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読書感想 ~逆ソクラテス~

 今年の7月から文庫本の小説を読み続けて今月で4か月目になります。真夏にエアコンの効いた部屋で読むのと違い、今は日差しと外の空気を肌にまとっても不快じゃないです。屋内外問わずに作品に目を通せる、これが正に読書の秋なのでしょう。

 さて、今回読んだ作品は伊坂幸太郎氏著の「逆ソクラテス」です。伊坂氏は有名作家のひとりですが、彼の作品を読むのは初めてです。けれど今作自体は前から知ってました。

 今年7月に夏の新潮文庫のフェアで読みたい作品を書店で物色していた時に目に留まだのです。夏の文庫フェアでは新潮社だけでなく、角川書店と集英社も展開していました。「逆ソクラテス」は集英社の文庫フェアで展開され、その中でもイチオシ作品で紹介されていたのを覚えています。その物珍しさから買ったことのない集英社の文庫を試してみたくなりました。


 今作は短編集で5話が収録されています。いずれもメインの登場人物は小学生で、学校行事や友達との関係性が主軸になっています。

 タイトルである「逆ソクラテス」は最初の一作目です。転校生の安斎はクラスメートが抱く先入観に疑問を持たせて、担任教師に一泡吹かせて、クラスに蔓延る先入観を払拭していきます。その過程で見れる安斎の言動には彼なりの処世術からくるものと感じられます。

 二作目の「スロウではない」はクラス内のいじめに踏み込んだ内容です。この話も転校生が大きく関わってきますが、意外な展開となり鳥肌が立ちました。いじめに関わる立場にある人の醜い感情とその因果に目を通すと、不愉快になったり登場人物に理解を示したくもなります。

 三作目の「非オプティマス」は新人教師の聡明さと思考の深さに脱帽します。説教という言葉の意味が身に染みます。社会の中で生きる時に、自分の言動が他人にどんな印象を与えるのかを意識したくなります。

 四作目の「アンスポーツライク」は学校や日常生活の中に猟奇的な事件が発生します。過去の後悔や人生のやり直しに対して、バスケットボールのルールが絡んだ上手いストーリー展開です。この話でも人に教え説くことの意味を考えさせられます。

 最後の5作目の「逆ワシントン」は真面目さや誠実さがテーマになっています。現実の社会では真面目な人間がバカを見るなどと悲しい現象が起きているけれど、最終的には正直な言動が勝るのだと思えるストーリーです。ただ、その善意を利用する人間もなかにはいるため、それに負けない強かさは持っていたいです。


 今作のような短編集は有名な作家の作品を本格的に読むきっかけになるのではと思っています。次は伊坂幸太郎氏の代表作に挑戦してみたいです。

end☺️

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