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電車

 最寄り駅が地下鉄で、中学高校大学と地下鉄を利用しているからか、JR、というか駅のホームが屋外にあったり窓から外の景色が見えたりすると非日常に感じる。改札を通っても空が見えて空気の肌ざわりが外のような、エアコンで調節されていない外気に触れられることは私にとって何だか少しおかしい。階段を降りれば冬でもマフラーがいらないほど暖かい地下鉄と違って、電車に乗りこんでも手袋の中の手はまだかじかんでいる。初めて行く土地に向かうときは、窓の向こうのビルの明かりや公園の緑が目まぐるしく流れていくのを見ながら、どこまで連れて行かれるのだろうという怖さや自分の知らないものがあふれていることへの怯えでいっぱいになる。そのくせ目が離せない。ずっと見ていなければ、どう変化していくのか追っていなければ、どうなっても自分のせいになってしまうような気がするからかもしれない。ただ唯一、冬、電車を降りた途端完全防備の上にしっかりと聞いたエアコンで少し熱くなった頬に、冷たい風が吹きつけるあの瞬間は結構好きだ。

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