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『羽生世代』の天才棋士を引用して想う、《誕生月》に関する考察

小学生の時、学年が上がると、新しいクラス名簿が配られた。そこには住所、電話番号(自宅に電話のない家もあったが、次第に減った)、そして、生年月日がかかれていた。
私は、クラスの誰が何月生まれなのか、ということに興味を持った。

当時、2歳上の姉が読む「少女フレンド」「セブンティーン」など少女雑誌の終わりに近い場所には『星座占い』的なページがあったが、そのせいではない。
誕生月とその人となりに何か相関があるのではないか、という単なる好奇心が出発点だったろうと思う。

統計的にデータを取り、解析したわけではないので、思い込みもあると思うが、小学生時代の数年間で、ある『傾向』に気付いた。

── 9月生まれ前後に頭の良さそうな男子が多いのである。

これは、必ずしも成績がいい、というようなことではない。成績は悪くはないが、勉強家では決してなく、表現するのが難しいが、『才気煥発型』とでも言ったらいいのか ── 例えば、授業中はもちろんだが、学級会で意見を求めると手を上げて発言したがる児童 ── その中には立派な意見ばかりではなく、『ウケ狙い』も多分に含まれたりしているけれど。

おそらくは高校に上がる頃から誰が何月生まれだなんていうデータも公表されなくなり、意識もしなくなった。

再び、この『9月生まれ才気煥発説』を思い出したのは、将棋界で10代半ばの天才たちが続々とプロ入りし活躍するようになった1980年代後半である。
後年、『羽生世代』と呼ばれることになる、1969年から1971年生まれのグループだった。
当時彼らは、「チャイルドブランド」とか「アンファン・テリブル(恐るべき子供たち)」などと呼ばれ、既に彼らより年長のプロ棋士から恐れられていた。
そして、恐れられていたとおり、それから約20年間、羽生善治永世7冠をはじめとするこの世代数人が、棋界タイトルをほぼ独占する時代が続くのである。

Wikipediaで『羽生世代』を調べると、10人の棋士が名前を連ねる。このうち、棋界最高のタイトルである『名人位』または『竜王位』を獲得したスーパー棋士は5人いる。
生年月日順に挙げれば、

1.佐藤康光九段
(名人2期、竜王1期などタイトル13期;永世棋聖)
1969年10月1日生まれ

2.丸山忠久九段
(名人2期などタイトル3期)
1970年9月5日生まれ

3.羽生善治九段
(名人9期竜王7期などタイトル99期;19世名人)
1970年9月27日生まれ

4.藤井猛九段
(竜王3期;私が最も尊敬する棋士でもある)
1970年9月29日生まれ

5.森内俊之九段
(名人5期竜王2期などタイトル12期;18世名人)
1970年10月10日生まれ

驚くなかれ、この世代で大活躍した棋士が生まれたのは、9月上旬から10月上旬までに集中している。

このことに気付いた人が他にいるかどうかは知らないが、小学生時代の個人的分析と相俟って、確信に近いものに変わった。

もちろん、彼らよりかなり前の同レベル棋士、舛田幸三3冠(3月生まれ)大山康晴15世名人(3月)谷川浩司17世名人(4月)はこの時期に生まれていない(ただし、中原誠16世名人は9月生まれ)。
彼らよりかなり後の同レベル棋士、渡辺明永世竜王(4月生まれ)豊島将之元名人・竜王(4月)藤井聡太8冠(7月)もそうではない。
ただし、3月、4月が多いのは着目していいだろう。
そして、時代とも関係しているのかもしれない。

同学年クラスの中で《しっかり者→優等生》として育てられやすいのが体格的知能的経験的に優位である4月や5月生まれではないか、という仮説を述べたところ、

夏木さんからコメントをいただいた:

計算すると7月に種付けすれば4月に産まれますので、日本の祭りが夏に行われることが多いのも、案外理に適っているのかもしれません。

夏木凜さんからいただいたコメント

では、9-10月生まれの種付け時期は?
── そう、歳末&正月である。

この時期は、夏祭りをはるかに凌ぐ、いわゆる《ハレ》のシーズンのはず。
その時期の『種付け』が『才気煥発型』を生むメカニズムはよくわからない(いろいろ想像はできる)。
ただ、時代と関係しているのは、なんとなくわかるような気がするのである。

『羽生世代』のはるか以前に3-4月生まれの天才棋士が目立つのは、ひょっとしたら、夏祭り重要説と関係するかもしれない。
そして、『羽生世代』よりだいぶ後に4ー7月生まれの天才棋士が目立つのは、《優等生》記事中の議論と関係するのかもしれない。

今、フッと、今日たまたまテレビで見たノーベル賞受賞者の山中伸弥先生を想い出し、生年月日を調べてみた:

はたして ── 1962年9月4日でした。

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