見出し画像

好きな本たち

ブックカバーチャレンジというものが最近はやっている。

読書文化の普及を目的とした取り組みのようで、それぞれのSNSにてよく見かけるようになった。先日ちょうど友人から誘って貰ったのだけど、フェイスブックに投稿していくのは億劫な気持ちになったので、noteにて投稿しようと思った。純粋に自分の好きな本を誰かに紹介するというのは、とても楽しいものだと思う。

そしてルールが微妙だな、と思ったので勝手に変えていこう。本についてほんの少し触れつつ、表紙画像ではなくURLを貼ることにする。1日1冊ではなく、1日に7冊分をまとめて紹介することにしよう。

緩やかで平坦な道をゆっくりと歩んでいくような、そんな感覚の面白い本たちを集めてみた。値が張るものも多いので、図書館が開いたら、ぜひ借りて読んでみて欲しい。

こうした自分の好きな本や音楽を、まとめて紹介するような記事をよく書いていた頃が懐かしい。いまではめっきり書かなくなってしまったから、久しぶりの感覚だ。

同じように共感してくれる人がいると嬉しいし、また読んでくださったなら、感想を伝えてくれると何より喜びます。

気づけば大型連休も終わりを迎えようとしているが、家でゆっくりしている人にとって、読書にはうってつけの時間だったのではないだろうか。おいしいコーヒーでも飲みながら、素敵なひと時を過ごして欲しいと願っています。




Day 1
『日曜日はプーレ・ロティ』

ある頃、食に関するエッセイを無性に読みたくなって、いろんな本を読み漁っていたときに出会った。というのも、食べ物についてどうすれば上手に表現できるのかを勉強したかったのだ。

たくさんのエッセイを読んだけれど、この本はただ食を綴っているもの以上に、食を通して文化を知り、フランスでの日々の暮らしや伝えたいメッセージが感じられて、すごくいいなあと思った。文体が柔らかいので読みやすく、すらすらと最後まで読み終えられて、本を読み慣れていない人にもおすすめ。

ちょっとした不便があるからこそ、時間をかけるからこそ、豊かさを感じられる。そんなフランスの食暮らしを経て、私たちに自分なりのおいしい食生活の提案をしてくれるような、そんな一冊。



Day 2
『庭とエスキース』

この本に出会えてよかったと思えるような一冊に、あとどのくらい巡り合えるだろうか。北海道の丸太小屋で、豊かな自然とともに自給自足の生活を送る弁造さんとの日々を14年間にわたり綴った記録。弁造さんという、彼ひとりに焦点を当て、その人生を追う。ただそれだけが、美しいと思えるほどに心を揺さぶられるのだ。

弁造さんの愛らしさに心を奪われ、季節をめぐるごとに親しさを感じ、そして88歳を過ぎても画家として生きる夢を見る彼に、胸を打たれる。

暮らしのなかで、弁造さんから浮き彫りになっていく"生きる"ということを深く考えさせられる一冊だった。ほんの少しずつ、味わうように読みたい本。



Day 3
『郷愁』

ヘルマン・ヘッセが大好きで、彼の作品をたくさん読んでいる。『車輪の下』や『デミアン』が有名だけれど、個人的には彼の処女作であるこの『郷愁』か、『春の嵐』が一番好きな作品だ。

叙情にあふれた表現と、詩的な風景描写がならび、生きていくなかで抱える内面の葛藤、そして故郷への想いを綴った文章に浸るだけで浄福なひとときを味わうことができる。

ヘッセの作品を読むときは新潮文庫の、高橋健二さんの翻訳がもっとも古風ながら読みやすく、奥ゆかしい世界観を感じさせてくれるのでおすすめです。荒んだ心を、清らかな気持ちで満たしたい日に。



Day 4
『京都で考えた』

吉田篤弘さんの作品を好きな人は多いのではないだろうか。かく言う僕もその一人で、様々な本を読んでいるのだけど、お気に入りはこの一冊。どうやら僕は、取り止めのない人の思考が書かれた文章を読むのが好きなようだ。

ただ京都をふらふらと歩きながら、考えたことを記してある。それは山奥から溢れ出る水源のように、愉快な発見や日々の思考がするすると流れていく。読みやすくて、心地いい文章を眺めているだけで心も軽やかになってくるのだ。

どんな所おすすめなの?と問われると困ってしまうのだけど、ただ散歩をしながら、あれこれと想いを巡らせるお供にひとつ、いかがだろうか。いろんな気付きを得るための、きっかけを与えてくれる一冊。




Day 5
『断片的なものの社会学』

淡々として、取るに足らないようで大切な、人の生き様を切り取ったようなエッセイ。社会学者が実際に出会った人々には、それぞれの物語があって、彼らの人生があるのだ。

日常生活において無数に転がっている無意味なことについて、思いつくままに言葉として残された断片たち。何事もなかったような平凡で、ぼんやりとした生きるということを、ふと立ち止まって考えるきっかけを与えてくれる。

何一つ明快な答えを提示してくれる訳ではないけど、ただお守りのように大切に持っておきたい一冊。岸政彦さんの本はどれも面白いのでおすすめです。



Day 6
『暇と退屈の倫理学』

退屈とはなにか。暇は減っているのに、退屈は増えているのはなぜだろう。それらを様々な角度から見つめることで、作者と一緒に思考を深めていく一冊。何かを啓蒙する訳でも、ひとつの心理を提示してくれる訳でもない。ただ一緒になって考えるのだ。

難しい本はたくさんあるけれど、この本はそれらのなかでも、とりわけ読みやすい部類だと思っている。一緒になって考えていくにつれて、これからの時代を生きていくうえで大切な、消費のあり方をゆるゆると紐解いてくれるような、そんな気持ちにさせられる。

特にいまの社会状況において、みんなが余暇を楽しむという消費のあり方をいま一度見直すべきなのだろう。この本は、退屈が蔓延する日々から抜け出す、考えるきっかけを与えてくれるかもしれない。



Day 7
『おべんとうの時間』

不思議な本に出会った。ただひたすらに誰かのお弁当の写真が並び、どこの誰とも知らない人たちの日常が切り取られてある。すごくいいと思った。

まだ知らない仕事の魅力について、お弁当を通してその人たちの生活について垣間見ることができ、思わず和やかで温かい気持ちにさせられるのだ。家族があって、仕事があって、それぞれの暮らしがある。ただそれを見るだけで元気が出るような、そんな家族のおいしい物語。

調べてみると意外にとても人気の連載らしく、『おべんとうの時間4』まで発売されている。レシピが載ってある訳でもなく、清潔に彩られたお弁当という訳でもない。ただありのままの日常をこっそり覗くだけなのに、不思議だ。それぞれのお弁当のなかには、ちいさな人生の幸せが詰まっているのだった。



この記事が参加している募集

ここまで読んでくださってありがとうございます。 楽しんでいただけたなら、とても嬉しいです。