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Abema TVの現状と、サイバーエージェントの次回決算で注目したいポイント

外資の動画サブスクリプションサービス

テレビ離れが進んでいると言われる昨今ですが、テレビで何かを見る習慣はなんだかんだで、無くなっていません。いわゆるキー局のテレビ番組ではなく、Netflix、Amazonプライム・ビデオ、Huluなど動画サブスクリプションサービスをテレビて見る時間が増えたことを実感している人も多いのではないでしょうか。以下が公表されている日本の有料会員数です。

・Netflix  300万人
・Amazonプライム・ビデオ 509万人
・Hulu 200万人

上記はいずれも、アメリカ発のサービスですが、今回は"国産動画サービス"Abema TVについて書きたいと思います。Abema TVは2016年4月に開局したインターネットテレビ局で、サイバーエージェントとテレビ朝日によって共同出資して設立されました。Abema TVは無料でも見られますが、有料プランがあります。月額980円の「ABEMAプレミアム」です。

Abema TVは開局以来年間200億円ほどの赤字が続き、黒字が見えない事業と言われてきました。時には、好調な広告事業やゲーム事業の足を引っ張てしまうお荷物的な存在として、厳しく指摘されることもあったような...。そんなAbema TVがどう成長してきたのか、前回の決算(4月22日発表)を元に見ていきましょう。

サイバーエージェントの事業セグメント

まずは、サイバーエージェントの事業セグメントと売り上げ構成がどうなっているか見ておきましょう。

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2Qの売上合計は1,291億円、営業利益は124億円で、事業セグメントは「メディア事業」「広告事業」「ゲーム事業」の3事業です。Abema TVはメディア事業に含まれます。

売上高 1,291億円
・メディア事業 138億円 9.35%
・広告事業 727億円 56%
・ゲーム事業 448億円 34%
営業利益 124億円
・メディア事業 -42億円
・広告事業 67億円
・ゲーム事業 104億円

こう見ると、売上、営業利益ともに未だ広告事業とゲーム事業がけん引していることが分かります。ゲーム事業の営業利益率は23%なので、非常に優秀です。また、2Qは1月〜3月までの実績のため、コロナの影響は受けて無さそうです。おそらく、4月、5月は広告事業の売上が大きく落ち込んだはずなので、3Qは変化が見られると思います。では、メディア事業が未だお荷物的な存在なのかというと、必ずしもそういう訳ではなさそうです。営業利益こそ、マイナスになっているものの、売上YonYの伸び率ではトップの18.8%増です。


Abema TVの収益柱は「広告」と「月額課金」

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Abema TVの収益モデルは「広告」と「月額課金」です。広告は番組途中で入るストリーミング型の広告などと、月額960円の月額課金です。サイバーエージェントは元々、広告事業が本業なので、自社のアドネットワークを持っているのと、営業人員が豊富なので、この辺りは上手くエコシステムを作っている印象です。

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有料会員はYonYでなんと1.7倍の67.6万となりました。単純計算(960円×67.6)で月間6.48億円の売上になっていそうです。そして、これまた単純計算ですが2Qの売上で考えると、6.48億円×3ヶ月で20億円程度の売上となります。メディア事業の売上が138億円なので、割合としては15%程度と推測できます。以下のような割合です。広告はAbema TVだけでなく、アメブロも入ります。

メディア事業2Q売上高 138億円
・月額課金 20億円程度
・広告(アメブロなども含む) 120億円程度 

年末までに100万有料会員を目指すとのことで、コロナでの巣ごもりを背景にした、かなりチャレンジングな目標設定ですが、今の伸び率が続けば無理ではない数字とも思えます。冒頭で書いたアメリカ発の動画サービスの有料会員が200〜500万人という規模になっており、これらのユーザ層はかなり重複しているだろうことを考えると(かく言う私も常時3〜4つほど有料会員になっています)、市場規模としてはまだ十分に残されたパイはあるので、仮に年内は厳しくとも中長期的に見れば達成する可能性は十分にあります。


黒字化には最低でも有料会員は200万程度は必要か

広告の収益を考えない、コスト構造が現在のままを前提として、現在の40億〜50億の赤字を黒字化するには現在の会員数を最低でも3倍程度にはしないといけない思われます。つまり、200万〜500万の有料会員がいる外資の動画サービスと同規模に成長するということです。そのためには、キラーコンテンツをどれだけ作れるかが決め手となると思います。この手のサービスの会員になるきっかけを振り返ると「あれが見たいから」だと思います。「ドキュメンタルを見たいから、アマプラ入る」とか「テラハ見たいから、Netflix入る」とかです。コンテンツ制作の資金力では、外資の動画サービスと真っ向勝負で勝てるわけがないので、若年層やニッチな趣味層をゲリラ的に攻めていき、信頼を勝ち取っていくことが肝要かと思います。また、AmazonやNetflixなど違い、Abema TVは月額課金と広告収入のハイブリッド型で、今後は引き続き動画広告はトレンドになっていくことが予想されるので、その部分は大きな追い風となるでしょう。

次回の決算で見たいポイント

3Qの決算発表は7月22日です。この時に予想される結果と、見たいポイントです。

・広告事業のコロナによるマイナス影響
・ゲーム事業、メディア事業がどれほどカバーできるか
・通期での目標達成見通し
・Abema TVの有料会員数

売上をけん引する広告事業はコロナのマイナス影響を大きく受けていると考えております。とりわけ、4月、5月は前年比20%程度は下落している可能性はあります。一方で、巣ごもりで追い風となったであろうゲーム事業、メディア事業の有料課金数と広告収入がどれほど広告事業の落ち込みをカバーできたのかは注目です。それらを踏まえた上で通期の目標が達成水準かどうかも投資家からは見られると思います。

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2Q時点で進捗度合いは比較的、順調なので、この貯金はアドバンテージになりそうです。また、Abema TVの有料会員数は年内100万に対して、どれくらい近づいたか、生活スタイルの変化がどれほど追い風になるのかの参考値になるので、中期視点でもかなり重要なポイントだと考えます。

さて、どういう結果になるか...また、決算発表後に答え合わせをしたいと思います。