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マインドフルネスの次を行く『ACT』という心理療法

こんにちは、DeepApex株式会社(ディープエイペックス)代表取締役の市川 駿です。

近年瞑想やマインドフルネスという言葉が一般的にも使われるようになり、皆さんの中にも一度は瞑想やマインドフルネスについて聞いたことがあったり、実際に体験したことがある人も増えているのではないかと思う。今回はマインドフルネスの一部として使いつつ、心の健康を維持回復させる心理療法の『ACT』というものについてnoteを書く。

■注意点
このnoteは私が受けたzenplace academyのオンライン講座を元に記載しております。今回のnoteに記載することはACTのほんの一部分であるので、しっかりと学びたい方は最後に紹介する書籍を参考にしてみてください。


✅ACTとは

アクセプタンス&コミットメント・セラピー/トレーニング」(Acceptance and Commitment Therapy/Training)とは、アメリカ人のスティーブンヘイズ先生によって開発されたマインドフルネスの考え方をベースに「心理的柔軟性」(Psychological flexibility)を生み出すことで「心の健康」を維持・回復させる療法のこと。「Acceptance and Commitment Therapy」の頭文字をとって「ACT」(アクト)と呼ばれる。ACTは、苦悩のように個人のコントロール出来ないものをアクセプト(受け容れ)し、自分の求める生き方を自覚し、生活を豊かにする方法を提供するものである。
(参考:https://www.earthship-c.com/psychology/acceptance-and-commitment-therapy/

ACTに取り組むことにより、心の柔軟性(嫌な感情が現れても冷静にそれを受け流すことができる、自分の本来の目標を見失うことなく成長するような心の持ち方)を高め、例え困難な事があっても大切な事に取り組める様になることを目指すことであり、うつ病などの精神疾患の治療だけでなく、精神疾患の予防、糖尿病の治療、そして仕事のパフォーマンス向上等にも用いられるメソッドである。アメリカではメジャーリーグの選手へのトレーニングとしても使われているようである。またドイツでは一番売れているビジネス書はACTの開発者のスティーブンヘイズ先生のACTの書なんだとか。

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あの有名な書『サピエンス全史』にも、地球上で人間が一番支配的で発達した動物となれたのは、”言葉”を通じて体験や経験を共有できるからであると書かれている。言葉による疑似体験というのが人間だけが持っている能力であり、非常にパワフルなのである。ただこれが諸刃の剣でもあり、言葉は負の面も持っているACTは言葉の負の面をできるだけ弱めて、言葉の良い面を上手に使うためのトレーニングなのである。

講義の中で例示されたのが、目をつぶって梅干しを食べるという話を先生である医師の方がしていた。人間は梅干しを想像しただけで唾液が出るし、酸っぱい顔をする。これは”人は言葉を通じて体験ができる”という証拠である。実際には梅干しを食べていないのに、唾液が出て、酸っぱいものを食べた時の顔をしている。これは人間だけができることで、人間に近いチンパンジーですらできないことである。動物は直接体験したことからのみ学ぶが、人は言葉を使うことで、直接体験していないことでも理解できる。言葉があることで、想像できたり、問題解決したり、共通認識したり、感情の言語的な共有をしたりできる。マインドフルネスや瞑想では、「今ここ」にだけ集中せよということが言われるが、動物は言葉を持たないので今この瞬間だけを生きているのである。人間は言葉を持っていることにより未来を考えるという能力を持っている。

このように言葉は未来を考えたり、想像することに使うことにより人類の大きな発展に繋がってきた。一方で、過去への後悔、未来への不安、人との比較、自己批判、体験の回避、強いては自殺等を引き起こすものでもある。ACTではこれらの言葉の負の面をできるだけ最小限にして、良い面を上手に使うことを目的としている。

⊹ACT MATRIX

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ACT MATRIXという図(上記例参照)があり、これを埋めていくことにより自分の外側の行動と内側の感情に気づくことを促す。そしてどのように物事を捉え、自分にとって本当に重要な人や事に向かうべきであるのかをMATRIXの中身を埋めることで整理することができる。

【MATRIXの記載の仕方】
手順1.

左下に「あなたにとって重要な人・事」を記載する。
ここで大切なことが1つある。それはこの大切な人の中に自分自身を記載することである。
手順2.
左下に「あたなが大切な人・事を行う時に現れる不愉快な思考や感情」を記載する。
手順3.
左上に「あなたが2の思考や感情が現れたときにする行動」を記載する。
手順4.
手順1で記載した大切な人や事に向かう行動を記載する。

人は短期的な結果を求めていく傾向にあるので、ついつい左上の嫌なことを回避する方向に流れてしまう。動物は特にそうで60秒以内の結果に行動が左右されるらしい。ダイエットがなかなかできないというのは非常に良い例だと思う。甘いものが食べたいとなり、短期的には食べることで美味しいし、ストレス解消になる!という方が多いと思うが、長期的に見ると元々の目標である体重を減らすという目標を達成できない。このように人間はMATRIXの左下の不快な思考や感情を和らげ、すぐに得られる結果の方(左上)を優先してしまうのである。ACTの目的の1つは自分のこのような思考や行動の機能分析をできるようになることにある。心理的柔軟性を高めることで大切なことに向かえるようになる(MATRIXの右上)。そして精神科医の先生曰く、心理的柔軟性はトレーニングにより高めることができるとのことであった。

ただ1点注意が必要なのが、MATRIXの左下の不愉快な感情や思考というのが必ずしも悪いわけではなく人間にとって必要なものであるので、これらが自分の内側に起こってもそれを悪としないことが重要である。これが起こっているということを客観的に観察して、その感情や思考を良い方向のエネルギーに向かうようにするのが一番良い方法である。これが正に世の中で言われるマインドフルネスの考え方の部分である。

MATRIXの右上は長期的な結果を目指すために普段思考する時には、「しなければならない」ではなく、大切な事、大切な人のためにそれを自ら「選ぶ」という考え方が非常に重要である。

ACTというのは、困難な思考や感情を無くすために行うのではなく、それに気づきつつ、自分の本当に大切な方向に進んでいくためのトレーニングであるということであった。先生はACTはサーフィンに似ていると仰っていた。荒波に向かうことでサーフィンが上手になる。家でサーフィンの本を読んでいてもサーフィンは上手にならないのと一緒で、実際に荒波(困難)に立ち向かってこそ上手になるのであるということであった。良い考え方であるなと思った。

💡まとめ

今回受けた講義はACTのほんの一部分であり、様々なトレーニングがあるようである。今回の講義では本当に良い気付きがあった。
「長期の結果を考えて行動することが大切で、短期的な結果に逃げないこと。ACTにより心理的柔軟性高めて長期結果に向かっての行動をとることができる。」このような考え方を学べただけで今回講義を受けたかいがあったと思っている。私の好きな言葉の1つにモハメド・アリが言った下記の言葉がある。

I hated every minute of training, but I said, Don't quit. Suffer now and live the rest of your life as a champion.
(私はいつもトレーニングが大嫌いであった。でも私は自分自身に言い聞かせた。今苦労をしろ。そして残りの人生をチャンピオンとして生きろ)

私はずっとこの言葉が好きだったが、ACTの講義を通してこの言葉への思考プロセスが整理された。久しぶりにアハ体験をした気分であった。今まで自分が目標に向かって頑張れている時は長期結果や大切なもの・事を重視して行動できていたが、それがACTではフレームワークに則り整理されていて、自分の中でしっかりと整理できた。

📚ACTに関する書籍

今回先生から紹介のあった本を2つ記載しておく。ACTについて詳しく学習したい方は下記を読むと良いようである。


🔖参考サイト

今回記事を書くにあたり参考にしたのは受講したzenplace academyのACTに関する講義と下記の記事である。

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)をはじめる
アクセプタンス&コミットメント・セラピーのこれから
https://psych.or.jp/wp-content/uploads/2019/10/87-5-8.pdf


今後もマインドフルネス関連や様々な業界のことについてまとめていきます。弊社(DeepApex株式会社)では様々な企業のIT投資最適化コンサルティングを提供しております。


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