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失敗など想い出しつつ帰路へ(高校時代への小さな旅 【4/4】)

母校近くを歩きながら、トイレ窓から夜校舎に忍び込み演劇の準備をしたこと、多かった遅刻数の処置……など想い出す。

校舎を通り過ぎると小さな公園があります。
いや、記憶の中ではとても小さかったが、今やフェンスに囲まれたグラウンドまであり、明らかに面積を広げている。

この公園で想い出すのは、高校2年の時、友人(♂)と授業をサボり、かといって特に行くあてもなく、この公園で煙草をふかせながらダベっていた時のこと。

フェンス以外にも、遊具の位置などかなりの変化がみられる。

遠めに、交番勤務らしい警官がふたり、公園脇の道路に自転車を停めたのが見えた。こちらに近づいてくる。
「あ、ヤバいかも」
そう思った時にはもう、逃げるどころか、あわてて煙草を消すのが精いっぱいだった。
「君たちは高校生か?」
ふたりとも、当時クラスに3分の1ほどいた私服登校組だった。
「いえ、そこの高校を卒業して、今、浪人中です。先生に会いに来て、帰るところです」
とっさにそう答えた。
「年はいくつだ?」
「19歳です。すみません」
干支えとは?」
警官は年齢が疑わしい時には即座に干支えとを尋ねる、と聞くが……本当だった。
「**です」
2才上の姉の干支えとをよどみなく答える。
警官は手帳を出して確認し、
「合ってるな」
と呟いた。
そして、
「こんな所でタバコ吸ってる暇はないだろう! 頑張らないと、次も落ちるぞ!」
声を少々荒げた。
「はい、すみません!」
── そして、我々は解放された。

この間、すべて私が応答し、友人はずっと黙っていた。
警官の最初の問いかけに対して私はほぼ反射的に、
([高校2年/17歳*授業サボり]はかなりマズイ)
かといって、
([20歳以上]は間違いなく嘘とバレる)
と判断し、この中間の
([浪人生/19歳*教師に会った帰り+未成年喫煙を謝罪]
あたりが真実味もあり、タバコ年齢まで1年の誤差範囲内)
と踏んだわけです。
ふたつ上の干支えとを知っていたのはラッキーでした。

さて、問題はここからです。
警官が去った後、友人からの《感謝》を待っていると、彼は冷たく言いました:
「お前なあ、よくもまあ、あんなにペラペラと平気で嘘がけるもんだ。俺はお前を軽蔑する」
── これには驚きましたね。
「何言ってんだよ! オレがああやって話したから問題にならなかったんじゃねえか!」
しかし、彼は、
「あんな風にウソを言うくらいなら、捕まって学校に突き出された方がマシだ!」
そして、衝撃を受けたままの私を公園に残し、学校に帰って行きました。
(……だったら、警官の前で、それはみんなウソだって言やあいいじゃねえか)

半世紀近くが過ぎた今、けれど再度同じ思いを抱きつつ、公園を横目に大曾根まで歩きました。

当時も地下鉄は大曾根まで開通していたので、なんらかの理由で、
「今日だけは遅刻できない!」
という日には、余分の交通費を払ってバスから地下鉄に乗り継ぎ通学したものです。
名古屋市北区の大曾根は、国鉄(当時)中央線、名鉄瀬戸線、そして地下鉄名城線の各駅が一堂に会しており、賑やかなアーケードもあり、体育祭の後はこの中の縄のれんに入って打ち上げをしました。
と、ここまで書くと、先ほどの公園の件も縄のれんの件も、私服通学だからできるわけで ── 制服には確かに、「高校生らしからぬ行動」抑制効果はありますね。

さて、JR大曾根駅です。今はその上が何やら立派な高層住宅になっていますが、当時はかなりボロな平屋の駅でした。

駅の上に住んでいる人もいるわけだ!

高校時代の部活・ワンダーフォーゲル部で恵那山など中央線方面の山に登る時は、この駅が集合場所になります。

ある時、集合時間より、30分ほど早めに着いたので、駅前のパチンコ屋(今はない)で時間つぶしに打ち始めました。もちろん電動化前の時代です。
これも「マーフィーの法則」でしょう、こんな時に限って大当たり、どんどん玉が出てきます。
チューリップが開き、このチャンスを逃すわけにはいかない!と集合時間が来ても打ち続けました。

結局、もうこれが予定の電車に乗るぎりぎり、と後ろ髪引かれながら駅に戻った時には、キャプテンはじめ全員、怒り心頭でした。

── いろいろありましたね、未熟ゆえの失敗が ── 今更ながらですが。
私の場合、反省しても、結局あまり性格は治っていない ── ということは、たぶん、心底は《反省》していないのでしょう。

でも、《過去への小さな旅》、悪くなかったです。
結局、この頃からジジイになった今まで、人間の本質はあまり変わっていないのかもしれません。
旅にお付き合いいただき、感謝申し上げます。


〈了〉

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