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映画感想「君たちはどう生きるか」

※ネタバレしてます。ご注意ください。以下の画像以降から始まります。

タイトルとポスターから想像してたのは「コクリコ坂」みたいな群像劇だったから、アオサギがベラベラ喋り出したときには死ぬほど驚いたし、眞人があっち側の世界の入り口に足を踏み入れたときはワクワクが止まらなかった(アオサギの声が菅田将暉だと知ってさらに驚いた)本棚が左右にびっしり敷き詰められた入り口、個性的なインコだらけの国、生まれる前の魂のわらわらたち……。特に心奪われたのは、異次元に通じるドアがずらりと並んだ廊下だった。あんなの胸がときめきすぎる。

親が死んだ時のケア方法として、“子供だった頃の親に出合い直す”という手法はあったかい感じがして結構好きで、例えば『秘密の森のその向こう』(セリーヌ・シアマ)では死んだ祖母の少女時代と邂逅する話だった。

親の子供の頃と出会うのは、親が親の人生を自分で生きていた事実を知ることになり、それは子にとって多かれ少なかれ大切な人の死を乗り越える大きな一助になるのだと思う。あの時あの瞬間の眞人の母(ヒミ)はあの世界では生きてて、死んでいなくなったわけではない。いまもどこかでいるのかもしれない。その事実だけで眞人はきっと強く生きられるはずだ。

ロシアが始めた戦争もおわらないし、日本は生きにくい国になっちゃったし、それでも「君たちはどう生きるか」と宮崎駿に問われているような気がした。

積み木を積むことで世界のバランスをとり続けていた大叔父からのその役割を継いでほしいという申し出を断り、「キリコやアオサギのような友達を元いた世界で作りたい」と言う眞人は、あの時すでに自分の生き方を決めていたように思う。多くの偉人が言葉に残してきているように、友達を作るということは人生を支える大きな柱になる。「争いも戦火も絶えない世界に戻るのか」と大叔父に問われても眞人はドアを開けて元いた世界に戻ることに決める。そう、今私たちがいるのは最悪な世界。それでも自ら生き方を決め、生きていくしかないのだ。

話がめちゃくちゃでストーリーが難しかったという感想もみたが、それでいいと思う。誰が観ても楽しめる整ったストーリーラインの物語も大好きだけど、私はずっと難しい映画を観たかった。私が小学生の頃「ハウルの動く城」を観た時はわからないけど感動したし、大人になるにつれて何度も見返してだんだん事の真髄を理解していった気がする。そうやってどんどん「君たちはどう生きるか」を味わって行くのだと思う。少なくともいまはそう思う。世の中は簡単なストーリーで片付かないくらい複雑だ。それを物語化した宮崎駿はすごく誠実だと思う。

宮崎駿がつくるこんなにファンタジックな世界を観ることができたのが嬉しい。ジブリ作品は全て観ているが、圧倒的大作。

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今度一人暮らしするタイミングがあったら猫を飼いますね!!