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黒猫様のお楽しみ vol.7

〈カマキリ事件〉
 ある日、ベランダに、カマキリがいた。
 当時は二階に住んでいたのだが、どこからか飛んできたのだろう。私はびっくりし、だが次の瞬間には「フラットに見せよう!」という気持ちに。
「ほらほら、フラット! カマキリだよ!」
 カマキリを目にしたフラットは「何だこれは」みたいな感じでおっかなびっくりそれに向かう。カマキリもびっくりしたのだろう。威嚇の態勢を取った。
 猫vsカマキリ! これは目が離せません!
 さあフラット選手。カマキリの前で手を上げ、手を下げ……人を振り返ります。何? どうした?
「なぁん」
 「どうすればいいの?」とでも言っているのでしょうか。好きにおし。
「なぁん」
 カマキリ選手、威嚇姿勢でゆらゆら揺れております。
「なぁぁん……なぁぁん……」
 フラット選手、何やら困ったように鳴き、ついにカマキリに手を出しました! カマキリも反撃を試みますが、さすがにサイズが違う。これは勝てそうにないと悟ったか、威嚇姿勢のままそろそろと逃亡をはじめます。フラット選手、それを見つめながらまた鳴き、よそ見を……お、よそ見をしている間にカマキリ選手、そろそろとその場を去っていきましたね。フラット選手、ただそれを黙って見送ります。
 ……地味な戦いだったなあ。私は楽しかったけど!
 あ、カマキリさんは、驚かせてごめんね。

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〈噛み猫事件〉
 フラットさんは容赦ない。
 いや、もちろん、猫という生き物が本気で噛みついたならもっと洒落にならないことになっているだろう。
 でもね。「甘噛み」というレベルは確実に超えて、彼は人に噛みついてくる。
 遊びの延長ではあるんだろう。甘えていたと思ったら急に戦闘モードになるというのは「猫あるある」であるようで、フラットもその例に漏れない。
 私がフラットを撫でて撫でて撫でて、ふっとやめると、彼は怒る。怒って噛みついてくる。もうこうなったら、また撫でようとしてもダメなのだ。完全に戦闘モードになり、牙を剥いて手のひらや腕にガブゥ!
「痛い痛い痛い!」
 人の悲鳴も何のその。猫は仔猫の頃にきょうだいと喧嘩して噛む力の加減を覚えると言うけれど、フラットにはそうした時代がなかったのだろうか。それとも、もう忘れちゃったとか?
 こっちも少しは我慢してみようと思うのだけど、耐えていれば牙はますます食い込んでくる。痛い痛い痛い! 騒いでも放してくれないので、半ばフラットの口をこじ開けて解放してもらうと、私の手にはくっきりと牙の痕がついているのでした。
 出血まで行ったことはないけど、痛いものは痛いので、どうかもうちょっと手加減をお願いします。

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〈噛み人事件〉
 そう、猫は仔猫の頃に「遊びで噛む」強さを覚えると言いますね。
 つまり、強く噛みすぎたらきょうだいや親がキレてやり返されることをくり返し、学ぶと。
 そこで、人は思った。
 猫に噛まれたら、人も噛み返せばいいのではないか?(ちょっとおかしい思考)
 まあ、試してみたわけです。実際には、試してみようかなと思った。
 噛みついてきたフラットを引き剥がし、その目の前でくわっと口を開いてみた私。
 するとフラットは。
 怒ったよね。
 見開かれる瞳孔! 飛んでくる猫パンチ! 痛い! 更に噛みつき! 痛い! ごめんなさい! もうしません!
 人は猫の前に、あまりにも弱いのでした。

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