはさらに面白い話があるので見てみましょう。

こんどは人間関係です。

人と比べ悲しくなるのも参照点の仕業

自分の幸福度を測るのに重要な参照点。

やっかいなのは、物や自分の状態に対してだけでなく、自分に権利があると感じることに対しても参照点の位置が変動してしまうことです。

ここである実験をみてみましょう!

▼実験:猿の平等概念
あるところにお猿さんがいました。
そのお猿にきゅうりを渡すと、ポリポリとおいしそうに(勝手な主観ですが)食べてくれます。

ですが条件を変えて、今度は隣の猿に猿の好物であるところのバナナを渡して、その猿にはきゅうりを与えました。
そしたらどうでしょう。
なんときゅうりを食べていた猿は怒って、きゅうりを投げ出しました!
ウキーーーーーッ!!

いや、あんた今まで美味しく食べてたでしょうが!!

さて、なぜこんな事が起こるのでしょうか?

これは、きゅうりを食べていた猿が「自分もバナナをもらう権利がある!」と思い、バナナが参照点の基準になったためです。

猿も権利の主張ができるんですね~。

さる

これは、人間も同じ。

例えばボーナス。同僚が100万円をもらったと知ると、参照点は「同僚がもらった100万円」になります。

その参照点を基準に、自分が多くもらった分は利得になるし、少なかった分は損失になってしまいます。


人は、「同僚が100万をもらい、自分は80万をもらう」より「自分だけがもらえる70万」を選んでしまう。

利得や損失は絶対的なものだと思いがちですが、実は参照点からのプラスマイナスでしかないのです!

難しいものですね。猿の心も人間の心も!!

そりゃ普通に生きてたら不満足な心になるわけです。

法則Ⅱ:限界効用逓減の法則 【喜びはどんどん減っていく】

年々増えていく仕事の量で、毎日終わるころにはヘトヘト。だからこそ、仕事終わりに飲むビールは格別!そんな方も多いのではないでしょうか?

でも、最初の一杯から二杯、三杯、四杯……杯数を重ねるごとに、一杯目の美味しさとは同じように感じられません。しまいには、胃もタプタプでもういらない!なんて思ったり。

このように喜び=効用は、量と共に減衰していきます。

限界効用逓減

1万が2万に増えるありがたみは大きいけど、100万が101万に増えてもそこまでのありがたみは感じられません。

最初は少ない量で大きな効用を得られるけど、重ねていくごとに得られる効用はどんどん少なくなってしまう……。これが、限界効用逓減の法則です。


特に日本での生活は、この状態に陥りやすいのです!

食べたいときに食べられる、住む場所も整っている。私たちは常に満たされているので、幸せを感じる幅が実は少なくなっているのです。

▼小話:じゃあ褒め言葉もたくさん言わない方がいい?
 確かに、褒め言葉も限界効用逓減の法則が当てはまります。ですが、現代社会は自己肯定感を無理矢理下げられてしまう機会が多いので、たくさん褒めても効果があります◎
ただし、プレゼントなどは逓減していくので注意!


法則Ⅲ:損失回避性 【損はしたくない!心のカラクリ】

人の心は、“利益=嬉しさ”より“損失=悲しさ”を大きく捉えます。

ここで一つの例をみてみましょう!


あなたは、コインを使った2つのギャンブルを持ち掛けられます。

▼ギャンブル①
・コインが表になった→150万もらえる
・コインが裏になった→100万支払う
▼ギャンブル②
・まず、参加費として100万支払う
・コインが表になった→250万もらえる
・コインが裏になった→なにもなし

あなたはどちらのギャンブルを「やってみようかな」と思いますか?

コイントス

よく考えると、実はこの2つのギャンブルは同じ条件です。だけど、印象がぜんぜん違いますよね。「②だったらやってもいいかな」と思う人が多いのではないでしょうか。


なぜこう感じるのか?それは、損失回避性が深く関係しています。

▼ギャンブル①
・コインが表になった→150万もらえる
・コインが裏になった→100万支払う

このギャンブル①は、もしコインが裏になったら支払わなければならない100万が、心の中で損失として強烈に意識されます。


一方こちらのギャンブル②。

▼ギャンブル②
・まず、参加費として100万支払う
・コインが表になった→250万もらえる
・コインが裏になった→なにもなし


ゲーム前に参加費として支払う100万は、心の中で損失として計上がされないので、参加しやすくなります。このようなカラクリが、人間の心のなかで働いているのです。

利率を考えれば、①も当然やった方がいいギャンブルです。しかし、もらえる150万より、失う100万を強く意識してしまう。

これが損失回避性です。人間の脳はとにかくリスクが嫌いなのです。

悲しみは喜びの★倍強い!?

それではこのコイントスのギャンブル。あなたは、もらえる額が何万だったら「よしっ!やってやるぞ!」と思いますか?

・コインが表になった→〇万もらえる
・コインが裏になった→100万支払う

300万?500万?……1000万という人もいるかもしれませんね。実はこれ、あなたの損失と利益の基準の置き方を知ることができます。

例えば仮に、「もらえる額が500万だったらやるぞ!」と思ったとしましょう。もらえる額500万・失う額100万だとしたら、“プラスの500万”と“マイナスの100万”の感じる効用が同じ=悲しみは喜びの5倍強いということになります。

人は平均して、200万円もらえるならこのギャンブルをやると答えるそうです。

つまり悲しみは喜びの、およそ二倍は強いのです。

このように負の出来事は私たちの心にとても強烈なインパクトを与えます。
嬉しいことがたくさんあっても、たった一つの嫌なことで全部吹き飛んでしまうのです。
これは仕方ないことです。

脳がそうなっているので!!

損失回避性は人間が進化し存続する上で必要な本能だったからです。
遥か昔、人がライオンの領地に踏み込んで怖い目にあったとします。その時に感じた悲しさや恐怖をすぐ忘れてしまったら、どうなるでしょうか。

再びライオンの領地に踏み込み、食べられてしまったでしょう。こうして楽観的な脳を持った先祖たちは淘汰されていきました。
しかし悲しみや恐怖を強く心に覚えることで、二度と同じ過ちを犯しません。こうして生き延びてきた人類の子孫が我々なのです。


このように進化の歴史に由来する本能で、損失回避性は私たちの心に自動的にプログラミングされているのです。


▼小話:国によって損失回避性の大小は変わるの?
十分にありえます!たとえば戦争が頻繁に起こっている国と、平和な日本。どちらに住んでいる人が、よりリスクを回避するでしょうか?


正解は日本に住んでいる人。すでに持っているものが多い人のほうが、失うのをより怖く受け止めます。参照点の話にもつながってきます。


損失がかかったとき、人はギャンブラーになる

もう一つ、損失回避性に由来するお話をしましょう。

あなたはそれぞれのルーレットで、A・Bのどちらを回しますか?

▼利益ルーレット
A:確実に9万円もらえる
B:90%の確率で10万円もらえる
▼損失ルーレット
A:確実に9万円損する
B:90%の確率で10万円損する

選んでみてください。

アンケートをとると、多くの人が選んだのはこのようになりました。

▼利益ルーレット
A:確実に9万円をもらえる←こちらを選ぶ人が多い
B:90%の確率で10万円もらえる
▼損失ルーレット
A:確実に9万円損する
B:90%の確率で10万円損する←こちらを選ぶ

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これも損失回避性による、「損は0にしたい!」という人間の本能からです。確実に9万円損をするより、リスクをとって損をしないかもしれない10%に賭けてしまう。

人間は損をするとき、ギャンブルに走りがちなのです。

つまり、それほど損失を避けたいということなのです。

仕事のミスもそう。「後輩が仕事のミスを隠していた!」なんてことはないですか?これも起きたミスをなかったことにしたい本能から。後にバレて更に怒られるリスクがあるのをわかりながら隠してしまうのです!


まずは心の仕組みを知るのが、幸福への第一歩!

いかがでしょうか?

心の幸福に関する、行動経済学3つの法則「参照点」「限界効用逓減の法則」「損失回避性」をお伝えしました。

▼まとめ
・私たちは参照点という基準からしか幸福を測れない
・満たされるほどに得られる喜びはどんどん減ってしまう
・心に強く残るのは“嬉しさ”より“悲しさ”
・人は損をできるだけ0にしようとする


このように私たち人間は、普通に生活をしているだけで幸福度が下がっていきます。

金持ちであればあるほど、得られる幸福度は下がるし
先進国であればあるほど、得られる幸福度は下がります。

小学生のときにもらう1000円は大金ですが、大人になった私たちは、1000円では当時ほど喜べません。恋愛も、相手に求めるにものがどんどん増えていきます。


「普通に過ごしているのに、なんだか辛い。」これら3つの法則を知ると、今幸せを感じられない理由が少し見えてきますよね。

でも大丈夫!これらの法則を知っていると、自分の感情の変化について、より明確に理由を考えられます。理由が明確にわかると、より効果的な対処法を探せます。

まずは仕組みを知る。これが重要です!

自分の幸せについて考えるとき、ぜひ行動経済学の知識を参考にしてみてくださいね。

さて、次回はこれを踏まえた上で、どのようにすれば幸福を獲得できるかということを解説していきます。

がんばりましょう!!!!!

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