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《優等生》って、ホメてる?

価格が長年安定し『物価の優等生』と呼ばれてきた食品にも値上げの波が及び始めた、というニュースをこの1年、何度か見ました。
長期に渡り値段が変わらなかった食品として、卵、もやし、バナナが挙げられるそうです。

けれど、卵は今年、鳥インフルで大打撃を受けました。

もやしも、主原料の緑豆と燃料費の高騰で低価格の維持は限界だそうです。
『物価の優等生』なんて呼ばないで欲しい」
生産者は言っています。

バナナも昨年の夏ぐらいから上がり始め、小売価格は1年で1割以上上昇したようです。こちらも円安と輸送コスト高騰から必然なのでしょう。

ジジイが子供の頃、遠足に持ってきていいおやつの上限は合計100円でした。記憶が正しければ、昭和40年前後の話です。
「果物はどうなりますか?」
たいていそう尋ねる女の子がいて、先生は黒板に換算表を書いたものです。

みかん=10円
りんご=20円
バナナ=30円

驚くなかれ、りんご1個よりバナナ1本の方が高かったんですね ── 当時は国光こっこうのように小ぶりのりんごしか出回っていなかったとはいえ。
上記1 kgのバナナ小売り価格から換算したバナナ1本あたりの2023年8月の全国平均は1本50円程度なので、インフレを考慮すれば、この半世紀の間に、実価格は相当下がっていることになります。

ちなみに、
「果物はどうなりますか?」
と尋ねる女の子は、たいてい几帳面な性格で成績も良く、かつ、クラス委員のような『重責』を務めており、男子が掃除をサボってふざけていると、すぐ先生に言いつけるたぐいの《優等生》でしたね。
(……そんなこと、いちいち聞くなよ。聞いたら、守らなくちゃならなくなるだろ……)
なんて思っている我々のことなど、まったく考慮せず、うっかりすると、
「せんせーい、タニくんったら、お菓子80円分にバナナとみかん、持ってきていまーす! 違反してまーす!」
なんて密告されたりします。

── という例でもわかるように、《優等生》という言葉は必ずしもいい意味で使われてはいない。

私は人生で他人から《優等生》と呼ばれたことはほとんどないけれど、長い会社生活の中で年齢が近いある人に、
「タニさんのような《優等生》にはわからないでしょうが……」
と言われて驚いたことがあります。
その根拠はまったくわかりませんでしたが、その人は何らかのコンプレックスを抱えていて、その裏返しとしてむしろ私をおとしめるためにその言葉を使ったのだろう、ということは推測できました。

鶏卵の生産者も、もやしの生産者も、血の出るようなコストカットや生産性向上策の結果として小売価格を維持してきたにもかかわらず、《優等生》なんてホメ殺しにも似たレッテル貼られた末に、やむにやまれず値上げしたら、
《優等生》だったのに、どうして!?」
── やってられないでしょうね。

「《優等生》なんて勝手に呼ぶな! ホメてないって!」

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