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ジェネシアの起業家育成プログラムEntrepreneurs Academyの振り返りと今後について

2023年5月からスタートした起業家育成プログラムEntrepreneurs Academyは2023年9月に無事修了しました。僕はプログラムの運営オーナーとして、設計段階から関わらせて頂きました。本稿ではEntrepreneurs Academy 第1期('23)のプログラムを振り返りながら、当時の状況を運営側の視点からリアルに綴っていきたいと思います。また、色んな属性のシード起業家と密に4ヵ月間接して来て感じたことや学んだことも多く、キャピタリスト2年目を迎え僕個人の考えも少しお話出来ればと思います。

プログラムのコンセプト

スタートアップの世界に足を踏み入れる人が増える一方で、経営に求められる実践的なナレッジやノウハウは偏在し、そこには依然大きな情報の非対称性が存在しています。
ジェネシア・ベンチャーズが今まで、数多くのシード期のスタートアップに伴走する中で培ってきた実践的な知見を広く世の中に普及させ、スタートアップエコシステム全体の底上げを目指すため、事業成長支援プログラム「Entrepreneurs Academy」を始動しました。

プログラムの特徴としては:
1.  ジェネシアの出資を前提としない
2.  多様性のある起業家属性や出身地域・事業領域を採択
3.  公開情報では得られにくい経験者の実体験に基づいた講義
4.  先輩起業家・事業会社とのつながりを提供

アカデミーメンバーの採択

今回はジェネシアの出資を前提としないプログラムだったので、普段投資判断する時とは異なる採択基準をどうするかは一つ論点でした。どういう人に来て貰いたいのかチームで話し合い、① 社会に大きなインパクトを与える高い志を持つ起業家 ② 大きな産業になり得る事業領域  ③ チャーミングで魅力的な人間性、の3つを軸に面接をしました。
100名以上応募があった中から、書類選考を経て35名ほどに絞り面接を実施しました。僕一人で10名以上はお話をさせて頂きましたが、正直凄く難しかったです。普段資金調達の場面でお話する起業家の方は、既に事業アイディアが固まっていて、ストーリーも「VC向けに準備されている」場合が多いですが、アカデミー採択者はピッチ資料も無く、事業アイディアも生煮えの人が多いです。面談の中では事業の話より、なぜ起業しようと思ったのか、動機の部分を深堀しながら根源にある欲求とパーソナリティ等定性的な判断に基づいて決めた部分が多かったと感じてます。

講義とメンタリング

プログラムの設計としては、隔週で講義を行い講義が無い週にメンタリングを実施するという形でした。メンターは全てジェネシアのキャピタリストが担当し、多くのシード期のスタートアップを伴走してきた経験を生かして一人1社~2社付いてプログラム期間ガッツリ伴走しました。

講義の内容については、レポートに記載してるので是非読んでみて下さい。ジェネシア支援先の起業家や、上場企業の経営者、プロフェッショナルファームの方々にご協力頂き、教科書的な話と起業家による実体験の話を混ぜながらコンテンツを組ませて頂きました。ご登壇頂いた講師の方々は惜しみなくご自身のストーリーをシェアいただき、この場かぎりでのオフレコな内容も多く、アカデミーのメンバーは勿論、ジェネシアメンバーにとっても非常に学びが多かったです。

そこで一番感じたのは、理論と実践のギャップが凄く大きいこと。成功ストーリーは、その多くが後付けで上手く整理されているが、綺麗に戦略通りいかないのが大半だという話です。戦略はファクトとロジックに基づいて構築されてますが、人間が介在すると全てロジカルに動くとは限りません。それは社内の組織作りも、クライアントフェイシングでもそうです。例えばのB to Bの取引だと融通を効かせてくれる人や、信頼関係がある所と一緒に仕事するという傾向があったりするので、安くサービスを提供できるからと言ってサービスを使ってくれなかったりします。To Cのサービスでは「顧客の習慣」自体ロジカルじゃありません。
成功事例に再現性は薄く、起業家がチャレンジしている事業領域に深く浸透していき、自社固有の勝ち筋を自分の力で見つけるしかないということです。ただ、失敗する人は同じようなパターンが多いので、そこを事前に知ることで失敗率を下げることが出来ます。アカデミーの講義では、そういった失敗談を意識してコンテンツの設計をしました。

メンタリングでは各講義の内容を一緒に消化しながら、自社の状況に照らし合わせてどうすべきかを一緒に考えます。実際やってみると、毎回講義のインパクトが大きすぎて、起業家の考えが大きくアップデートされたり、自自問自答を繰り返し改めて自分自身に向き合う機会を設けた人も出てきました。
よく投資家が聞く "Why you なぜあなたがやるのか?"、"Why now なぜ今なのか?"がありますが、確かに起業する時はそんなことを深く考えないケースが多いです。改めて自分がこの領域に人生掛けて取り組んで良いのか?本当に課題があるのか?色んな葛藤が生まれ、途中から起業家のwillを一緒に見つける所から再スタートするペアもいたり、お客さんと話してる中で当初の仮説に自信が持てなくなり違う方向で模索を始めたりと、リアルな起業初期の葛藤を一緒に経験しました。
起業家が抱える不安、迷い、ストレスを乗り越えて事業を成功させることの難しさを改めて認識し、起業する全ての人に今後も敬意を持ち向き合って行きたいと強く思いました!

Demo day

最後のDemo dayは、約70名の投資家・事業会社の方々にご参加いただき、おかげさまで盛会となりました!

Demo dayは起業家に取ってはスタートラインでしかなく、ゴールではありません。Demo dayを設けた理由として、一つ明確な目標があった方がメンバーが頑張りやすい。もう一つは、オープンな形で他の投資家にも均等に露出する機会を起業家に与え、起業家にとって資本政策の自由度や選択肢を狭めないようにしたいというものです。

Demo day前にリハーサルはやりましたが、最後まで資料とプレゼンのブラッシュアップをし、当日資料の差し替え等も多くありましたが、流石みんな本番に強く、Demo day当日のピッチが一番良かったです!
最後は受賞者の発表があり、僕がメンターを担当したfor Craftsの岩本君が最優秀賞を取りました。自分事の様で本当に嬉しかったです!
以下、Demo dayのプレスリリースです:

最後コメントではこみ上げる気持ちに涙する場面もあり、暖かい場になりました。一緒に伴走してきたからこそ、本人の思いが良く分かります。色んな不安を抱えながらも強い意思を持ち誰よりもポジティブにスタートアップの事業に取り組んでいます。どういう起業家なのかもっと知りたい方は、こちらのnote に是非飛んでみて下さい

VCとしての学び

ここで、僕個人の話を少ししたいと思います。ジェネシア・ベンチャーズに参画しシードVCとして活動を始めてから約一年経ちました。普段事業の壁打ちや資金調達でも沢山の起業家と話をさせて貰う機会がありますが、Entrepreneurs Academyでは普段投資家にはあまり見せない起業家の不安や悩みに一緒に向き合う時間が多かったです。
スタートアップというワードで一括りにされますが、起業家は本当に多種多様で、色んな思いで事業に取り組んでいます。シード、シリーズA、PSF、PMF等スタートアップに関するワードは沢山ありますが、それらはVCがファイナンスをする為に起業家が取り組んでる複雑なことを、簡易的に言語化したものな気がしてます(これ自体必要で悪いものだとは思いません)。
戦略はある、流行のフレームワークを使う人間もいる、お金もある、それなのに上手くいかないケースが沢山あります。足りないのはパワポ上の理論を超えた「商売の肌感」だと僕は思いました。
スタートアップのビジネスはある程度科学されており、それをしっかり学ぶことは重要ですが、顧客のニーズや市場の動向を直感で感じ取れるように、サービスを触ったり、顧客の声を直接聞いたり、現場に足を運んだりし、事業家の視点を持てるよう強く意識して活動していきたいです!

Entrepreneurs Academyの今後について

今回初回一通りやってみて、色々過不足もあったと思いますが、反省点を整理して次回以降はもっとアップグレードしたプログラムにしていきたいと思います。
これから2期目に向けてまた動き出しますが、引き続きジェネシアのアカデミープログラムを応援お願いします!

最後に、起業準備中や事業アイデアを検討中でご興味のある方は、以下のウェイティングリストにご登録ください。

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