#017 『トイ・ストーリー』とタクシー会社の意外な共通点
『PIXAR<ピクサー>世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』を読みました。そこから学んだことを整理すると、アニメーションスタジオとタクシー会社の以外な共通点が浮かび上がってきました。
アニメーションと実写映画の違い
アニメーションには「持越費用」というやっかいな問題もあった。持越費用とは、制作の作業をしていない社員にかかる費用だ。たとえばアニメーションの作業が終わり、アニメーターの仕事がなくなっても、給与は払わなければならない。ピクサーのように会社が小さいと、持越費用で利益など吹っ飛んでしまう。
この問題は、実写映画では発生しない。プロデューサーや監督から、俳優、カメラ、エキストラなど関係者を制作のたびに集めるからだ。彼らにお金を払わなければならないのは制作にかかわっている間だけで、あとの面倒は見る必要がない。
アニメーションスタジオでは、スタッフの長期雇用が前提になっています。キャリアの初めから終わりまで同じ会社で仕事をする人も少なくなく、彼らの人件費をカバーするために、映画制作のパイプラインをうまくコントロールすることが求められます。
一方、実写映画はプロジェクトベースで進められます。映画ごとにキャスティングが行われ、制作陣の顔ぶれも変わります。ですから、映画がクランクアップしたあとは、彼らに給料を払わなくて済むわけです。
実写映画の打率は2割
多くの人は、映画の製作ほど楽しく、儲かるものはないと思っている。たとえば『スター・ウォーズ』など、1100万ドルの初期投資により、4年間で1億5,000億ドルもの利益を上げていたりするからだ。しかしながら、自己満足が得られるだけのことが多いのも事実である。
実際、劇場用映画10本あたり6本から7本は採算割れ、1本がとんとんと言われている。
実写映画で利益が出るのは10本中2本だけです。それでも成り立つのは、前述の通りプロジェクトベースで固定費負担が少なく済むからだと言えます。
アニメーションスタジオではよりシビアな計画が求められるので、ピクサーでは財務モデルを組み上げたそうです。
収益予測の元になるファイルを弁護士事務所から受け取ったとき、著者は「表計算ソフトのファイルでこれほどぞくぞくする日が来るとは思ってもみなかった」と振り返っています。
タクシー会社とライドシェアアプリの関係
アニメーションスタジオと実写映画の構造的違いは、タクシー会社とライドシェアアプリの関係にも当てはまります。
タクシー会社では、タクシー車両を保有し、ドライバーへの給料を継続的に支払う必要があります。長期雇用が前提ですから。
一方、ライドシェアアプリでは、利用客とドライバーのマッチングを行うだけです。そこで得たマッチング手数料が収入源です。車両を保有することも、ドライバーに固定の給料を支払うことも不要なわけです。
そうしたライドシェアのビジネスモデルが評価され、2019年にUberがIPOを行った際には、時価総額が9兆円にも達しました。多額のシステム投資が必要になり、Uberはまだまだ赤字状態を脱することができていませんが、少なくともそのビジネスモデルは高い評価を受けていることが分かります。
ハリウッド映画とライドシェアアプリには以外にも構造的に近しいものがありました。
今回は以上です。
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