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閉店と、これから

『私のお店』と呼ぶには相応しくないけれど、2020年3月31日を持って僕の退職と同時に、ライトアップコーヒー京都店は閉店を迎えました。

2016年の10月にオープンしてから約3年半もの間、たくさんの方々がお店に足を運んでくれて、スタッフのみんなやお客さんと一緒に過ごした日々の数々は大切な思い出です。

月並みな言葉しか出てこないけれど、やっぱりお店を続けてきて思うことは、いろんな人に支えられてここまで続けられたんだな、ということに限りますね。

お店に来てくださっていたみなさま、本当にありがとうございました。

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凹凸ばかりの自分がきちんと社会人として働けていたのも、この会社があったおかげでした。ただ単純にコーヒーが好きで、夢中になって勉強しているとまだまだ知らない世界がたくさん見つかって。それを追い求めているうちに、気づけばローカルな大会で優勝し、お店のマネージャーとなっていて、ただ毎日好きなことに携わっているだけで本当に楽しい日々を過ごすことができました。

仕事の感覚としては、自分の好きな小説や音楽を友だちにおすすめしているのと同じようなものだったと思います。お店に立って他愛のない話をしながら、コーヒーを楽しむ。それだけのことが、かけがえのない日々であり、僕にとっての支えでもあったのです。

3年という月日はあっという間に流れていきました。その地域にコーヒー屋があるだけで、生活に彩りのある習慣ができ、客と店員という第三者としての関係性を築くことができます。季節の移り変わりや人の成長とともに、それぞれの歩む道をそっと見守りながら、たまに互いの近況報告をするような、そんな関係性を。

お店には高校生の頃から学生服を着て通ってくれていた子や、就活に悩みながらも、いま社会人として働いている子もいます。いつもゼリーをくれる、80を超えた元気なおばさまも、海外からの留学生の子も。みんなとは人生において瞬間での接点でしかありませんが、それでも確かな関係性であり、それぞれの生きる基盤にコーヒーが明るく照らしてくれていたのでしょう。みんな元気にしてるかな。

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僕たちの日常における消費行動は、何を応援し、支持したいのかという気持ちの表現でもあって、一杯500円もするコーヒーに対してその人なりに価値を見出してくれていたのだと思います。”コーヒーを飲む”ということ以上の”何か”を満たしたいと思うからこそ、お店に足を運んでくれたのです。

だからこそ、”何か”とは何かを常に考えなくてはなりません。こうした考えは、ちいさなお店を続けていたからこそ気づけたことでした。
  
そして自分なりに考えた結果、この”何か”を提供することは、いまの京都店では難しい環境にあると感じました。それこそが、退職を考えるきっかけの一つでもあったのです。結果的に退職に伴ってお店の閉店も決まりましたが、これでよかったな、と心のなかで安堵する気持ちもあります。たくさんの思い出が詰まったお店だったので、名残惜しさもやっぱりありますけどね。

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今までは、コーヒーを通して身近な人に豊かな瞬間を届けたいと思って活動してきました。ほんの一瞬でも明るく豊かな瞬間があれば、その瞬間の積み重ねが時間となって、やがて時間の集積はその人にとっての人生になっていくのでしょう。

だったら僕は、一瞬を信じて生きていきたいと心に決めています。一瞬でも幸福になれる瞬間を、コーヒーによって作り出せたら嬉しいですよね。

その気持ちはいまも変わりませんし、これからも地に足をつけて続けていきます。しかしながら今後はもう少し欲を出して、もっと様々な手段を持って、より多くの人に届けられるといいなあって思っています。豊かな瞬間に感じるプロセスは人によって違うために、いろんなアプローチのできる手段を身につけておいた方が面白そうだなって思います。

だからこそコーヒーという枠にとどまることなく、もっと広く食を知り、農業という視点を持つことを意識して学んでいきたいです。コーヒーも農作物であり、もっと産地と親しくなれば、伝えられることも、その手段もきっと変わるはず。

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お店とは開かれた空間であり、いろんな出会いがある場所です。食を通して、コーヒーを通して少しでも消費に対する価値観が変わるように。ただお店でモノを消費するだけでなく、背景を知り、自分の暮らしに馴染む豊かさを取り入れられるように。これからは提案していきたいと考えています。

どこかのnoteにも書きましたが、美味しさとは作り手と受け手の接点にしかすぎません。けれど、美味しいが満たされなければ接することもできないので、どれだけの思想が積み重なっていたとしても響かないでしょう。

僕たちが何を伝えたいか以上に、受け手が何を感じ、どう考えるのかが大切で、そうした知的好奇心も満たせるような体験を届けられたらいいなあ。

そのために、いま新しいお店の準備を進めています。
本当はもうオープンしている予定だったのですが、様々な社会状況から延期になりました。いまのところ5月末でオープンを再度予定していますが、正直これも難しそう、、

また告知できるタイミングでお知らせしますので、楽しみにお待ちくださいね。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

ここまで読んでくださってありがとうございます。 楽しんでいただけたなら、とても嬉しいです。