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はじめて買ったCDのお話

 初めまして。こんな事を言うのも、この記事が僕のnote初投稿になります。

 色々と書きたい事もあり、興味のある記事を探したり既存のクリエイターの皆様をフォローしたりする中で、さてどうしようかと考えているとnoteのトップページのあるお題企画に目が止まりました。「#はじめて買ったCD」。これから多くの文章を書いていこうと思っていた矢先に、僕にとって非常に丁度いいテーマを見つけました。一体どのくらいの人数がこんな僕の初投稿を見つけ、あわよくば評価してくれるかは分かりませんが、一つ、腕試しも兼ねて発信していこうと思った次第です。よろしくお願いします。

1. はじめて自分で買ったCD

 結論から言うと、僕がはじめて買ったCDはMr.Childrenのオリジナルアルバム「SENSE」でした。

 これは2010年の暮れに発表されたミスチル16作目のアルバムで、ミスチルファンの方なら分かると思いますが、前後のアルバムと比べるとやや異色な作品です。前作の「SUPERMARKET FANTASY」(2008年発売)というアルバムは、映画「恋空」の主題歌となった「旅立ちの唄」、NHKの北京オリンピック番組テーマソングだった「GIFT」に代表されるように、全体として溢れんばかりの幸福感・ポップ感を感じられる作品です。それから2年、長い沈黙と奇抜なプロモーションの中で発表されたSENSEは、シングルCDからの収録曲は1つも無く(ダウンロード限定のシングルは1曲ありました)、2000年代で培われてきたミスチルの「温かい」イメージとは離れたものでした。一方で、収録された「365日」「ハル」「Forever」のような柔らかいバラードソングもクオリティが高く、バンドサウンドを全面に出したロックチューンと共に、そのバランスが実に絶妙に混ざり合ってミスチルのまた新たな名盤となりました。

2. いざ購入!

 人の音楽の趣味というのは、幼少期はやはり親の影響が多分にあり、僕は特にその傾向が顕著でした。幼稚園児から小学生・中学生に至るまで音楽を聴く機会が最も多かったのは車の中で、園児・小中学生の時に流れていたのはYMO・平松愛理・T-SQUARE・EPO・Original love・竹内まりや・・・といった具合に、当時の流行(まるまる2000年代ですね)とは場所を異にするアーティストの皆様が主でした。勿論、当時聴いていた音楽は今でも大好きですが、他にもたくさんの楽曲が流れる中で、一際中学生の僕の胸を打った1枚のアルバムがありました。真っ青のジャケットに白いゴシック体で「Atomic Heart」。Mr.Children 4枚目のオリジナルアルバムであり、現在に至るまでミスチル最大の売上枚数を記録したアルバムです。「innocent world」や「Cross Road」を中心に、その収録曲全てが思春期だった僕にすっと入り込み、いつの間にか僕を「ミスチル教」信者にさせました。そこから「他の曲も聴きたい!」と強く願ったのは当然の流れでしょう。

 そんな中発売されたのが「SENSE」でした。これは2010年12月の出来事ですので、その時僕は中学3年生でした。絶好のタイミングだと感じ、高校受験が終わった時に購入しようと決意しました。今思うと、碌に過去の代表曲やアルバムを聴かないでいきなり最新アルバムを買おうというのはなかなか勇気のある行動ですが、「最新作」として世間から注目を集めていた本作品にそれほど惹かれていたのでしょう。購入したのは2月の下旬頃だったと記憶していますが、その日に感じた高揚感と緊張感は今でも忘れません。「自分で欲しいと思った音楽作品を買いに行く」。広いカテゴリで見ればCDも文化作品であり芸術作品です。それを自ら吟味して、(親から貰った小遣いとはいえ)お金を出して購入する。それだけで少しだけ大人になれた気がしたのです。

 今となっては可愛らしいお話ですが、わざわざCDを買うのに親に許可をもらって、当日も「今日はCD買うから」と一言加えてから学校へ向かいました。午後に学校が終わり、向かったのは相鉄線二俣川駅近くのCDショップでした。お店に入り、シアンとマゼンタが混じった独特の色彩とクジラが跳ねているジャケットを探し出し、見つけ次第即レジへ。そこで3000円ほどを支払い、包装され袋に入れられたその1枚を大切に学生カバンに詰め、「早く聴きたい!」と心の中で繰り返しながら帰宅しました。家にはまともなオーディオ機器は無かったので、パソコンに早速ディスクを挿入し、iTunesに曲をインポートしながら、歌詞カードを眺めながらスピーカーから聴こえてくるのは1曲目、Am6コードをかき鳴らすギターとドラムの織り成す硬いサウンドだったのです。

 始めの曲が流れた時、「聴きたい」という緊張が解けて「聴く」に精神が傾く瞬間。聴くにつれて増幅する満足感と高揚感。そんなカタルシスを、この時初めて経験しました。その後、当時買ったばかりのiPod touchに12曲を入れ、僕自身による音楽人生がここから始まったのです。ミスチルを始め、様々なルートを通じて気になったアーティストのCDを集め、聴き、趣味の幅を広げていく・・・。そんな今でも続ける音楽趣味の原点がこの時でした。

3. 消えゆく「はじめて買ったCDは?」という質問

 ここまで僕個人のエピソードを簡単にお話ししましたが、この「はじめて買ったCD(世代によってはレコード)は何?」という質問は最近ではピンと来ない人が多いようです。何かのサイトの会員登録をする際に「秘密の質問」を予め登録しておくことがありますが、「母親の旧姓は?」「一番嫌いな食べ物は?」「卒業した小学校の名前は?」といった問いに並列して「はじめて買ったCDは?」という質問も当然のように存在していました。あるいはラジオのDJ紹介やプロフィール欄にこの質問があったり、「定番の質問」というのが僕の中での認識でした。

 しかし、2020年2月10日に日本テレビで放送された「月曜から夜ふかし」では、インタビューの結果、新成人の3割近くが「CDを買ったことがない」という事実が判明しました。この新成人達は1999年生まれなので、小学生の段階で2010年代に突入していて、思春期を迎える頃にはとっくに音楽業界は「ダウンロード時代」となっていたのです。これから時が経つにつれて、この潮流はどんどん加速していくでしょう。

 音楽を手に入れる手段としてCDは買わなくなり、ダウンロード、今はApple musicやSpotifyのようなサブスクリプションが主流になりつつありますが、この現状は僕は非常に寂しく思っています。時代の流れと言ってはそれまでですが、実物かそうでないかの違いはあまりに大きいです。レコードが密かにブームになっていますが、その違いを克服できない表れなのかもしれません。家で寝転がりながら、スマホを片手に月に何百円か払えば18世紀のクラシック音楽からジャズ・ロック・知り合いのインディーズバンドの歌さえ聴くことが出来る。大変便利なお話ですが、僕がかつて経験した、外でCDを買ってから再生機器に読み込ませて音が聞こえてくるまでに感じる緊張感、その後の高揚感を、多感な少年少女時代に覚えづらくなってきているのは、「時代の流れ」の一言で片づけられてしまうには余りに惜しいです。

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