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瀬戸忍者捕物帳

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#推理小説

瀬戸忍者捕物帳 3-4

瀬戸忍者捕物帳 3-4

その頃、虎吉は震えだした八重の身を案じ、

「大丈夫か?一体どうしたんだ?」と聞いた。

「ねえ、なんで欣二さんは・・・あの時、与六さんが酩酊してたってことが分かったんだろう?それに、与六さんが後ろから脇差しで刺されたって事も・・・あたかも自分があの場にいたかのようにしゃべって・・・」

八重は欣二には聞こえない声で虎吉に思ってることを打ち明けたが、その言葉を聞いた後、

「なるほどな、あいつの言

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瀬戸忍者捕物帳 3-3

瀬戸忍者捕物帳 3-3

黒田達の手下達がせわしなく烏天狗の捜索に当たっているが、どうやらまだ烏天狗は捕らえられていないようだ。茜は絶対に自分が捕まえてやるという意気込みで夜の街を捜索した。

一緒にいる所を見られたらまずいので皐は茜と少し離れて屋根の上を伝いながら捜索している。同時にもしも烏天狗に出くわした時でも茜の警備に当たれるように常に茜の姿が見える位置にいる。屋根を走る皐自身が黒い忍者装束なので、たまに黒田の手下達

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瀬戸忍者捕物帳 3-2

瀬戸忍者捕物帳 3-2

「烏天狗・・・」茜は驚愕した。

烏天狗は今、この瀬戸の街を恐怖に陥れている殺人鬼である。

神出鬼没で無差別に人を斬り、その人数は百人とも千人とも言われている。斬られた人間の体には鴉の黒い羽が、必ずと言っていいほど散りばめられ、また目撃された情報によると、黒い着物に烏天狗のお面をつけているという。

茜はようやく黒田が暗い顔をしている訳を知った。

「黒田さん!」

「ああ、烏天狗が今この街にい

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瀬戸忍者捕物帳 3-1

瀬戸忍者捕物帳 3-1

ここは江戸・・・どこか良く似た街、瀬戸(せと)

天下を分ける戦争が終わり世が統一されてしばらく経つも、まだまだ世の中は物騒で、同心達は治安の維持に苦心していた。

日が暮れた瀬戸の街で雅な羽織を着た女同心・茜(あかね)は窃盗犯を追っていた。

「もう逃げられないわよ!観念なさい!」

商店が並ぶ表通りを走りながら茜は叫ぶ。

「ぐ! ちくしょう!」

とつぎはぎだらけの着物を着た小汚い男がしぶと

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