函館の内側性 ー地元という意識をつくる境界ー_4
6.戻りたいと同時に、逃れたい場所
"そんなに函館が好きなら、ではなぜあなたは函館に暮らさないのか"
そんな問いをこれまでに何度か投げかけられたことがある。
その度にどう答えたらいいのか、これまでよくわからなかった。
僕がいま函館を離れ、千葉に暮らしているのは、本当は函館が好きで戻りたい気持ちがあるけれど、仕事や諸々のやむを得ない理由があるからだろうか。
少し考えてみるけれど、多分そんなことではない。
僕の函館への感情は愛というよりは、愛憎に近い。函館の懐かしくあたたかい記憶を辿ると、その次の瞬間には函館で感じていた不自由さがよみがえる。
『場所の現象学』には、僕のこれまでの感情をこれ以上ないほどよく表す、次のような言葉がある。
僕は確かに、函館の外側にいるときには、函館のことをいつも想い、帰りたい気持ちでいるけれど、いざ函館に帰郷し何日か過ごすと、薄暗い慣習の海に浸かるような不自由さを覚え、そこから逃れたい衝動を自分の中に感じるのだ。
きっと、僕はこれからも函館に戻りたいと思うと同時に、函館から逃れたい気持ちを抱き続けるのだろう。
つまり、僕はこれからも函館という境界に縛られ続けるのだ。
函館の内側もしくは外側、どちらにいるにしても。
*
終わり
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